いつか君に巡り逢える

原口源太郎

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第1章

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「お前、もう諦めたほうがいいんじゃないの」
 大樹が二つ目の現実的なアドバイスをしてくれた。
 それは僕の二度目の喫茶店での張り込みが徒労に終わったという報告をしたあと、大樹がすかさず言った言葉だった。
 確かに大樹の言う通りだ。僕は少しも可能性のないことに時間をかけていられるほど暇じゃない。まだはっきりと進路を決めているわけじゃないけれど、今からやるべきことをやっておかないと、取り返しのつかないに事になってしまう。
 元々一目見ただけの、どこの誰かもわからない彼女だ。テレビや雑誌のかわい子ちゃんに恋してしまったのと同じじゃないか。そう考えてみても、どうしても忘れることができない。かといって、このままいつまでも思い悩んでいるわけにもいかない。
 今度が最後だ。次の日曜日がダメだったら、きれいさっぱりと諦めよう。僕はそう心に固く誓った。

 先週と先々週に居座った喫茶店をもう一度利用するわけにはいかなかった。コーヒー二杯で何時間も粘られては、営業妨害と言われても仕方がない。それほど僕は図太くない。
 僕は駅前が見渡せるもう一軒の喫茶店を見つけておいた。
 朝の寒さがまだ残っている中、僕はいつもよりも早めに家を出た。今度の店は駅の正面。通りを挟んだ向かいのビルの二階にある。ちょっと遠いけど、視力に自信のある僕には、何の問題もない。
 窓際の席に座ると、見晴らしがよすぎて、目が回りそうなほど駅前の全てが見渡せた。
 コーヒーを注文すると、ポーズでテーブルに参考書を広げて、階下の人の流れを目で追った。
 数え切れないほどの人を目で追いながら、僕は彼女の事を考えていた。
 こんな間の抜けた方法じゃなく、もっと別のやり方があったんじゃないだろうか。
 近くの高校を一つ一つ当たれば、きっと彼女を捜し出せただろう。もちろん彼女には付き合っている男くらいいるかもしれない。とても素敵な人だから。それでもかまわない。もう一度その姿を見るだけでもいい。彼女の存在を現実のものとしてもう一度確かめたい。
 不意に僕は千トンもあるハンマーに打ち付けられた。百万ボルトの電流が僕の体の中を駆け抜けた。
 彼女だ。
 豆粒のような人たちの中で、彼女は何十倍も大きくなって僕の視界の中に飛び込んできた。
 僕は参考書を放り出して走り出した。
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