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スリルを求める流行
17. 知らなければ見逃すポイント
しおりを挟むいつも読みに来てくださる方も、ふらっと来られた方もありがとうございますm(_ _)m
本日、間に合えばもう1話投稿いたします。
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内密の話の正体は、刺激的な話を好むネッドには肩透かしもいいところだったようだ。
しかしその点においては同類のはずのウィルフレッドは、オズワルドのかいつまんだ説明に神妙な顔で耳を傾けている。
聞き終えた時、彼はぽつりとこぼした。
「知らなかったよ。ソーンがね」
少々意外な反応だった。
実のところ、ウィルフレッドは察しているのではないかと疑っていたのだ。
「知りながら放置していたのではなく?」
「本当だ。僕はそんな底意地の悪い男じゃないぞ」
不満げなウィルフレッドに、つまらなそうな顔で頷いたのはネッドだ。
「あの手の仕事をしている奴は、若い頃から何年も鍛え上げて、非の打ちどころのない使用人の顔を作ることにかけては筋金入りだ。私の目でもそんな風には見えなかった」
賛同者を得られて、ウィルフレッドは「その通りだ」と勢いを得る。
「それにしても何故、皆はこの僕にそれを相談しなかったんだろう?」
その感想に、オズワルドは溜め息をつきたくなった。
どんなに知識が豊富で話の分かる若様でも、育った環境によるズレは如何ともしがたいようだ。
「できるはずがないだろう。もし雇い主に訴えて、何ひとつ通らなければどうする? ソーンは注意もされず、この先もずっと同じ仕事場で働き続けなければいけない。報復を考えると、簡単に言えるものではないさ」
「ああ、報復か……なるほど、そうなるか。実際、僕はソーンを解雇できる立場ではないしな」
「できないのか?」
ウィルフレッドは首を横に振った。
「できない。僕は当主本人じゃないから、上級使用人の解雇など独断で決められないのさ。勤務態度を注意するならまだしも、仕事をさぼっているわけじゃないんだろう?」
「そうだな……仕事はしっかりやっている」
「下の者への暴言が目に余るとしても、暴力は振るっていない。食事抜きで働かせるといった嫌がらせもない。何より、僕や僕の家族の前ではそういう言動を一切見せていない。父に報告するとしても、ちょっと弱いな」
「そうか」
落胆して息を吐くオズワルドに、興味なさげだったネッドが「ん?」と片眉を上げた。
「オズワルドはソーンを解雇させたいのかね? 気に入らない使用人を辞めさせてやりたいなんて、おまえさんはそういうことをやりそうにないと思ったんだが」
「そういえばそうだ。何かソーンに引っかかる点でもあるのか?」
「――俺は慈悲深い聖人ではないんだ。不愉快な奴をなんとかしたいと思うことぐらいある」
「ふうん?」
「ほほう、それで?」
二人とも興味津々で身を乗り出してきた。
どうやら好奇心に火をつけてしまったようだ。オズワルドは額に手を当てた。
「だからな……ソーンには、電話を自由に使う許可をしているのか?」
「もちろん。ソーンと、マディもだ。緊急時の連絡や店への注文その他、業務に関係のあることならいつでも使って構わないと、父が許可を出している」
「なんだなんだ、気になる会話でも聞こえてきたのか?」
「いや、そうではなく。ウィルフレッドがいる時にあれを使っているのを見たことがないな、という、それだけだ。あと、ソーンはシャーロットよりもターナー家での勤務年数が浅いんだろう?」
「ああ、父が三、四年前に雇ったんだ。ネッド、おまえは父から聞いているか?」
「前任が結構な爺さんで、引退を期に親族から紹介された人物を後釜に、というよくある話でしたよ」
「へえ? それなら、父の身辺調査が甘かった可能性もあるか?」
「信頼する者の推薦でしたら、その可能性もありますなぁ。いやこれは、ちょっと調べてみますか?」
「あー、二人とも? そのへんにしてくれ」
盛り上がりそうになったウィルフレッドとネッドに、オズワルドは慌てて待ったをかけた。
ミステリー好きのお坊ちゃまと新聞社のトップが盛り上がると、嫌な方向へ突き進みそうだ。
「ネッド、今回の分の原稿だ」
「確かに。オズワルド、せっかくだからこの件をテーマに、陰謀渦巻くハラハラさせるような作品を――」
「書かない。ではまた。行くぞウィルフレッド」
「はいはい」
オズワルドはさっさと立ち上がり、残念そうなネッドの顔に背を向けて歩き出した。
おとなしく付いてきたウィルフレッドと馬車に乗り込み、溜め息をつく。
「すまない。くだらないことで手間をかけさせた」
「手間ではないさ、大きな収穫があった。父に連絡を入れ、ソーンの身辺調査をお願いしよう」
ウィルフレッドの声の質が変わり、オズワルドは横を見た。
前を向いたままの空色の目が、薄暗い中でも浮き立って見える。
「ソーンには何かある。ネッドは、『ちょっと調べてみますか』と言っていた」
「言っていたな」
「あいつが我が家の使用人を調べ上げていないと思うか?」
確信に満ちた声音に、オズワルドは声を失う。
「あいつらにとって金持ちの家はネタの宝庫だ。日頃から細かい部分まで目を光らせ、嗅覚を研ぎ澄ましている。そうして集めた宝は、たとえ日の目を見ることがなくとも、いざという時に取引のカードとして有効に使えるのさ」
つまりネッドは、ソーンに何かあると知っていて、手元に隠し持っている。
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