勇者ブルゼノ

原口源太郎

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第四章

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 ババロンが帰国したときも、精悍さを増した姿に皆が目を見張った。しかし一番驚いたのはババロンのほうだった。
「ブルゼノさんは人が変わったようだ。パフラットさんが旅から帰ってきたときも驚いたけれど、ブルゼノさんはもっとすごくなっている」
 ババロンは驚きを率直にパフラットに伝えた。
「そうです。ついに彼は勇者になる決断を下したのですから」
 パフラットはにこやかな笑みを浮かべて言った。

 ババロンも帰国するとすぐに王様に旅の報告をするために城に行った。
 王様からはブルゼノも同行するようにと通達があった。
 ババロンはマットアン王国の魔法使いから与えられたお墨付きを王様に渡した。
 王様はババロンを正式に魔法使いと認め、ブルゼノにも勇者見習いという称号を与えた。
「そなたのことは多くの者から聞いておる。勇者とは王と同じようにこの国を象徴する存在となる。それを常に心に留めて精進するのであるぞ」
 王様はブルゼノを見つめて言った。


 ブルゼノが勇者見習いとなって一年が過ぎた。
 弓の腕は元武道家が太鼓判を押すほどだし、剣術もパフラットを凌ぐほどになっていた。
 王様はブルゼノとパフラット、ババロンを城に呼んだ。
「ブルゼノよ。そなたを勇者見習いとして一年が経った。いよいよ勇者になるための冒険へと旅立つ時が来たのだ」
 王様はそこで言葉を切り、片膝を付いて頭を下げているブルゼノ、パフラット、ババロンを見た。
「今までの勇者は、町の東の祠にある勇者の証を、たった一人で取りに行ってくることにより、正式に勇者として認められてきた。しかし今回は三人共に冒険者としてふさわしいかを見極める旅にしたい。三人で一緒に旅をし、勇者の証を持ってくるのだ」
 そこで王様は背筋をピンと伸ばし、威厳を込めてひとつ咳払いをした。
「それでは勇者見習いブルゼノ、および武道家パフラット、および魔法使いババロンに冒険を命ずる。南の国アザム王国のザジバルに行くのだ。ザジバルの高名な武道家リンと勝負をし、リンに認められれば勇者の証を授けられるであろう。無事、勇者の証を持ち帰ったあかつきには、ブルゼノには勇者と冒険者としての称号を与え、パフラットとババロンには冒険者としての称号を与える。では、行くのだ」

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