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32.明かされた性癖
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のぞき穴からドルバインとアロナの獣のような交わりを見ていたナリアは、ちらりと隣に視線を向けた。
夫のフェイデンは恐ろしい形相でのぞき穴の向こうを睨みつけている。
そのぎらついた目の奥に、男の本質に迫る原始的な欲求が目覚めつつあるように見えて、ナリアは物欲しそうに舌で唇を舐めた。
「偶然彼らの交わりを見て、私はようやく気が付いたの。これが見たかったのだと。あの子、よく見たら可愛いでしょう?ドルバインに比べたら子猫のようだし、まるで引き裂かれて食べられてしまいそう。
恐ろしい野獣に犯されている子猫の姿を憐れみながら、私はあなたに抱かれたかった。
姿かたちも素敵だし、紳士的で私を愛してくれる。私にはこんなに素敵な人がいるのに、あの子はあんな獣に犯されて可哀そうじゃない?すごく興奮するの」
拷問を仕事にすることもあるフェイデンは、なんとなくその興奮がわかる気がしたが、目の前の光景はそういった感じには見えなかった。
フェイデンは眉をひそめた。
「可哀そう?犯されているようには見えるが……彼女は明らかに喜んでいる」
ナリアはのぞき穴からアロナの姿を見た。
獣のように四つん這いにされ、悲鳴をあげながらドルバインに貫かれている。
乳房の宝石はきらきら揺れ、弄ばれているかのように鈴の音が鳴っている。
おもちゃのように犯されているアロナの姿は、哀れでとても美しく見えた。
「でも相手がドルバインだから、どう見たって襲われているようにしか見えないわ。それに……あの子の体、これからもどんどん変えられてしまうわよ。
あんなにみっともない乳首にされて、胸だって強い力で引っ張られるからあんなに赤くなっている。大切にされているなら傷一つ付けたくないはずよ」
夫が所有している妻の体を蹂躙することに喜びを覚えるドルバインらしい遊びだったが、ナリアはまた別の快感を引き出していた。
「夫以外の野獣のような男に、支配され壊されていく子猫ちゃんの姿が最高に興奮するの」
ナリアは夫の手を取り、自分のドレスの下に導くと、そのまま下着の中に突っ込んだ。
妻のぐっしょりと濡れた肉の間に触れたフェイデンは、ナリアの欲望の深さに驚き、指を中に入れた。
「あっ……」
うっとりと声を発したナリアは、のぞき穴の向こうをもう一度見た。
ドルバインは壁に向かってあぐらをかいて座り、その上にアロナを乗せて下から突き上げている。
その結合部は白く泡立ち、赤黒い棒が凄まじい迫力で小さなアロナの中をこじ開け、奥に何度も沈み込んでいく。
苦悶の表情でアロナは目を閉じ、喉をのけぞらせて喘いでいる。自分で制御できないほどの強烈な快感に翻弄されているのかもしれないが、見ようによっては無理矢理感じさせられ、苦しんでいるようにも見える。
「ああいうのがいいの。成す術もなく、蹂躙されている感じがいいじゃない。相手はあれぐらい醜くて狂暴な男が良い」
ナリアは夫に視線を向け、ドレスを脱ぎ始めた。
「興奮しているの。これを知ってしまって……それでドルバインに秘密の会の後に、私にあの光景を見せて欲しいと頼んだの。実際に見なければ信じてもらえないと思って、あなたに、何も言えなかった。フェイデン、私も変態なの……彼とは違う趣味なの。抱いてくれる?」
フェイデンは半裸のナリアを抱きよせながらも、まだ事実を受けられないでいた。
「ドルバインのことは、本当に好きではないのか?本当に何もない?」
「言ったでしょう?あんな醜くて野獣みたいな男、私には相応しくないとずっと思っていた。だから、結婚してからもあの男に触れられるのが嫌で仕方がなかった。
惹かれているのに、なぜ触れられたくないのか、本当にわからなかったの。でもようやくわかった。私が性的な興奮を覚えるためには、彼が必要なのよ。あの光景を見るとたまらなく気持ちが良いの。心から満たされる。野獣に犯される子猫を眺めながら、素敵なあなたに抱かれて優越感に浸りたくなる。ね、抱いて」
