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第二章 拡がりゆく世界
第51話 別れる色
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次の日から、ヨハネは商会の仕事を離れて、市参事会の仕事に駆り出された。
市参事会が次に始めた仕事は神学校を作る事だった。それはエル・デルタの富裕層たちの子弟に造物主の教えを与えるための学校で、奴隷や奉公人には関係のないものだった。それでもヨハネの心は弾んだ。奴隷売買を離れて何かを造り上げる仕事に関われるのだ。神学校は破壊されたワクワクの神殿跡に築かれる予定になっていた。
そこはエル・デルタを見下ろせる丘の上だった。ヨハネとその下の奉公人たちは地ならしや土台用の大石運びなど、単純な仕事をさせられた。ヨハネたちは毎日骨が擦り減るほど働いたが、市参事会から出される食事は、肉体労働者向けの粗末なものだった。それでもヨハネたちは一生懸命働いた。
基礎的な工事が終わった。次は土台造りとうわ物を立てる段階だった。そこまで作業が進むと、市参事会の背の高い男がヨハネたちのもとに来た。
彼はヨハネの目と髪を見た後、首筋と手の甲を刺すように見た。
ヨハネは体験的に知っていた。この島では、みな初対面の人間を値踏みする時に、その目と髪の色、そして肌の色を確認するのだ。
「皆さん、今日で終わりです。すべて終わりました」
「しかし、学校造りはこれからですよ」
ヨハネは声を上ずらせながら言った。
「ここから先は、高度な数学や建築の知識が必要なのです。皆さんのご協力には感謝しています」
その男は目を細めて言った。
「しかし何かできる事があるはずです。私は今まで何度も解体工事や石垣の積み上げ作業を手伝ってきました。きっとお役に立てます」
ヨハネは食い下がった。
するとその技術者は腕組みをして片頬を上げながら言った。
「皆さんはあちこちの商会からお借りした大事な奉公人です。あまり市参事会で酷使すると苦情が来ますからね。今まで大変だったでしょう。このへんで休息が必要ではありませんか? 後は専門的な教育を受けた技術者が行います」
「そうですか……建築の仕事に参加できる貴重な機会だと思っていたんですが……」
ヨハネは胃の張りを感じるほど落胆して肩を落とした。
「本当に助かりましたよ」
そう言うと、その男は歩き去った。
ヨハネはしばらく呆然としていた。
「頭、どうかしたんですか」
パウロが近づいて来て聞いた。
ヨハネは無反応で立ち尽くしていた。やがてヨハネは自分が連れてきた奉公人たちに静かに言った。
「さあ、帰るぞ」
奉公人たちは戸惑い、仲間たちと騒ぎながら口々に叫んだ。
「仕事はどうなったんですか」
ヨハネは両の拳を握り締めて、大股でその場を歩き去った。
ヨハネはぞろぞろと丘を降りる奉公人の群れを丘の上から見下ろした。
みな、ヨハネと同じように黒髪を土埃で汚し、茶色い肌を日の光に焼かれていた。ふと、彼は後ろを振り返り、作業を続けるため、丘の上に残っている技術者たちを見上げた。彼らは金色や赤色の髪をして白い肌を太陽に光らせていた。
ヨハネはすっかり慣れているはずだった。それでも小さな針を刺されるように、彼の心は痛んだ。
市参事会が次に始めた仕事は神学校を作る事だった。それはエル・デルタの富裕層たちの子弟に造物主の教えを与えるための学校で、奴隷や奉公人には関係のないものだった。それでもヨハネの心は弾んだ。奴隷売買を離れて何かを造り上げる仕事に関われるのだ。神学校は破壊されたワクワクの神殿跡に築かれる予定になっていた。
そこはエル・デルタを見下ろせる丘の上だった。ヨハネとその下の奉公人たちは地ならしや土台用の大石運びなど、単純な仕事をさせられた。ヨハネたちは毎日骨が擦り減るほど働いたが、市参事会から出される食事は、肉体労働者向けの粗末なものだった。それでもヨハネたちは一生懸命働いた。
基礎的な工事が終わった。次は土台造りとうわ物を立てる段階だった。そこまで作業が進むと、市参事会の背の高い男がヨハネたちのもとに来た。
彼はヨハネの目と髪を見た後、首筋と手の甲を刺すように見た。
ヨハネは体験的に知っていた。この島では、みな初対面の人間を値踏みする時に、その目と髪の色、そして肌の色を確認するのだ。
「皆さん、今日で終わりです。すべて終わりました」
「しかし、学校造りはこれからですよ」
ヨハネは声を上ずらせながら言った。
「ここから先は、高度な数学や建築の知識が必要なのです。皆さんのご協力には感謝しています」
その男は目を細めて言った。
「しかし何かできる事があるはずです。私は今まで何度も解体工事や石垣の積み上げ作業を手伝ってきました。きっとお役に立てます」
ヨハネは食い下がった。
するとその技術者は腕組みをして片頬を上げながら言った。
「皆さんはあちこちの商会からお借りした大事な奉公人です。あまり市参事会で酷使すると苦情が来ますからね。今まで大変だったでしょう。このへんで休息が必要ではありませんか? 後は専門的な教育を受けた技術者が行います」
「そうですか……建築の仕事に参加できる貴重な機会だと思っていたんですが……」
ヨハネは胃の張りを感じるほど落胆して肩を落とした。
「本当に助かりましたよ」
そう言うと、その男は歩き去った。
ヨハネはしばらく呆然としていた。
「頭、どうかしたんですか」
パウロが近づいて来て聞いた。
ヨハネは無反応で立ち尽くしていた。やがてヨハネは自分が連れてきた奉公人たちに静かに言った。
「さあ、帰るぞ」
奉公人たちは戸惑い、仲間たちと騒ぎながら口々に叫んだ。
「仕事はどうなったんですか」
ヨハネは両の拳を握り締めて、大股でその場を歩き去った。
ヨハネはぞろぞろと丘を降りる奉公人の群れを丘の上から見下ろした。
みな、ヨハネと同じように黒髪を土埃で汚し、茶色い肌を日の光に焼かれていた。ふと、彼は後ろを振り返り、作業を続けるため、丘の上に残っている技術者たちを見上げた。彼らは金色や赤色の髪をして白い肌を太陽に光らせていた。
ヨハネはすっかり慣れているはずだった。それでも小さな針を刺されるように、彼の心は痛んだ。
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