いつか君に巡り逢える

原口源太郎

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第1章

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 僕は優花と歩いていた。
 空は夜の色に塗り替えられようとしている。濃さを増す闇が、泣きじゃくる優花を人の目から隠そうとしているようだった。
 自転車通学の大樹は、僕たちに気を使ったのか、先に帰ってしまった。
 あの後、僕と大樹は優花から断片的に話を聞き、その場に一時間もボーっと佇んでいた。
 テスト前日ということもあり、人影のなくなった校舎は静かで、無機質で、寂しかった。それでも優花は高校の敷地を出るまでは涙をこらえていた。
 林に好きだと告げられたのは、夏休みも終わりになろうとしている時だったという。夕方電話で呼び出され、直接目の前で言われた。その後、何度かラインや電話で僕の悪口を言い、自分と付き合ってくれと優花に申し込んだ。優花はもちろん断り続けた。
 林だけではなかった。僕の事を悪く言ったり、脅しに近い言葉を口にして優花に交際を迫った奴もいたようだ。僕と優花は誰もが知っているカップルとして、妬みや嫉妬、そして嫌がらせの対象になっていた。
 鈍感な僕は、優花が心を悩ましていることに、少しも気が付かなかった。
「今日のことはみんな無かったことにして、忘れちまおう」
 そう言って大樹は自転車をこいで行ってしまった。
 僕たちは無言で歩いた。
 やがて優花の目から涙がぽろぽろとこぼれ出した。
「僕は林がすべて悪いとは思わない。林はあいつなりに真剣に優花を好きだった。あれだけ真剣に人を好きになれるなんて凄いことだと思う」
 僕がそう言うと、優花はこくんと小さく頷いた。
 僕はもう怒っていなかった。
 林は優花のことを想い、勉強も手につかず、夜も眠れない日があったに違いない。
 だから僕はとても悲しかった。林が可哀相だった。優花が可哀相だった。そして自分自身が大間抜けに思えて悲しかった。

 そんなこんなで、一年の三学期のテストはひどい成績だった。もちろん、自分の実力がそんなもので、前日のことはいい訳にしかすぎない。
 テストが終わって二週間後の夜、僕は優花に電話をかけた。
 僕たちはあまりにも能天気だった。いや、僕だけが。
 僕たちの交際は二人にとって重みになるだけだ。これからは今までのように二人で子供のようにじゃれ合うことはできない。
 優花が電話に出ると、僕は別れの言葉を告げた。
 優花は全てを予想していたように、まるで当たり前のことのように、短い同意の返事をしただけだった。
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