人見知り伯爵の運命の番

紅林

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婚約編

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オスニエルがハルミトンを誘導するように王宮を歩くがそれはどうにも歓迎をしているという雰囲気ではない。それは出会った時からハルミトンは気になっていたのだ

「オスニエル殿、先程の事はどういう事ですかな?」
「…………」

ハルミトンが聞ても無視を決め込み、全く話そうとしない。無言で王宮内を歩くこと数分、ようやく会談の会場であるであろう部屋の扉の前に辿り着いた

「……ここだ。中には我が国の外務大臣であるヒューバット様がいる。くれぐれも無礼が無いようにな」

そう言ってオスニエルは両開きの扉を開けるように警備の騎士に合図した

「オスニエル様、その前に身体検査を」
「そうだったな。すぐに済ませてくれ」

すると警備の騎士二人がハルミトンの体をペタペタと触りだした。

「な、なにを……!」
「ただの身体検査だ。お前が武器などを持っている可能性があるだろう」
「……分かりました」

すると確認し終えたのか警備の騎士は一旦離れた

「大使、最後にその仮面マスクを外してもらおう」
「なっ、これは関係ないでしょう!?」
「そこに武器を隠されていても困るのだ。大使、私たちはお前を信用していない」

オスニエルだけではなくこの騎士二人もハルミトンのことを快く思っていないようだ

「分かりました。一瞬だけお渡しします。ですがすぐに返してください」
「……わかった。では、外してもらおう」

ハルミトンは、はぁ、と溜息を吐き仮面マスクを固定している金具に手をかける。普段から肌を全く晒さないハルミトンは内心で猛烈に焦っていた

(どどどどどどーしよう!?ほんとに無理だよぉ!なんで仮面なんか調べるのさ!こんな所に武器なんて隠せるわけないじゃん!)

ハルミトンのそんな心情を知るはずのないオスニエルと警備の騎士はハルミトンが仮面マスクを外すのを待っている

ハルミトンは銀色仮面シルバーマスクを固定していた金具を外して深く目を閉じて仮面を外した

「早くして下さいね」

ハルミトンは仮面マスクを騎士に渡した
それは数十秒後に手元へと渡された。返して貰った仮面マスクをハルミトンは手早く取り付けた

「身体検査は終わりましたね?では中へ入れて下さい」
「……分かった。ただし、不審な行動をした場合はすぐに衛兵が駆けつける。その事を覚えておけ」
「分かっています」

ハルミトンがそう言ってようやく、大きな両開きの扉を開けてもらえた

『バストロイド王国、特命全権大使ハルミトン・コンフィニシス伯爵、ご入場でございます』

どこからかそんな声が聞こえてきた
それと同時に初老の侍従がハルミトンの近くまでやってきて椅子を勧めた

「ヒューバット外務大臣はまもなくここに来られます。それまでしばしお待ち下さい。」

羊(?)の獣人らしき初老の侍従はハルミトンに湯気のたつ紅茶を置いて部屋から退室した
ハルミトンは仮面マスクを少しズラして紅茶を飲む

そんなこんなで一時間程が経過した
いくらなんでも遅過ぎる。客人、それも一国の大使をこれ程待たせるなど普通は有り得ないことだ
そして更に二時間がたった頃にようやくヒューバット外務大臣が会談室に入ってきた

「お初にお目にかかる異国の使者よ。我は獣王陛下より外務大臣の任を仰せつかっている虎族の王、ヒューバットである」
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