初めて見る景色

原口源太郎

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 今では無人となった直径二十メートルほどの半円形のドームが、鈍く光を跳ね返しています。タクマの家の周りにある十個の個人用ドームは眠りにつこうとしているようです。太陽が地平線に沈むと、この星ではすぐに濃い闇の夜が訪れます。
 タクマはブラインドガラスのスイッチを入れました。大きなガラス窓は巨大なスクリーンのように色を付けて壁と同色になります。
 夕食前にもう一度、持ち物を点検してみることにしました。実はすでに五回も点検をしているのですから、これで六回目です。タクマはリュックサックの中の物を一つ一つ取り出して絨毯の上に並べていきました。
 カメラ(子供用のおもちゃですが、五百倍フルオート自動光量調節付き連続三百枚撮り、瞬間立体プリントアウト、五千メートルまでの距離測定機能、五百メートルまでの通信機能などが付いた立派なものです)、GPS付き無線機(キイダにこれだけはきちんとしておけと言われ、バッテリーの充電も抜かりなしです)、おやつ(詰め替え用。宇宙服のヘルメットにもすでにセットしてあります)、三次元投影型携帯ゲーム機(使うことはないとは思いますが、タクマの宝物で、いつも持ち歩いているのでリュックにいれておきます。もし余裕があれば、広大な空一杯をスクリーン代わりにして遊べるかも)、地図とコンパス(これも使うことはないと思いますが、冒険なのですから)。これに明日、お母さんが作ってくれたお弁当が加われば完璧です。
 すべてきちんと揃っているのを確認すると、タクマは慎重にリュックサックの中に詰めていきます。
 ちょうど詰め終わるころ、お母さんから夕食の合図がありました。

 いつもより早い時間に朝の光を通すようにブラインドガラスのタイマーをセットしてありましたが、それより先に目を覚ましました。薄暗い部屋の中で時間が来るのを待ちます。
 やがてピピッと小さな音がして、窓から色が失われ、明るい光が部屋の中に入ってきました。
 タクマは毛布を跳ね除けてベッドを下ります。お弁当はできあがり、朝食の用意も整っていることでしょう。
「おはよう!」
 ダイニングに行くと、タクマは元気よくお母さん言いました。
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