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最期の連合艦隊
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響たちが陣形を整えながら敵艦の後方へ回り込もうとしている中、笠戸艦上では“海上”にも拘わらず“陸戦”が繰り広げられていた。
敵駆逐艦は笠戸の右舷側に衝突し、そのまま直角になるまで進み続けていた。そのため、艦の前方に搭載されている2門の速射砲を笠戸へ撃ち込むことができたのだ。
一方の笠戸は3基の速射砲を積んでいるものの至近距離から砲撃を受け、また別の2隻からも至近弾を浴びていた。笠戸の右舷は一部が敵駆逐艦に食い込まれ、敵艦から離れることは叶わない。敵駆逐艦の基準排水量は笠戸の約2倍なのだから、当然、海防艦の方が脆弱だ。
ならばと決死隊を編成し、敵艦へ乗り込んだのが先ほどの陸戦だ。満足な量の小銃が無いのだから大多数の兵は包丁などの調理道具から船体の修理に使う木材、更には約20kgの速射砲用榴弾と、それはひどい装備だった。
ただし、その尊い命を代価に2門の速射砲を一時的に無効化することができた。
――艦上で玉砕した唯一の海防艦と後に評価されるのだろうか、それとも最期に敵艦へ上陸し一糸報いたと評されるのだろうか。
そう考えられるだけの余裕でさえ、彼らには与えられなかった。
「万歳いいいいいい!!!!!!!!!」
最期の突撃が行われ、ソ連海軍兵士と艦上で白兵戦が行われる。差し違えようと押さえつけ海へ飛び込む者も多く、重油が広がる海面に何人も両軍の兵士が浮き沈みしていた。
「魚雷の距離に気をつけろ!敵艦はかなり近いぞ」
響に搭載されている93式魚雷は俗に酸素魚雷と呼ばれるもので、その射程は最高で戦艦大和の46cm主砲よりも先へ届く。ただし、今回は極めて近い距離であり、酸素を節約することなく使うことで速度を大幅に上げる方針だ。
その速度は約52ノット(約100キロ)となる。響と同程度の規模の駆逐艦など一瞬で沈むことになるだろう。
これからの戦況で最高の状態は魚雷が2隻に命中し沈没することだ。だが、当然敵艦もこちらの存在に気づいており、警戒を怠ってはいない。
敵は駆逐艦2隻だ。一方こちらは駆逐艦1隻と海防艦2隻。数の上では勝っているものの、その内訳は極めて不利にある。
さらに、挺身隊は次に占守海峡へ向かい占守島の防衛を支援しなければならない。ここで笠戸を失ったことの意味は大きい。そして、今宇久奈を悩ますのが笠戸乗員の回収についてだ。
挺身隊と呼ばれるだけあって、決死の覚悟を皆持っているが、だからといって見捨てるわけにはいかない。だが回収に時間を裂くと本来の目的が達成できないのだ。この矛盾する問題が彼を悩ませていた。
敵駆逐艦は笠戸の右舷側に衝突し、そのまま直角になるまで進み続けていた。そのため、艦の前方に搭載されている2門の速射砲を笠戸へ撃ち込むことができたのだ。
一方の笠戸は3基の速射砲を積んでいるものの至近距離から砲撃を受け、また別の2隻からも至近弾を浴びていた。笠戸の右舷は一部が敵駆逐艦に食い込まれ、敵艦から離れることは叶わない。敵駆逐艦の基準排水量は笠戸の約2倍なのだから、当然、海防艦の方が脆弱だ。
ならばと決死隊を編成し、敵艦へ乗り込んだのが先ほどの陸戦だ。満足な量の小銃が無いのだから大多数の兵は包丁などの調理道具から船体の修理に使う木材、更には約20kgの速射砲用榴弾と、それはひどい装備だった。
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