勇者ブルゼノ

原口源太郎

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第四章

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 ブルゼノたち四名は帰国すると、その足で王様のもとに向かった。
「おお、セイナ、立派になったのう」
 四人を見た王様はまずセイナに声をかけた。
 ブルゼノはリンから預かった手紙を王様に渡し、旅の報告をした。
「うむ。ご苦労であった。高名な武道家であるリンに、初の立ち合いで認めてもらえるとはたいしたもの。余も鼻が高いぞ。では、勇者見習いブルゼノ。そなたに勇者としての称号を与える。また、ブルゼノ、パフラット、ババロンを冒険者として認める。これから困難な冒険に立ち向かう時もあるであろうが、しっかり頼むぞ。では役所部屋に行き、契約書にサインをしてきなさい。契約が済み次第、冒険を言い渡す」
 王様との雇用契約を結ぶことにより、正式に勇者となることができる。それが終わればすぐに冒険の旅が待っている。

 セイナはパフラットのいなくなった道場で少しばかりの門人に稽古をつけ、多くの子供たちの世話を焼くようになった。
 ブルゼノとパフラット、ババロンの三人は慌ただしく旅の支度を整え、新たな冒険へと旅立っていった。

 五年の歳月が流れた。
 ジング王国の冒険者三人は、何度も命の危険にさらされるような壮大な冒険の旅を終えて帰国した。
「今回の旅はさぞや困難なものだったであろう。よくやり遂げた。しばらくの間、ゆっくりと休むがよい」
 ブルゼノの報告を聞き終えた王様は、傷つきながらもたくましく成長していく冒険者たちを見て言った。

 その翌日、勇者ブルゼノは王様に面会を求めた。
「はて。今回の冒険の旅は長い月日を要するものであったからな。昨日、報告し忘れたことでもあったかの?」
 疑問に思いながらも、王様は謁見の間に行った。
 ブルゼノの隣に久しぶりに見るセイナの姿があった。
 セイナはすっかり大人になり、とても美しくなっていた。
 王様はすぐに今回の訪問の意図を悟った。
「この度、私たちは結婚することになりました。王様にはその報告に参りました」
 ひと通りの形式的なあいさつの後で、ブルゼノはそう言った。
「ほう、そうであるか」
 王様は二人の若者を見つめた。
「思えば二人して町から離れ、夜中に捜索隊を出したこともあった。あの時の二人がこれほどまでに立派に成長したこと、余は心の底から嬉しく思う。式の日取りは決まったのか?」
「いえ、まだ決めていません」
「めでたいことじゃから、その日はこの城の広間を使ってよいぞ。うんと派手にやるがよい」
 王様は目を潤ませて言った。
 一般人が城で結婚式を挙げることなどジング王国では前例のないことだった。それだけ王様の喜びと期待が大きいといえた。
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