ナリアは自ら寝台に仰向けになり、下着の紐をほどき始めた。
その初めて見る妻の淫らな姿に、フェイデンも強く惹き付けられた。
ドルバインとアロナの交わりは正直どうでも良かった。男であるから、本能的な部分では興奮するが、憎いドルバインの裸を見ても楽しくもなんともない。
アロナは淫靡で美しいと思うが、哀れでもあった。
ドルバインに命じられたら逃げられない立場であり、夫がいても抱かれるしかない状況だ。
「本当に、何でもないんだな?」
フェイデンは確認した。
「もちろん。あの子に自慢したいわ。こんなに素敵な男性に私は愛されているのよって。見せてあげないけど……。だって、あなたは私だけのものだもの」
貴族らしい高慢さで、ナリアは勝ち誇ったように微笑んだ。
「こうした特殊な性癖は、誰にも迷惑をかけない形でなければ発散してはいけないのよ。それがここの決まりなの。だから、きれいな女の子に命じてむりやり醜い男と交わらせてはいけないの。フェイデン、私を軽蔑した?」
もし、最愛の女性が特殊な性癖を持っていたら、男はどう振舞うべきなのか。
フェイデンは仰向けに寝そべったナリアの上に四つん這いになり、その淫らな表情を見下ろしながら考えた。
ふと、ドルバインの裁判の日に、押しかけて来た裸の村人たちのことを思い出した。
アロナは証言台の上に立ち、夫とドルバインを助けるために、全てを投げうった。
愛とは相手を従わせることではなく、受け入れることなのかもしれない。
誰よりもナリアに愛されるためには、浮気相手を排除するのではなく、その欲望を知り、その願いを叶えてやるべきだったのだとフェイデンはようやく悟った。
変態だとわかっても、ナリアを捨てる気にはどうしてもなれなかったのだ。
「俺にも……隠れた欲求があるかもしれない」
フェイデンに見下ろされながら、ナリアは悠然と微笑んだ。
「もしそれがわかったら。私も付き合うわ。だって、愛しているもの」
ドルバインと夫婦だった時より、その愛はずっと強いとナリアは感じていた。
結局、ドルバインとは相性が悪かったのだと、今ならはっきりとわかる。
「ナリア、教えてくれ。どうしたらいい?」
「あなたのやり方が好き。いつものように抱いて」
ドルバインの口づけとは対照的な、甘く、優しい口づけがナリアの唇に降ってきた。
最高に気分よく、ナリアはフェイデンの首に抱き着いた。
その時、壁の向こうから耳をつんざくような悲鳴があがった。
「きゃああああっ」
見事に甘い雰囲気を台無しにされ、二人は不機嫌な顔をして飛び起きると、壁の向こうを睨むようにのぞき穴に顔を押し付けた。
壁向こうでは、アロナがドルバインの胡坐の上で貫かれた姿勢のまま、体をひねってその首に抱き着いていた。
その表情は恐怖でかたまり、淫靡な雰囲気は吹き飛んでいる。
アロナの視線の先にあるシーツの上には、ちょっと見たことがないような光景があった。
そこに、顔の形が浮かび上がっていたのだ。
ドルバインの胸に背を押し付け、座った形で交わっていたアロナは、シーツの一部が盛り上がっていく様子を目撃し、それが顔の形に見えたところで悲鳴をあげたのだ。
マットの下に誰かがいるのだとわかったが、その光景はあまりにも異様だった。
誰かの顔を覆っているシーツが、その顔の下にするすると引っ張られ、中に吸い込まれていく。
寝台の下にいる誰かが、穴からシーツを引っ張り込んでいるのだとわかったが、それにしても、不気味な光景であり、アロナは声もなくその様子を見守った。
最後に、顔を覆っているシーツまで寝台下に吸い込まれた。
やはりそこには穴が現れ、カインが顔を突き出していた。
「カイン?!」
ほっとしていいのか、驚いていいのかわからず、アロナはただただカインの顔を凝視した。
「アロナ、きれいだったよ。本当に素敵だった。体はドルバイン様のものだと言われて、うれしいと言ったね。アロナ、最高に苦しくて最高だった。やっぱり見てみたくて我慢が出来なくなって出てきてしまった。驚かせてごめん」
ドルバインに惹かれている気持ちを夫に聞かれてしまったのだと知り、アロナは真っ青になった。
マットの下からアロナを見上げるカインは、そんなアロナを安心させるように微笑んだ。
「アロナ、ドルバイン様に惹かれているならそれでいいのに、俺に遠慮することはない」
アロナの中にはまだドルバインの肉棒がおさまっている。
その結合部に視線を向け、カインはうっとりした顔になった。
それから重い宝石飾りで少し伸びた乳首を見上げ、犬のように舌を出す。
「君に捨てられることだって俺にとっては快感なのに」
とんでもないとアロナはドルバインから離れ、寝台からも滑り降りた。
「カイン!そんなこと言わないで!私達、子供のころから一緒だったのよ?離れるなんてそんなこと出来ない!」
アロナにとってカインは物心ついたときからずっと一緒にいる家族であり、空気のようになくてはならない存在だった。ほんの少し離れてしまうことすら、アロナにとっては耐え難い恐怖だった。
「アロナ……君が俺とドルバイン様を同時に愛したとしても、誰の迷惑にもならないし、誰を傷つけることもない。ならば、ここでは許されると思わないか?」
愛は一人だけに捧げるものだと思ってきたアロナは、驚いて立ち尽くした。
その体をドルバインが引き寄せ、寝台に乗せた。
カインの顔がマットの穴に引っ込み、がたがたと寝台の下で音がしたかと思うと、側面からカインの全身が現れた。
服は着ておらず、股間に拘束具だけを付けている。
興奮で乳首は尖って赤くなり、袋の部分はぱんぱんに腫れている。
痛そうに顔を歪めながらも、カインは笑顔で寝台に腰を下ろした。
「アロナ、ドルバイン様に惹かれる気持ちを抑える必要はない。俺は絶対にどこにもいかない。君を生涯愛している」
真っすぐなカインの眼差しを受け、アロナはドルバインを振り返った。
迸るような愛情を伝えたくてたまらなかったが、それは出来ないとずっと諦めてきた。
でも二人を同じように愛してもいいのであれば、ドルバインの愛を望んでもいいのだろうか。
ドルバインがアロナを情熱的に抱きしめ、そのまま寝台に押し倒した。
荒々しい口づけをしながら、体を擦りつけるように重ね、蹂躙するように体に手を這わせる。
激しい愛撫に、アロナは甘く喘ぎながらドルバインの顔を必死に見ようとした。
二人の目がぴたりと合った。
「アロナ、カインのことも俺にとっては大切だ。そしてアロナ、お前のことはもうただの人妻とは思っていない。俺にとっては……最後の最愛の女性だ」
「私……カインを愛しているのに、ドルバイン様のことも、愛してしまっていいのでしょうか……」
「俺のことも愛してくれるか?」
ドルバインの問いかけに、アロナは夫の姿を見ようとして、それをやめた。
夫の意見に頼るのではなく、自分の心に問いかけた。
心の欲求のままに動いても本当に良いのだろうか。
自分の本来の欲求を抑えて生きることは辛いことだ。他人を傷つけるような欲求であれば生涯我慢しなければならないこともある。
でもドルバインもカインもアロナの欲求を受け入れると言ってくれているのだ。
二人の夫を愛せない理由があるとすれば、それはアロナ自身がそれを受け入れられないからだ。
障害は自分自身の心の中にある。
「ドルバイン様、愛しています……。カインと同じぐらい。でも体を重ねるたびに好きになるから怖くて……。カインより好きになってしまったらどうしようかと」
「それはないだろう。お前達はまるで二人で一人のようだ。お前がいるところにはカインがいるし、カインがいるところにはお前がいる。俺は生涯お前達を大切にしたいと思っている。俺を愛し、ついてきてくれるか?」
「はい!」
答えたのはカインだった。
貞操帯の先から、感動の涙が滴っている。
アロナは少しだけ考えた。
「私も……変態かもしれません……」
世間的に変態と呼ばれる寝取られ好きのカインに必死に付き合ってきたが、アロナ自身も、また違う性癖の持ち主だったのだ。
困惑したように目を潤ませているアロナを見おろし、ドルバインは珍しくにやりと笑った。
