夢でもし君に会えたら

原口源太郎

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第二章

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 真人は咄嗟にカウボーイの腰に下げた拳銃を抜き取ると、扉から通りに飛び出した。
「その車から離れろ!」
 真人は威嚇のつもりで狙いを外して引き金を引いた。拳銃のことなど知らない真人は、安全装置があるなんてことも知らなかった。ただ引き金を引いただけだったから、当然弾は出なかった。
 インディアンたちは真人に銃口を向けた。
 真人は走って物陰に滑り込んだ。
 インディアンたちは馬を真人に向けて走らせる。
 パン、パン、パンと数発の銃声がして、何人かのインディアンが馬から転げ落ちた。他のインディアンたちは慌てて逃げていく。
 酒場から拳銃を持った男たちが出てきた。
「無鉄砲な事するもんだ」
 男の一人は真人から拳銃を取り上げると、自分のホルダーに戻した。
「インディアンを一人殺すと、その三倍の人が殺される」
 真剣な表情で男が真人に言った。
「おい、ちょっと!」
 負傷して馬から落ちたインディアンを調べていた男が叫んだ。
「こいつ、ジョージだぜ」
「こっちはスティーブだ」
 頭の飾りと顔を隠す布を取ると、それは白人の顔だった。
「おーい、みんな、こいつらはインディアンなんかじゃない!」
 真人から拳銃を取り上げた男が叫んだ。
 通りの両脇に立ち並ぶ家々から怯えた表情の人々が出てきた。
「こいつらは保安官が生きている頃に町から追放された無法者たちだ」
 男は真人に言った。
「インディアンでないとわかった以上、俺たちは戦える。まあ、正体がばれたから、あいつらは二度とこの町には来ないと思うけどな」
 男は真人の肩をポンポンと叩いた。
「これでインディアンに怯えずに暮らせる」
 真人を囲む人々から歓声が上がった。
「みんなあんたのおかげだ。来いよ。礼をしなきゃ」
「いえ、僕はもう行かないと」
「急ぐのか?」
「はい」
「人を捜していると言ったな。俺たちはこの町から出たことはないから外のことはよく知らないが、南東にある城に行ってみな。あそこには王様がいるって話だ。王様なら何か知っているだろう」
「そうですか。ありがとうございます」
「礼を言うのはこっちだぜ。ありがとう」
 カウボーイの男はにやりと笑って親指を立てた。
「早く友達が見つかるのを祈ってるぜ」
 真人が急いで車に戻ると、トレーシーは安らかな寝顔ですやすやと寝息を立てていた。
「何も知らないでいい気なもんだ」
 真人はつぶやいて微笑むと、三角山より左の方向を目指して車を走らせた。
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