ハオマ -死後の酒場-

深澤ムムム

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死後の酒場 ハオマ

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(マスター視点)


<ワイワイガヤガヤ



死後の世界…あなたは信じますか?
信じようと信じまいと、ここにはたしかに存在します。

「ここは死後の世界なのです」
これを言うと、どんな人でも一度は驚愕します。
中には何度言っても信じない人もいます。


死後の酒場 ハオマ
ここは死後の人間が最初に訪れる場所。
死した人間は、ここで死んだことを認識し、死の原因を他の来客と語り合う。そうすることで、自身の死に折り合いをつけ、現世への未練を消していく。

これは言わば死後の世界の1つの儀式でもあります。


私は、このハオマの店主。皆からはマスターと呼ばれています。


ハオマには様々な来客があります。
死後の世界は、現世と性質が違うので、現世の多種多様な国、時代から来客があるのです。

<ワイワイガヤガヤ ワァーーワァー

「マスター!!!ウィスキーのロックもう一杯だぁぁ!はやぐぅぅ!!」

「ピーターさん…よく飲みますよね。今日は僕も、もう一杯いってみよう。
マスター、僕は梅酒のソーダ割りね。」

「ふたりとも飲み過ぎよ!全くぅ!
慎吾ちゃんは、そんなにお酒強くないんだから程々にしときなさいよ。」


「イザベルさん…そんなこと言ったって…」
「イザベルぢゃん!俺だぢはなぁ…さっきの兄ちゃんの死んだ理由に感動しちまっでよぉぉ…飲まずにゃいられねぇんだよぉぉぉ…」


「おじさんは感動してなくても永遠と飲んでるでしょ。」

<ワイワイガヤガヤ ワーワァー


例えば、カウンター席にこの座る3人。
右から
ピーター・パーク
山中 慎吾
イザベル・シウバ

彼らは、自らの死を語り死後の世界へと足を踏み入れた後も、この酒場に通い、そして初来店のお客の話を聞くことを楽しんでくださる方々……いわゆる常連のお客様です。


彼らは勿論、現世では既に亡くなっており、当然ですが各々、独自の死した理由があります。

ピーターはイギリス人で享年49歳、1940年に亡くなっています。

彼は小太りで、頭が禿げあげている、どこにでもいそうな中年男性ですが、こう見えても元英国陸軍の将校です。

第二次世界大戦に従軍し、戦死しました。

ドイツ軍に追い詰められた際、手榴弾を投げようとしましたが、手を滑らせて足元に落としてしまった。太った体が災いし、逃げられずに爆発に巻き込まれて死亡したとのことです。
本人は
「何とも呆気ない最後だわ!!わっはっはっはwwww」

と陽気に語ります。
結局、祖国が勝ったのだから良しとのことだそうです。




慎吾さんは日本人で享年38歳、2005年に亡くなっています。
真面目そうな顔立ちに、真面目そうな眼鏡、見た目同様、職業も高校の日本史教諭という真面目なものでした。

ある日、自殺するために屋上へ上がった生徒を、落ちるすんでのところで止めようとし、もみ合いの末、生徒ではなく自分が落ちてしまい亡くなったようです。

彼は性格も真面目そのものなので、ここへ初めて来た際も、残してきた仕事や生徒のこと、そして何より自殺しようとしていた生徒がどうなったのかということを気にかけていらっしゃいました。

結局、その生徒は助かったということを知り、安堵し死後の世界へ入っていかれました。
今は自分と同じように現世への未練が強い方に寄り添いたいと、ここへ頻繁に足を運んでくださります。




イザベルさんはブラジル人で享年29歳、2016年に亡くなっています。
褐色の肌に黄金色の長い髪の毛、数々の男性を魅了できるであろう魅力的な身体と、容姿に恵まれた方です。

彼女は、2016年当時に開催していたリオデジャネイロオリンピックのサッカーをバーで観戦していたそうです。そこで、お酒を飲みすぎて泥酔。帰り道に、ふらつき転倒、ちょうど転んだ先、頭の位置に水たまりがあり、それに溺れて溺死。


お酒のこわさを何よりもその身で体感することになったというわけです。

初めて自らの死因を振り返った彼女は……笑い転げて息ができなくなっておりました。

自分よりくだらない死に方のものはなかなかいないだろうと自負しているようです。

持ち前の明るさと親しみやすい性格で、初めていらっしゃるお客様にも積極的に話しかけていらっしゃいます。





このように、人の数だけ、人の死に様がございます。
勇敢なもの、悲惨なもの、涙なしでは語れないもの、思わず笑えてしまうもの…

中にはなかなか死を受け入れられない方もございます。


しかし……死は受け入れるほか道はありません。一度死んだものは蘇ることはありません。なので自らの死を受け入れるためにも、それを語らうのです。
未練があるのは自分だけではなかった。生き返りたいのは皆も同じ……と
仲間がいるだけで、人は楽になるものですので……


どのような死に様でも、死んだのだから仕方ないと思えるような手助けをするのがハオマでございます。




それでは……来客をお待ちしております。
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