最後の選択者

丸井竹

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第一章 骨師を守る騎士

11.捨てた女と捨てられた女

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「復讐なんて……そんなつもりじゃない。知り合いがいて、助けられそうだったから助けただけ。こんな時代だし、知り合いに会えることもなかなかないじゃない。それに……私が知っている人はジルドとあなただけだし……貴重な知り合いの一人よ……」

その場を動かないイールに、ステラは不思議そうに目を向け、思いついて鞄の中を漁った。

「契約書なら燃やしておくから」

いくつか鞄を漁り、ステラは契約書を見つけられず、申し訳なさそうに顔を曇らせる。

「ジルドが持っているのかも。でも首輪の金具は主人しか外せない。もう自由でしょう?」

イールは黙っていたが、周囲を警戒するように暗闇に目を光らせた。

「恩は返す……。それにあの男も言っていた。ほとぼりが冷めるまでは奴隷でいた方が安全だ」

イールは片手で首元のベルトの鍵を閉め直した。

しばらくしてジルドが戻ってきた。

「町に入らなくて正解だ。今夜あたり、デルマド国の兵士たちによる一斉取り締まりがあるらしい。巻き添えになるのはごめんだ。
馬を売って小獣を買ってきた。荷物を積みかえて山を越える。少し時間はかかるが一番上の砦まで行こう」

道の無い場所を進むのは時間がかかる。
砦に到着する前に日はすっかり暮れ、三人は野宿の準備に入った。

遠くから火が見えないように岩陰に焚火を置き、周囲に壁のように岩を積み上げる。
奴隷を見張りに立て、ジルドはステラをテントに押し込み寝袋にくるんだ。

「いいか、絶対勝手な真似はするなよ。お前は俺の管理下にある」

国もなく、最後の命令を出した上官もいないが、ジルドの言葉は揺るがない。
ステラは素直に従った。


 その日から、三人の旅が始まった。

ジルドは人手が足りず渋々イールを受け入れた。
いたるところで戦いが行われ、骨師狩りが出没している。
情報も錯綜し、商人として仕事をしながら情報を集めているジルドが一日中、ステラを見張るのは不可能だった。

街道沿いや町で店を出すと、ジルドは情報収集と仕入れのため店を離れ、その間イールが店番をするステラを守った。
ジルドは素直に認めようとはしなかったが、奴隷のおかげでかなり効率の良い旅が出来るようになった。

異変があればすぐに旅の足を止め、ジルドはイールにステラの護衛を任せ偵察に出た。

 ある時、ジルドは反乱軍の情報を仕入れ、飛んで戻ってくると店を畳み人目につかない場所に逃げた。
道を外れ、目立たない場所に隠れ家を築くと、翌朝イールとステラを置いて様子を見に行った。

影のように戻ってきたジルドは嫌な顔をして、数日町には戻らないと宣言した。

「逃げ遅れた反乱軍の死体が転がっている。あれでは道は使えない。馬車を捨てておいてよかった」

それから数日、ジルドは何度もステラを置いて偵察に出て、次の道を探してきた。

ジルドは用心深く旅を続けたが、大陸中で戦争が続いていた。

デルマド軍も負けることが増え、彼らの建てた砦や町の門の中に避難することさえ危険になってきた。
ついに、旅券と商人の札を隠すとジルドは決めた。

「また戦になるらしい。戦況がわからないからデルマド国の軍隊についていくのも不安なところだ。少し田舎に逃げよう。うまく生き残らなければならない」

その夜、三人は砦内の壁の中で野宿しようとしたが、ジルドが買収した見張りの兵士からの情報で、急いで砦の外に出た。

「やっかいなことに巻き込まれたくなければ賄賂を払えと言われて払ってきた。多少の出費だが、この騒ぎに巻き込まれるのはごめんだ。骨師狩りが始まった」

真っ暗な闇の中、険しい岩道を少しずつ進みながらジルドが骨師狩りの情報を伝えた。

「神力の結晶は戦況を変えるだけの力がある。それ故、骨師を王のいる城に集めている。情報を売るだけでも金になるらしい」

「私を売ってもいいのに……」

ステラが呟くと、ジルドが「しっ」と鋭く制止した。

「デルマド国とていつまで安泰かわからない。新しい国が立ち上がったという話もある。どこに所属していることが安全なのかまだはっきりしない」

「でも、私がいるとジルドが自由になれないでしょう?」

ジルドは黙り込んだ。
闇の中をなんとか進み、野営地をようやく定めると、奴隷のイールが周辺の見回りに出た。
焚火を置き、風除け程度のテントを張ると、ジルドはステラをまず休ませた。

