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お父さんとお母さん、それにおばあさんまでわざわざ宇宙服を着て、ドームの外まで見送りに出てきてくれました。
タクマは小さくなるお父さんたちの姿に、ちょっぴり不安になりましたが、そんな様子は見せまいと胸を張って大股で歩きます。
鉱山には何度か行ったことがありました。お父さんの作業車に乗せていってもらうと、十五分か二十分くらいで着いてしまいます。あまりドームの外に出る機会のないタクマにとって、お父さんと作業車に乗って出かけることは大きな楽しみのひとつでした。鉱山がもっと遠くにあって、一時間でも二時間でも作業車に揺られて外の景色を見ていたいといつも思ったものです。
高さ三十メートルほどの、小さな丘と言ったほうがいいような鉱山の麓に作業場はあります。二メートルもある大きなロボットが動きまわっているのを見るのは怖かったのですが、今はいないとお父さんが言っていました。いくつものモニター画面を見ながらコンピューターを操作するお父さんの姿は格好よかったのですが、そのコンピューターもすべて片付けられてしまったとのことです。
あの活気に満ちた作業場は今、どうなっているのでしょうか。
平坦な砂地に長い年月をかけて埃を敷き詰めたような地面を、一歩一歩踏みしめて歩いていきます。水面に波紋が広がるように、足を下すたびに砂埃が柔らかく靴の周りに広がります。
パタパタと足を勢いよく振り下して歩いてみました。砂埃が普通に歩く時の何倍もの大きさになって広がります。
そんなことにもすぐに飽きてしまい、タクマは宇宙服の右腕に付いている小型パネルを操作しました。お気に入りの音楽が流れてきます。
音楽のテンポに合わせて歩いているうちに、鉱山はすぐそこに近づいてきました。
なぜだか心臓がどきどきしてきます。今、タクマの頭の中に北極の植物のことはありません。鉱山の探検のことで頭はいっぱいです。暗い作業場の中に、動力を切られた二メートルのロボットが横たわっているかもしれません。
ついに作業場に着きました。建物は鉱山の中に造られているため、外には小さなトンネルのような出入り口があるだけです。
タクマは分厚い扉の横にある小さなモニターの前に立つと、腕をその前にかざしました。
右腕の宇宙服を管理している小型コンピューターと、鉱山を管理しているホストコンピューターが通信したのです。
スッと重い扉が軽々といった感じに開きました。電気はまだ通じていますし、鉱山を管理しているコンピューターも動いています。お父さんがタクマのためにコンピューターや電源を残しておいてくれたのかもしれません。
中に入ると扉は自動的に閉まりました。そこは小さな部屋になっています。
待つほどもなく、入ったほうと反対側にあるドアの上のランプの色が変わり、自動でその扉も開きました。タクマが扉の先に進むと、また背後で扉が閉まりました。
そこは大きな部屋となっています。普通ならそこで宇宙服を脱ぐのですが、酸素の再生装置はもう無いので、酸素濃度をちゃんと測定してから宇宙服を脱ぐようにとお父さんに言われています。
タクマはそのまま作業場を進みました。壁際には昔、たくさんのモニターが並んでいましたが、今はそれを乗せていた机が連なっているのみです。端に小さなコンピューターがあり、電源の光が灯っています。先ほど扉を開けてくれたコンピューターでしょう。
タクマは背にしたリュックサックからカメラを取り出しました。机の上に置き、電源を入れます。そしてカメラから離れ、手を上げます。
カメラがそれに反応して自動で写真を撮ってくれました。宇宙服にヘルメット姿なので、子供用のカメラではどこまで顔が綺麗に写るのかわかりませんが、それでも記念になることは間違いありません。
タクマは小さくなるお父さんたちの姿に、ちょっぴり不安になりましたが、そんな様子は見せまいと胸を張って大股で歩きます。
鉱山には何度か行ったことがありました。お父さんの作業車に乗せていってもらうと、十五分か二十分くらいで着いてしまいます。あまりドームの外に出る機会のないタクマにとって、お父さんと作業車に乗って出かけることは大きな楽しみのひとつでした。鉱山がもっと遠くにあって、一時間でも二時間でも作業車に揺られて外の景色を見ていたいといつも思ったものです。
高さ三十メートルほどの、小さな丘と言ったほうがいいような鉱山の麓に作業場はあります。二メートルもある大きなロボットが動きまわっているのを見るのは怖かったのですが、今はいないとお父さんが言っていました。いくつものモニター画面を見ながらコンピューターを操作するお父さんの姿は格好よかったのですが、そのコンピューターもすべて片付けられてしまったとのことです。
あの活気に満ちた作業場は今、どうなっているのでしょうか。
平坦な砂地に長い年月をかけて埃を敷き詰めたような地面を、一歩一歩踏みしめて歩いていきます。水面に波紋が広がるように、足を下すたびに砂埃が柔らかく靴の周りに広がります。
パタパタと足を勢いよく振り下して歩いてみました。砂埃が普通に歩く時の何倍もの大きさになって広がります。
そんなことにもすぐに飽きてしまい、タクマは宇宙服の右腕に付いている小型パネルを操作しました。お気に入りの音楽が流れてきます。
音楽のテンポに合わせて歩いているうちに、鉱山はすぐそこに近づいてきました。
なぜだか心臓がどきどきしてきます。今、タクマの頭の中に北極の植物のことはありません。鉱山の探検のことで頭はいっぱいです。暗い作業場の中に、動力を切られた二メートルのロボットが横たわっているかもしれません。
ついに作業場に着きました。建物は鉱山の中に造られているため、外には小さなトンネルのような出入り口があるだけです。
タクマは分厚い扉の横にある小さなモニターの前に立つと、腕をその前にかざしました。
右腕の宇宙服を管理している小型コンピューターと、鉱山を管理しているホストコンピューターが通信したのです。
スッと重い扉が軽々といった感じに開きました。電気はまだ通じていますし、鉱山を管理しているコンピューターも動いています。お父さんがタクマのためにコンピューターや電源を残しておいてくれたのかもしれません。
中に入ると扉は自動的に閉まりました。そこは小さな部屋になっています。
待つほどもなく、入ったほうと反対側にあるドアの上のランプの色が変わり、自動でその扉も開きました。タクマが扉の先に進むと、また背後で扉が閉まりました。
そこは大きな部屋となっています。普通ならそこで宇宙服を脱ぐのですが、酸素の再生装置はもう無いので、酸素濃度をちゃんと測定してから宇宙服を脱ぐようにとお父さんに言われています。
タクマはそのまま作業場を進みました。壁際には昔、たくさんのモニターが並んでいましたが、今はそれを乗せていた机が連なっているのみです。端に小さなコンピューターがあり、電源の光が灯っています。先ほど扉を開けてくれたコンピューターでしょう。
タクマは背にしたリュックサックからカメラを取り出しました。机の上に置き、電源を入れます。そしてカメラから離れ、手を上げます。
カメラがそれに反応して自動で写真を撮ってくれました。宇宙服にヘルメット姿なので、子供用のカメラではどこまで顔が綺麗に写るのかわかりませんが、それでも記念になることは間違いありません。
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