久遠の海へ 再び陽が昇るとき

koto

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民主主義の崩壊

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 戦後の日本において、GHQとの窓口を担当したのは外務省外局に置かれた終戦連絡中央事務局だった。外務省職員である渡辺誉は、その組織に属していた当時、GHQを始め連合各国との交流を深めていた。
 その経験をもとに、後継組織である連絡局の局長を任されたのだった。
 
 朝鮮戦争が開始されてから、渡辺はめまぐるしい変化の中で過ごしていた。まず、半島の戦いは民族戦争であるが、米ソ両国が後方支援を行うなど、代理戦争の体をしていたことが問題だった。
 とどのつまり、代理戦争は米ソ直接戦争に発展するのか否かを見極めなければならなかったのだ。そして、もし直接戦争になると、北北海道のソ連軍が南下を始めることは必然だった。
 だからこそ、日本本土に現在展開する米軍が半島に派兵されることを阻止しなければならなかった。日本に独自の軍が無い以上、米軍や連合軍部隊が他国へ展開するのは、本土防衛が絶望視されることと同意なのだ。

「今米軍が日本を離れると、間違いなくソ連軍が南下を始めます。中国が共産化した今、日本はアジア先進国唯一の民主主義陣営に他なりません。半島を失っても、日本を失うことはあってはなりません。」
 渡辺は、我ながら何と酷い言い様だろうかと自虐していた。それでも、事実進駐軍が半島へ展開すると日本の防衛力はゼロと言っても過言ではない。留萌事件を始め、ソ連軍の民間人に対する犯罪傾向は米英など連合国よりもより酷いものだった。
 もし彼らが南下した場合、留萌事件とは比べ物にならない被害が日本の民衆に振り被る事となるだろう。

「日本の防衛は我々が完全に保障します。朝鮮戦争に日本人は誰一人として被害に合うことはないでしょう。」
 GHQからそのように返事がされる。渡辺を始め日本にとっては最善の結果だと言わざるを得なかった。
 では、半島はどうなるのか?共産化が成された場合、ソ連陣営の最前線が半島から日本に引き下げられる事態となってしまう。再び日本が焼け野原になる可能性が非常に高くなるのだ。
「では、朝鮮半島はどうなるのでしょうか?」
「現在、国連各国からなる国連軍を組織中です。朝鮮半島の調停は国際連合が責任を取って行います。日本人は非軍事化を進め、民主化を成功することに集中してください。」

 ――どうしても、日本に独自の軍隊を持たせることは許さないのだな。
 これは、GHQからの返答を、とっさに渡辺が感じ取ったことだった。
 非軍事化と民主化。これはGHQが戦後日本に求めた最大の案件だ。GHQの存在意義もそこにあると言っても過言ではない。
 日本という海洋国家はどうしても海軍国となり、それは今後太平洋上で再び米海軍と戦闘が生じることが予測できた。米国にとって、太平洋を手中に収めるためには日本の再軍備を許せないのだ。

 当時、日本の再軍備はありえないと、誰もが考えていた。
 そして、それが幻想だったことを日本人と西側陣営の諸国が知る事となるのだ。
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