ジルドは足で見つけた町や、聞き込みで知った待避所や戦場などを地図に書きこんでいったが、ある夜、新たに戦場の場所を書きこんだジルドは、大陸に居場所はないかもしれないなと呟いた。

やはり道を外れた岩陰で、周辺は闇に包まれていた。
夜風に流れる雲の合間できらりと光る星を見上げていたステラが、ふと思い出したように声を出した。

「東に行く?」

ジルドがまだ寝ていなかったのかと、手を伸ばし、ステラの頭の位置を確かめる。
ステラはいつの間にかしゃがんだ姿勢で、膝を抱いていた。
ジルドは無理矢理ステラの体を横にして、丸めた衣服を枕替わりに頭の下に入れた。

「寝ておけ。体を弱らせても治癒師にはみせられないからな。万が一骨師だとばれたら困る」

ジルドの力に逆らわず、ごつごつした岩の隙間に横になったステラは静かに話し出した。

「私、東で見つかった子供だったの。家族とか、親しい人がいたわけじゃないし、生まれた村のことも覚えていないのだけど、捨てられた日のことを少しだけ覚えている……。私は女の人に手を引かれて村を出たの。
戻れないぐらい遠くに来た時、その女の人が言ったの。
男みたいな話し方をして、男のように振舞いなさいって、そうしたら生き延びられるかもしれないからって。
女の人は私をそこに残して村に帰って行った。飢えて死ぬ前に国の役人に拾われたのだけど、その日のことを今でも少し思い出すの。
その人は、村のために私を捨てたけど、私を死なせたくはなかったのかもしれないって。
もし、貧しくなければ、村が豊かなら、私を育てたいと思ってくれたかもしれない。
ジルドも私が生きられるように商人の妻のように振舞えと言うのよね?」

ジルドはなんと答えていいかわからず黙っていた。

「二人とも私が生きられるように考えてくれたのよね……」

その言葉を最後に、静かな寝息が聞こえてきた。
ジルドは剣を抱え、仮眠のため目を閉じた。

イールは少し離れたところに座っていた。

三人は辺境に逃れ、旧マウリア国の領内を目指した。
結局土地勘のある場所の方が隠れ家も探しやすいとジルドは判断したのだ。

一カ月かけて辿り着いたが、そこは戦場跡地で他国の兵士の死体が転がり、死体漁りが出没し、物騒な雰囲気に包まれていた。

「この地を今どこが治めているのかもわからないな……」

ジルドはぎっしり書きこまれた地図を広げ、祭壇のあったはずの場所を見上げた。
古代遺跡があったそこは跡形もなく破壊されていた。

骨師の作る神力の結晶の力を一番引き出せるのは祭壇なのだ。
それ故、今までは大陸中にある古代の遺跡も祭壇だけは守られてきた。
しかし骨師は奪われ、狩られ、殺されている。
骨師がいなければ昔の祭壇など無用の長物だ。

「骨師は滅びるかもしれないね」

ステラは他人事のように呟いた。
神力の結晶が消えつつある大陸は、乏しい土地ばかりになった。
旧マウリア国の東の町に立ち寄った三人は、そこでも小さな店を出した。
薬は常に不足しており、デルマド国の兵士の略奪品から仕入れた傷薬が飛ぶように売れた。

「こうなると骨師より魔術師や霊薬師、薬師といった魔力使い達が貴重になるな」

ジルドは早い段階で魔素材を仕入れていたため、かなりの利益を出していた。

「ジルドは商人が向いていると思うけど」

ステラは言ったが、ジルドはやはり不愉快そうに顔をしかめた。
確かにジルドには商才があり、皮肉なことに商売だけは順調だった。

その町でも小さな利益を出し、三人は数日滞在した。

町を離れる最後の日、ジルドは次の目的地を決めるため最後の情報収集に出た。
ステラは店番で、イールが護衛だった。
通りを見ていたステラは、ふと、門から入ってきた女に目を止めた。
浮浪者のような身なりの女は反対側の通りに座り、物乞いを始めた。