「ここには変態しかいない。気にすることはない」
ドルバインと熱い口づけを交わしながら、アロナはやっと二人と同類になれた気がして、心からほっとしていた。
夫のフェイデンは恐ろしい形相でのぞき穴の向こうを睨みつけている。
そのぎらついた目の奥に、男の本質に迫る原始的な欲求が目覚めつつあるように見えて、ナリアは物欲しそうに舌で唇を舐めた。
「偶然彼らの交わりを見て、私はようやく気が付いたの。これが見たかったのだと。あの子、よく見たら可愛いでしょう?ドルバインに比べたら子猫のようだし、まるで引き裂かれて食べられてしまいそう。
恐ろしい野獣に犯されている子猫の姿を憐れみながら、私はあなたに抱かれたかった。
姿かたちも素敵だし、紳士的で私を愛してくれる。私にはこんなに素敵な人がいるのに、あの子はあんな獣に犯されて可哀そうじゃない?すごく興奮するの」
拷問を仕事にすることもあるフェイデンは、なんとなくその興奮がわかる気がしたが、目の前の光景はそういった感じには見えなかった。
フェイデンは眉をひそめた。
「可哀そう?犯されているようには見えるが……彼女は明らかに喜んでいる」
ナリアはのぞき穴からアロナの姿を見た。
獣のように四つん這いにされ、悲鳴をあげながらドルバインに貫かれている。
乳房の宝石はきらきら揺れ、弄ばれているかのように鈴の音が鳴っている。
おもちゃのように犯されているアロナの姿は、哀れでとても美しく見えた。
「でも相手がドルバインだから、どう見たって襲われているようにしか見えないわ。それに……あの子の体、これからもどんどん変えられてしまうわよ。
あんなにみっともない乳首にされて、胸だって強い力で引っ張られるからあんなに赤くなっている。大切にされているなら傷一つ付けたくないはずよ」
夫が所有している妻の体を蹂躙することに喜びを覚えるドルバインらしい遊びだったが、ナリアはまた別の快感を引き出していた。
「夫以外の野獣のような男に、支配され壊されていく子猫ちゃんの姿が最高に興奮するの」
ナリアは夫の手を取り、自分のドレスの下に導くと、そのまま下着の中に突っ込んだ。
妻のぐっしょりと濡れた肉の間に触れたフェイデンは、ナリアの欲望の深さに驚き、指を中に入れた。
「あっ……」
うっとりと声を発したナリアは、のぞき穴の向こうをもう一度見た。
ドルバインは壁に向かってあぐらをかいて座り、その上にアロナを乗せて下から突き上げている。
その結合部は白く泡立ち、赤黒い棒が凄まじい迫力で小さなアロナの中をこじ開け、奥に何度も沈み込んでいく。
苦悶の表情でアロナは目を閉じ、喉をのけぞらせて喘いでいる。自分で制御できないほどの強烈な快感に翻弄されているのかもしれないが、見ようによっては無理矢理感じさせられ、苦しんでいるようにも見える。
「ああいうのがいいの。成す術もなく、蹂躙されている感じがいいじゃない。相手はあれぐらい醜くて狂暴な男が良い」
ナリアは夫に視線を向け、ドレスを脱ぎ始めた。
「興奮しているの。これを知ってしまって……それでドルバインに秘密の会の後に、私にあの光景を見せて欲しいと頼んだの。実際に見なければ信じてもらえないと思って、あなたに、何も言えなかった。フェイデン、私も変態なの……彼とは違う趣味なの。抱いてくれる?」
フェイデンは半裸のナリアを抱きよせながらも、まだ事実を受けられないでいた。
「ドルバインのことは、本当に好きではないのか?本当に何もない?」
「言ったでしょう?あんな醜くて野獣みたいな男、私には相応しくないとずっと思っていた。だから、結婚してからもあの男に触れられるのが嫌で仕方がなかった。
惹かれているのに、なぜ触れられたくないのか、本当にわからなかったの。でもようやくわかった。私が性的な興奮を覚えるためには、彼が必要なのよ。あの光景を見るとたまらなく気持ちが良いの。心から満たされる。野獣に犯される子猫を眺めながら、素敵なあなたに抱かれて優越感に浸りたくなる。ね、抱いて」
ナリアは自ら寝台に仰向けになり、下着の紐をほどき始めた。
