32 / 35
第三章
9
しおりを挟む
もう一つのピラミッドは老人のピラミッドよりも少しだけ小さかった。
ピラミッドへの入り口はすぐに見つかった。
中に入る前に、真人はシャツを脱いで砂の上に広げた。
「マヒト、何をしているの?」
「道に迷わないおまじない」
そう言って真人はシャツの上に砂をどんどん乗せた。そしてシャツの端を何カ所か持って上げると、シャツは砂の詰まった袋のようになった。
「さ、行こう」
砂の入ったシャツを肩に背負って、真人は穴の中に入った。
中は老人のピラミッドのように、壁の両側に火の灯ったろうそくが並んでいる。通路は左右に分かれ道があり、迷路のようになっている。
「どうする? 端から見ていくか?」
「三人で手分けして探そうよ」
「そんな事をしたら、すぐに迷子になっちゃうわ」
「ここで悩んでいてもしょうがない。取りあえず三人で一緒に行こう」
三人は四角い石を積み上げて造られた薄暗い通路を歩き始めた。
すぐに最初の四辻にたどり着いた。前を見ても右を見ても左を見ても同じような通路が見えるだけだ。
「いいことを思い付いた。僕は真直ぐに行く。謙太郎は右、トレーシーは左に行って」
「えー」
嫌そうな顔をしたのはトレーシーだ。
「ただ真直ぐに行くだけでいいんだ。決して道を曲がってはいけない。行き止まりまで行ったらここに戻ってくるんだ。行ってくるまでに途中の様子を探ってくる。階段があるか、何か部屋みたいな場所はあるか」
そう言って真人は四辻の真ん中に砂の山を作り、来た方向にもう一つ小さな山を作った。
「ここが集合場所だ」
三人は別れた。
真人は真直ぐに進み、三つの四辻を通り過ぎて、Tの字になった三叉路にぶつかった。そこから左右の道を見てみると、片側はずっと壁になっていて、反対側は等間隔に分かれ道が並んでいる。
真人が砂山のところまで戻ると、謙太郎とトレーシーが待っていた。
謙太郎とトレーシーの報告を聞いて真人は確信した。このピラミッドの中は通路が碁盤の目のようになっている。
「階段か部屋らしいものはあった?」
真人は謙太郎とトレーシーに尋ねた。
二人は首を横に振る。
「場所を変えて今と同じようにしていこう。通路は縦と横に五本ずつだ。どこかに部屋か階段があると思う」
もう一度別の場所を起点にして三人で別の方向に進んだ時、真人は階段を見つけた。壁から少し引っ込んだところにあって、近くまで行かないとその存在がわからないようになっていた。
一度、待ち合わせ場所まで戻り三人が揃ってから階段を登った。
そこも下の階と同じようになっているらしかった。
「よし、ここも同じように」
三人が別々の方向に歩き出そうとした時、ズズズズとピラミッドが揺れた。
上からぱらぱらと砂が落ちてきて、真人は天井を見上げた。丁度トレーシーの上の大きな石が動いている。
「トレーシー! こっちに来い!」
トレーシーは真人の声にぱっと反応した。
ズズズズ、ズドーン!
巨大な岩が落ち、トレーシーは間一髪で岩の下敷きになるのを免れた。
三人は青くなった。特に犠牲者になり損ねたトレーシーは真人にしがみ付いてガタガタと震えている。
「お前たちはここにいろ。これから先は何があるかわからない」
「嫌だ、俺は行く」
謙太郎が力強く言った。
「ダメだ、そこにいろ」
そう言って真人が歩き始めると、またズズズズ・・・・
ドーン!
真人は地面を転がっていた。危ういところで飛び退き、ぺちゃんこになるのを免れた。巨大な岩は二つの通路を塞いでしまった。
「真人兄ちゃん、俺も行くからね」
起き上がった真人に、謙太郎が言った。
「私だけ置いていかないで」
トレーシーは半泣きになっている。
「謙太郎はトレーシーを守ってあげないと」
そう言うと、真人はあと一つ残る通路に向かって全力で駆けだした。
ズドーン!