ステラはその様子をじっと見つめていたが、突然店を飛び出した。

イールが急いでステラを追った。
人だかりを縫うように通りを横切り、ステラは物乞いの女の前に立ち、小銭を差し出した。

物乞いの女は喜んで両手を皿の形にして頭の高さにあげた。
その上にステラが銀貨を二枚載せる。

「ありがとうございます」

顔をあげた物乞いの女はステラの顔を間近に見ると、ふと時が止まったように固まった。
何かを思い出そうとするように首を傾ける。

その様子に、ステラは女が自分を覚えているのだと思い、顔を輝かせた。

「私、ステラ。覚えている?村を出て森を手を繋いで少しの間一緒に歩いたの。
ただ私を置き去りにすればよかったのに、私に男のように振舞えば、生き残るかもしれないって言ってくれたでしょう?私、うれしかったの。あなたが私に親切に言ってくれたことが」

その言葉を聞いた途端、女は顔色を変え、ステラをまじまじと見つめると、おもむろに立ち上がりステラを後ろに突き飛ばした。
尻もちをついたステラをイールが助け起こす。

物乞いの女は銀貨を大事にポケットにしまうと、ステラを睨みつけた。

「私たちが生き残るためにお前を捨てたのに!なんでお前が生きているんだ!お前がちゃんと死ななかったから、私達に死人が出たんだ!村が滅びたのはお前が生贄としてさっさと死ななかったからだ!」

理不尽な怒りだったが、かつてステラを村の外に追い出したこの女は、怒りの捌け口を探していた。
村は戦に巻き込まれ滅びたのだ。

村にいなかったステラが生き延びた。しかも自分より裕福だ。
なぜ自分ばかりが不幸なのかと、女はなおもつかみかかり、ステラに殴り掛かった。

その前にイールがステラの体を後ろに引いて庇った。
物乞いの女ははっとして顔を上げ、イールを憎々し気に睨んだ。

「あんたは生き延びてその上、護衛つき?どうせ体でも売ったんだろう!淫乱女!」

呆然としているステラを引きずるようにイールはそこを離れた。
店番の消えた店には、さっそくこそ泥がやってきて、商品を漁っていた。

「待て!」

放心状態のステラの代わりにイールが叫んだ。
こそ泥は何も取らずに慌てふためき逃げていく。
それをぼんやりと見送り、ステラはのろのろと店に戻った。

ジルドが戻ってくると三人は店を畳んだ。

その夜、野営地で帳簿を見ていたジルドがステラに不機嫌な声をあげた。

「銀貨二枚足りないぞ。何が売れた?」

テントの前で膝を抱えていたステラは、物乞いに銀貨を二枚恵んだと小さな声で答えた。

「物乞いに金を渡すなと言っておいたはずだぞ。あの奴隷を買ったのだって俺は許していない。
金を恵むような馬鹿だと見られたら、困っている人間が山ほど押しかけてくる。
この国には困っている人間ばかりだ。俺が苦心して稼いだ金で人助けでもするつもりか!」

「店番しているのだから、私のお給料でもいいじゃない……」

「給料だと?!」

その考えはジルドにはなかった。ジルドはあくまでステラを管理しているのだ。
働かせて神力の結晶を作らせ、それを国に運ぶ。
それが仕事だった。
そういえば、ステラは報酬を受け取ったことがあるのだろうかとジルドは考えた。

「お前には十分なことをしているはずだ。食事も与えているし、寝床もある。安全に寝られる場所など、この大陸にはどこにもないぞ。俺がいるから生きていられるんだ」

「ごめんなさい……」

ステラはテントに引っ込み、ジルドはそれ以上この件に関して考えるのを辞めた。
イールは少し離れたところに座り、見張りを務めていた。

その日を境に、ステラは体調を崩す日が増えていった。

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