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グルドフ旅行記・4 怪しい奴らの正体を暴け!
悪い奴らを退治する
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翌朝、五人でミナルテの村を出発し、ポイの町へ向かった。
レイも腰に剣と木刀を携えている。
幼い時に体力作りのためと、短い間だったがイナハから稽古をつけてもらっていたレイだ。しかもミナルテに来てからも、自立して生きてゆくために必要になるかもしれないということで、再びイナハから剣術の教えを受けていた。だからレイも多少は剣を使えないこともなかったが、危ない場面には立たないとイナハと固く約束していた。
ポイの町は一見静かだった。
昼過ぎに町に着いたグルドフたちは役所に行った。マットアン王国では、それぞれの町や村に王様の命によって派遣された役人がいる。ニタリキの村には二人だったが、ポイにはもっと多くの役人が常駐していた。
「あ、グルドフさん」
役所の建物に入った時に、グルドフに気付いて声をかけたのは、ニタリキにいた若い役人のうちの一人だった。
「さっそく来ていただいたようですな」
グルドフが言った。
「先ほどマットアン王とアザム国への使者を出したところです」
若い役人が、上司に報告するかのように言った。
「それでどのようにするおつもりですかな?」
役人に尋ねると、年配の体格のいい男がグルドフのところに手を差し伸べながら歩いてきた。
「お話はお伺いしました、グルドフさん。私はこの町の町長のイガマです。ぜひあなたに、いえ、あなたたちに協力をお願いしたい」
ポイの町長は、グルドフの後ろにいる者たちも見て言った。
「もちろん協力します」
「実は、私どもだけで十五人もの盗人どもを捕らえるのは無理ですし、かといって王様からの助けを待っていたら、何日も経ってしまいます。どうしたら良いかと悩んでいたところであります」
「そうですな。奴らの中には魔法使いがいますから、不意を突くしかありません。私たちの動きを悟られないように行動する必要があります。悪党どもは今、どこにいるかわかりますか?」
町の地図をテーブルの上に広げ、グルドフたちと役人は念密に作戦を立て始めた。
「火事だー!」
誰かが叫んだ。
宿の中に煙が充満していく。
「火事だー!」
もう一度叫び声がした。
宿屋の隣の狭い路地にドラム缶が置かれ、その中でごうごうと火が燃えている。ドラム缶の脇に立つ男が大きなうちわで、宿の開け放たれた窓から煙を中へ送り込んでいた。
明け方まで飲んだくれていた男たちが部屋から飛び出し、慌てて階段を駆け下りていく。
階段下に待ち受けていたグルドフが、来た者たちを次々と打ち据えていった。二人並んで階段を駆け下りてくるときには、イナハが一人を打ち据えた。
階段の先には役人たちが待ち構えていて、グルドフたちに打たれて目を回した男たちを奥に運び、次々とお縄にかけていく。
と。
十人目を打ち据えたところで、ピタリと物音が止んだ。
「ん?」
グルドフが妙だなと思った時、火花を散らした玉が階段を転がり落ちてきた。
「こりゃいかん、伏せろ!」
グルドフが大声で言って床に伏せた時、火薬玉がボン! と弾けた。
黒い煙の中を這うようにして表へ出たグルドフは、宿の裏へと走った。イナハたちが後に続く。
裏口には剣を手にした役人が二人倒れていた。
グルドフは辺りを見まわしたが、逃げていくような者の姿は見えない。
そこに町長たちが駆けつけてきた。
「この者たちを見てやってください。気を失っているだけのようです」
そう言いながらグルドフは考えていた。手分けをして残りの悪党の行方を捜したいが、少人数では危ない。
そこにカレンが駆けてきた。
「イナハ様! レイ様がここから出てきた者たちを追ってあちらへ」
「行きましょう」
グルドフはカレンの指さした方へと走り出した。
少し通りを走った時、左に曲がった所で男たちが争っているのが目に入った。
グルドフは全力で走った。
争っているといっても、一人が剣を振って攻め立て、もう一人は懸命にその攻撃を防いでいるだけだ。
グルドフは走りながら背中の木刀を一本抜き、悪党面の男に向かって投げた。
木刀はヒュンヒュンと回転しながら飛んでいき、男の肩に当たった。
男は剣を落としてよろめいた。
男の攻撃を受けていたレイが、すかさず落ちた剣を蹴飛ばした。
男は慌てて走り、剣を拾い上げた時、グルドフの木刀が男に振り下ろされた。
男は気を失って倒れた。
「大丈夫ですか?」
グルドフは傷だらけのレイを見た。
腕と足から血を流しているが、深い傷はなさそうだった。
「私なら大丈夫です。男たちは中へ」
レイが大きな建物を指さした。
「あなたはこの者を見ていてください。目を覚ましそうなら、その木刀でもう一度打ち据えてやればよろしい」
そういうと、グルドフは用心しながら建物へと近付いていった。
「レイ様!」
息を切らしたイナハがやって来た。
「何という・・・・」
血を流すレイを見て、イナハが悲痛な表情になった。
「私のことはいいのです。それよりグルドフさんと共に」
「しかし」
「私のことはいいのです」
レイはきっぱりと言った。
「はい」
イナハはグルドフのところへ走った。
「私は正面から行きます。イナハ殿は裏へ回ってください」
「わかりました」
「何か妙な仕掛けをしてあるかもしれません。十分気をつけてください」
「はい」
そう言ってイナハは建物の向こうへ走っていった。
グルドフは用心しながら入口に近付くと、木刀の先で扉をチョンと押して素早く後ろさがった。
大きな音がして、入口の扉が吹っ飛んだ。
「ふう」
爆風に飛ばされたグルドフが起き上がった。幸いどこにも怪我はない。
「大丈夫かね?」
すぐ近くにポポンが来ていた。ポポンは背に何か重そうなタンクを背負っている。
「こいつを忘れとるぞい」
そう言ってポポンはマスクとゴーグルを取り出し、グルドフに渡した。
「ああ、そうでありましたな」
グルドフはポポンから受け取ったアイテムを自分のポケットに入れ、煙の晴れた入口に入っていった。
レイも腰に剣と木刀を携えている。
幼い時に体力作りのためと、短い間だったがイナハから稽古をつけてもらっていたレイだ。しかもミナルテに来てからも、自立して生きてゆくために必要になるかもしれないということで、再びイナハから剣術の教えを受けていた。だからレイも多少は剣を使えないこともなかったが、危ない場面には立たないとイナハと固く約束していた。
ポイの町は一見静かだった。
昼過ぎに町に着いたグルドフたちは役所に行った。マットアン王国では、それぞれの町や村に王様の命によって派遣された役人がいる。ニタリキの村には二人だったが、ポイにはもっと多くの役人が常駐していた。
「あ、グルドフさん」
役所の建物に入った時に、グルドフに気付いて声をかけたのは、ニタリキにいた若い役人のうちの一人だった。
「さっそく来ていただいたようですな」
グルドフが言った。
「先ほどマットアン王とアザム国への使者を出したところです」
若い役人が、上司に報告するかのように言った。
「それでどのようにするおつもりですかな?」
役人に尋ねると、年配の体格のいい男がグルドフのところに手を差し伸べながら歩いてきた。
「お話はお伺いしました、グルドフさん。私はこの町の町長のイガマです。ぜひあなたに、いえ、あなたたちに協力をお願いしたい」
ポイの町長は、グルドフの後ろにいる者たちも見て言った。
「もちろん協力します」
「実は、私どもだけで十五人もの盗人どもを捕らえるのは無理ですし、かといって王様からの助けを待っていたら、何日も経ってしまいます。どうしたら良いかと悩んでいたところであります」
「そうですな。奴らの中には魔法使いがいますから、不意を突くしかありません。私たちの動きを悟られないように行動する必要があります。悪党どもは今、どこにいるかわかりますか?」
町の地図をテーブルの上に広げ、グルドフたちと役人は念密に作戦を立て始めた。
「火事だー!」
誰かが叫んだ。
宿の中に煙が充満していく。
「火事だー!」
もう一度叫び声がした。
宿屋の隣の狭い路地にドラム缶が置かれ、その中でごうごうと火が燃えている。ドラム缶の脇に立つ男が大きなうちわで、宿の開け放たれた窓から煙を中へ送り込んでいた。
明け方まで飲んだくれていた男たちが部屋から飛び出し、慌てて階段を駆け下りていく。
階段下に待ち受けていたグルドフが、来た者たちを次々と打ち据えていった。二人並んで階段を駆け下りてくるときには、イナハが一人を打ち据えた。
階段の先には役人たちが待ち構えていて、グルドフたちに打たれて目を回した男たちを奥に運び、次々とお縄にかけていく。
と。
十人目を打ち据えたところで、ピタリと物音が止んだ。
「ん?」
グルドフが妙だなと思った時、火花を散らした玉が階段を転がり落ちてきた。
「こりゃいかん、伏せろ!」
グルドフが大声で言って床に伏せた時、火薬玉がボン! と弾けた。
黒い煙の中を這うようにして表へ出たグルドフは、宿の裏へと走った。イナハたちが後に続く。
裏口には剣を手にした役人が二人倒れていた。
グルドフは辺りを見まわしたが、逃げていくような者の姿は見えない。
そこに町長たちが駆けつけてきた。
「この者たちを見てやってください。気を失っているだけのようです」
そう言いながらグルドフは考えていた。手分けをして残りの悪党の行方を捜したいが、少人数では危ない。
そこにカレンが駆けてきた。
「イナハ様! レイ様がここから出てきた者たちを追ってあちらへ」
「行きましょう」
グルドフはカレンの指さした方へと走り出した。
少し通りを走った時、左に曲がった所で男たちが争っているのが目に入った。
グルドフは全力で走った。
争っているといっても、一人が剣を振って攻め立て、もう一人は懸命にその攻撃を防いでいるだけだ。
グルドフは走りながら背中の木刀を一本抜き、悪党面の男に向かって投げた。
木刀はヒュンヒュンと回転しながら飛んでいき、男の肩に当たった。
男は剣を落としてよろめいた。
男の攻撃を受けていたレイが、すかさず落ちた剣を蹴飛ばした。
男は慌てて走り、剣を拾い上げた時、グルドフの木刀が男に振り下ろされた。
男は気を失って倒れた。
「大丈夫ですか?」
グルドフは傷だらけのレイを見た。
腕と足から血を流しているが、深い傷はなさそうだった。
「私なら大丈夫です。男たちは中へ」
レイが大きな建物を指さした。
「あなたはこの者を見ていてください。目を覚ましそうなら、その木刀でもう一度打ち据えてやればよろしい」
そういうと、グルドフは用心しながら建物へと近付いていった。
「レイ様!」
息を切らしたイナハがやって来た。
「何という・・・・」
血を流すレイを見て、イナハが悲痛な表情になった。
「私のことはいいのです。それよりグルドフさんと共に」
「しかし」
「私のことはいいのです」
レイはきっぱりと言った。
「はい」
イナハはグルドフのところへ走った。
「私は正面から行きます。イナハ殿は裏へ回ってください」
「わかりました」
「何か妙な仕掛けをしてあるかもしれません。十分気をつけてください」
「はい」
そう言ってイナハは建物の向こうへ走っていった。
グルドフは用心しながら入口に近付くと、木刀の先で扉をチョンと押して素早く後ろさがった。
大きな音がして、入口の扉が吹っ飛んだ。
「ふう」
爆風に飛ばされたグルドフが起き上がった。幸いどこにも怪我はない。
「大丈夫かね?」
すぐ近くにポポンが来ていた。ポポンは背に何か重そうなタンクを背負っている。
「こいつを忘れとるぞい」
そう言ってポポンはマスクとゴーグルを取り出し、グルドフに渡した。
「ああ、そうでありましたな」
グルドフはポポンから受け取ったアイテムを自分のポケットに入れ、煙の晴れた入口に入っていった。
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