その初めて見る妻の淫らな姿に、フェイデンも強く惹き付けられた。
ドルバインとアロナの交わりは正直どうでも良かった。男であるから、本能的な部分では興奮するが、憎いドルバインの裸を見ても楽しくもなんともない。
アロナは淫靡で美しいと思うが、哀れでもあった。
ドルバインに命じられたら逃げられない立場であり、夫がいても抱かれるしかない状況だ。
「本当に、何でもないんだな?」
フェイデンは確認した。
「もちろん。あの子に自慢したいわ。こんなに素敵な男性に私は愛されているのよって。見せてあげないけど……。だって、あなたは私だけのものだもの」
貴族らしい高慢さで、ナリアは勝ち誇ったように微笑んだ。
「こうした特殊な性癖は、誰にも迷惑をかけない形でなければ発散してはいけないのよ。それがここの決まりなの。だから、きれいな女の子に命じてむりやり醜い男と交わらせてはいけないの。フェイデン、私を軽蔑した?」
もし、最愛の女性が特殊な性癖を持っていたら、男はどう振舞うべきなのか。
フェイデンは仰向けに寝そべったナリアの上に四つん這いになり、その淫らな表情を見下ろしながら考えた。
ふと、ドルバインの裁判の日に、押しかけて来た裸の村人たちのことを思い出した。
アロナは証言台の上に立ち、夫とドルバインを助けるために、全てを投げうった。
愛とは相手を従わせることではなく、受け入れることなのかもしれない。
誰よりもナリアに愛されるためには、浮気相手を排除するのではなく、その欲望を知り、その願いを叶えてやるべきだったのだとフェイデンはようやく悟った。
変態だとわかっても、ナリアを捨てる気にはどうしてもなれなかったのだ。
「俺にも……隠れた欲求があるかもしれない」
フェイデンに見下ろされながら、ナリアは悠然と微笑んだ。
「もしそれがわかったら。私も付き合うわ。だって、愛しているもの」
ドルバインと夫婦だった時より、その愛はずっと強いとナリアは感じていた。
結局、ドルバインとは相性が悪かったのだと、今ならはっきりとわかる。
「ナリア、教えてくれ。どうしたらいい?」
「あなたのやり方が好き。いつものように抱いて」
ドルバインの口づけとは対照的な、甘く、優しい口づけがナリアの唇に降ってきた。
最高に気分よく、ナリアはフェイデンの首に抱き着いた。
その時、壁の向こうから耳をつんざくような悲鳴があがった。
「きゃああああっ」
見事に甘い雰囲気を台無しにされ、二人は不機嫌な顔をして飛び起きると、壁の向こうを睨むようにのぞき穴に顔を押し付けた。
壁向こうでは、アロナがドルバインの胡坐の上で貫かれた姿勢のまま、体をひねってその首に抱き着いていた。
その表情は恐怖でかたまり、淫靡な雰囲気は吹き飛んでいる。
アロナの視線の先にあるシーツの上には、ちょっと見たことがないような光景があった。
そこに、顔の形が浮かび上がっていたのだ。
ドルバインの胸に背を押し付け、座った形で交わっていたアロナは、シーツの一部が盛り上がっていく様子を目撃し、それが顔の形に見えたところで悲鳴をあげたのだ。
マットの下に誰かがいるのだとわかったが、その光景はあまりにも異様だった。
誰かの顔を覆っているシーツが、その顔の下にするすると引っ張られ、中に吸い込まれていく。
寝台の下にいる誰かが、穴からシーツを引っ張り込んでいるのだとわかったが、それにしても、不気味な光景であり、アロナは声もなくその様子を見守った。
最後に、顔を覆っているシーツまで寝台下に吸い込まれた。
やはりそこには穴が現れ、カインが顔を突き出していた。
「カイン?!」
ほっとしていいのか、驚いていいのかわからず、アロナはただただカインの顔を凝視した。
「アロナ、きれいだったよ。本当に素敵だった。体はドルバイン様のものだと言われて、うれしいと言ったね。アロナ、最高に苦しくて最高だった。やっぱり見てみたくて我慢が出来なくなって出てきてしまった。驚かせてごめん」
ドルバインに惹かれている気持ちを夫に聞かれてしまったのだと知り、アロナは真っ青になった。
マットの下からアロナを見上げるカインは、そんなアロナを安心させるように微笑んだ。