巨大な岩が三番目の通路も塞ぎ、残された謙太郎とトレーシーは今上ってきた階段を下りるしか道はなくなった。
ピラミッドへの入り口はすぐに見つかった。
中に入る前に、真人はシャツを脱いで砂の上に広げた。
「マヒト、何をしているの?」
「道に迷わないおまじない」
そう言って真人はシャツの上に砂をどんどん乗せた。そしてシャツの端を何カ所か持って上げると、シャツは砂の詰まった袋のようになった。
「さ、行こう」
砂の入ったシャツを肩に背負って、真人は穴の中に入った。
中は老人のピラミッドのように、壁の両側に火の灯ったろうそくが並んでいる。通路は左右に分かれ道があり、迷路のようになっている。
「どうする? 端から見ていくか?」
「三人で手分けして探そうよ」
「そんな事をしたら、すぐに迷子になっちゃうわ」
「ここで悩んでいてもしょうがない。取りあえず三人で一緒に行こう」
三人は四角い石を積み上げて造られた薄暗い通路を歩き始めた。
すぐに最初の四辻にたどり着いた。前を見ても右を見ても左を見ても同じような通路が見えるだけだ。
「いいことを思い付いた。僕は真直ぐに行く。謙太郎は右、トレーシーは左に行って」
「えー」
嫌そうな顔をしたのはトレーシーだ。
「ただ真直ぐに行くだけでいいんだ。決して道を曲がってはいけない。行き止まりまで行ったらここに戻ってくるんだ。行ってくるまでに途中の様子を探ってくる。階段があるか、何か部屋みたいな場所はあるか」
そう言って真人は四辻の真ん中に砂の山を作り、来た方向にもう一つ小さな山を作った。
「ここが集合場所だ」
三人は別れた。
真人は真直ぐに進み、三つの四辻を通り過ぎて、Tの字になった三叉路にぶつかった。そこから左右の道を見てみると、片側はずっと壁になっていて、反対側は等間隔に分かれ道が並んでいる。
真人が砂山のところまで戻ると、謙太郎とトレーシーが待っていた。
謙太郎とトレーシーの報告を聞いて真人は確信した。このピラミッドの中は通路が碁盤の目のようになっている。
「階段か部屋らしいものはあった?」
真人は謙太郎とトレーシーに尋ねた。
二人は首を横に振る。
「場所を変えて今と同じようにしていこう。通路は縦と横に五本ずつだ。どこかに部屋か階段があると思う」
もう一度別の場所を起点にして三人で別の方向に進んだ時、真人は階段を見つけた。壁から少し引っ込んだところにあって、近くまで行かないとその存在がわからないようになっていた。
一度、待ち合わせ場所まで戻り三人が揃ってから階段を登った。
そこも下の階と同じようになっているらしかった。
「よし、ここも同じように」
三人が別々の方向に歩き出そうとした時、ズズズズとピラミッドが揺れた。
上からぱらぱらと砂が落ちてきて、真人は天井を見上げた。丁度トレーシーの上の大きな石が動いている。
「トレーシー! こっちに来い!」
トレーシーは真人の声にぱっと反応した。
ズズズズ、ズドーン!
巨大な岩が落ち、トレーシーは間一髪で岩の下敷きになるのを免れた。
三人は青くなった。特に犠牲者になり損ねたトレーシーは真人にしがみ付いてガタガタと震えている。
「お前たちはここにいろ。これから先は何があるかわからない」
「嫌だ、俺は行く」
謙太郎が力強く言った。
「ダメだ、そこにいろ」
そう言って真人が歩き始めると、またズズズズ・・・・
ドーン!
真人は地面を転がっていた。危ういところで飛び退き、ぺちゃんこになるのを免れた。巨大な岩は二つの通路を塞いでしまった。
「真人兄ちゃん、俺も行くからね」
起き上がった真人に、謙太郎が言った。
「私だけ置いていかないで」
トレーシーは半泣きになっている。
「謙太郎はトレーシーを守ってあげないと」
そう言うと、真人はあと一つ残る通路に向かって全力で駆けだした。
ズドーン!
巨大な岩が三番目の通路も塞ぎ、残された謙太郎とトレーシーは今上ってきた階段を下りるしか道はなくなった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる