プログレッシブコンキー※番外編

私の初恋。

カフェはいつものように賑わっていたが、私の目は一組の客に釘付けだった。窓際の席に座る二人。
特に、優雅にカプチーノを飲む日本人と思わしき黒髪の男性に目が行った。彼はどこか儚げでありながらも、その笑顔には不思議な魅力を感じた。

私は店長に黙ってシナモンロールを手に取り、そのテーブルへと向かった。
「こちら、サービスのシナモンロールです。」
私が皿を差し出すと、黒髪の彼が驚いた表情で見上げてきた。
「ありがとうございます。とても嬉しいです」と彼は言った。そして、一緒に来ていた銀髪の男性が、彼の言葉に被せるように
「良かったね、都姫」と微笑んだ。

シナモンロールを見つめて頬が緩む笑顔の彼を見て、私は心がときめいた。彼の声音は柔らかく、どこか安心感を与えるものだった。
私は振り絞って
「このシナモンロール、うちの自家製なんです。ぜひお試しください。きっと都姫さんのお口にも合うと思います」と話しかけた。
内心、勝手に名前を呼んでしまったことに対して、舞い上がっていた。彼はシナモンロールを見つめ、
「本当にいい香りですね。甘いものが大好きなので嬉しいです。ありがとうございます」と再び礼を言い、皿を受け取るために手を伸ばした。

その瞬間、彼の手と私の手が軽く触れ合った。彼の手は暖かく、その触れ合いが一瞬の電気ショックのように心を揺さぶった。私は軽く微笑んでその場を去ったが、心の中では彼との触れ合いを反芻していた。

カウンターの向こうから見守っていると、彼がシナモンロールを頬張る様子が見えた。彼の頬が少し膨らんで、まるでリスのように愛らしい。その姿に私は思わず微笑んだ。

ふと目線を変えると、彼の向かいに座っている銀髪の男性が私を鋭い目つきで見ていた。
その目には明らかな警戒心と嫉妬が混じっているように感じられた。彼の視線に圧倒され、私は急いで目を伏せた。
心の中にはその視線の余韻が残っていた。男性は彼の口元を見つめると、そっと指を伸ばし、都姫さんの唇に付いたシナモンを拭い取った。そして、そのまま指を口に含んで「うん、美味しい」と微笑んだ。

その光景に、一瞬息を呑んだ。彼らの間には見えない絆が存在していることを感じた。男性の目には嫉妬と独占欲が混じっているように見えた。私は二人の様子を遠目で見守りながら、自分の心が少しざわめくのを感じていた。