「アロナ、ドルバイン様に惹かれているならそれでいいのに、俺に遠慮することはない」
アロナの中にはまだドルバインの肉棒がおさまっている。
その結合部に視線を向け、カインはうっとりした顔になった。
それから重い宝石飾りで少し伸びた乳首を見上げ、犬のように舌を出す。
「君に捨てられることだって俺にとっては快感なのに」
とんでもないとアロナはドルバインから離れ、寝台からも滑り降りた。
「カイン!そんなこと言わないで!私達、子供のころから一緒だったのよ?離れるなんてそんなこと出来ない!」
アロナにとってカインは物心ついたときからずっと一緒にいる家族であり、空気のようになくてはならない存在だった。ほんの少し離れてしまうことすら、アロナにとっては耐え難い恐怖だった。
「アロナ……君が俺とドルバイン様を同時に愛したとしても、誰の迷惑にもならないし、誰を傷つけることもない。ならば、ここでは許されると思わないか?」
愛は一人だけに捧げるものだと思ってきたアロナは、驚いて立ち尽くした。
その体をドルバインが引き寄せ、寝台に乗せた。
カインの顔がマットの穴に引っ込み、がたがたと寝台の下で音がしたかと思うと、側面からカインの全身が現れた。
服は着ておらず、股間に拘束具だけを付けている。
興奮で乳首は尖って赤くなり、袋の部分はぱんぱんに腫れている。
痛そうに顔を歪めながらも、カインは笑顔で寝台に腰を下ろした。
「アロナ、ドルバイン様に惹かれる気持ちを抑える必要はない。俺は絶対にどこにもいかない。君を生涯愛している」
真っすぐなカインの眼差しを受け、アロナはドルバインを振り返った。
迸るような愛情を伝えたくてたまらなかったが、それは出来ないとずっと諦めてきた。
でも二人を同じように愛してもいいのであれば、ドルバインの愛を望んでもいいのだろうか。
ドルバインがアロナを情熱的に抱きしめ、そのまま寝台に押し倒した。
荒々しい口づけをしながら、体を擦りつけるように重ね、蹂躙するように体に手を這わせる。
激しい愛撫に、アロナは甘く喘ぎながらドルバインの顔を必死に見ようとした。
二人の目がぴたりと合った。
「アロナ、カインのことも俺にとっては大切だ。そしてアロナ、お前のことはもうただの人妻とは思っていない。俺にとっては……最後の最愛の女性だ」
「私……カインを愛しているのに、ドルバイン様のことも、愛してしまっていいのでしょうか……」
「俺のことも愛してくれるか?」
ドルバインの問いかけに、アロナは夫の姿を見ようとして、それをやめた。
夫の意見に頼るのではなく、自分の心に問いかけた。
心の欲求のままに動いても本当に良いのだろうか。
自分の本来の欲求を抑えて生きることは辛いことだ。他人を傷つけるような欲求であれば生涯我慢しなければならないこともある。
でもドルバインもカインもアロナの欲求を受け入れると言ってくれているのだ。
二人の夫を愛せない理由があるとすれば、それはアロナ自身がそれを受け入れられないからだ。
障害は自分自身の心の中にある。
「ドルバイン様、愛しています……。カインと同じぐらい。でも体を重ねるたびに好きになるから怖くて……。カインより好きになってしまったらどうしようかと」
「それはないだろう。お前達はまるで二人で一人のようだ。お前がいるところにはカインがいるし、カインがいるところにはお前がいる。俺は生涯お前達を大切にしたいと思っている。俺を愛し、ついてきてくれるか?」
「はい!」
答えたのはカインだった。
貞操帯の先から、感動の涙が滴っている。
アロナは少しだけ考えた。
「私も……変態かもしれません……」
世間的に変態と呼ばれる寝取られ好きのカインに必死に付き合ってきたが、アロナ自身も、また違う性癖の持ち主だったのだ。
困惑したように目を潤ませているアロナを見おろし、ドルバインは珍しくにやりと笑った。
「ここには変態しかいない。気にすることはない」
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