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キイダは無線連絡がなかなか来なくてとても心配していたようです。
タクマはあまり多くは語らずに自分は大丈夫だ、これから帰るとだけ告げて無線を切りました。話したいことは山ほどあるのですが、それは家に帰ってからのことにします。
何度もロボットにお礼を言い、タクマはお父さんやお母さんの待つドームへと出発しました。
どんな時でも帰り道というのは早いものです。音楽を聴きながら鼻歌交じりで歩いていると、鉱山はたちまち目の前に来ていました。
さっき痛い目に合っていますから、今度は鉱山に登る気にはなりません。ぐるりと遠回りをしていくつもりです。
それまで丘を目指して歩いてきたものを、向きを変えて歩きます。その時、何かおかしいぞという思いが頭をよぎりました。
丘をよく見てみると、さっき滑り落ちたはずの急斜面がありません。なだらかな砂地が丘の上へと続いてるだけです。
タクマの心臓はドキドキと大きく鼓動しだしました。何か勘違いをしているのではないかと、丘の上にあるものを探してみました。
何もありません。さっきタクマが登った見晴らし台がないのです。
やっと道を間違えたことを理解しました。ロボットのいる建物を出てから間違った丘を目印にして歩いてきてしまったのです。
間抜けな自分に腹が立ちました。丘の上に見晴らし台が立っているかいないかくらい、よく見ればわかるはずなのに。
今、そんなことで悔やんでいても仕方がありません。ドームへ帰る正しい道を探し出すことが大事です。まずどうすればいいだろうかと考えました。
目の前の丘に登ってみようと思いました。丘の上に登ればドームか鉱山が見えるかもしれません。たとえ見えなくても、見晴らしのいいところで地図を広げて、磁石を見ながら位置と方向をを確認すればいいと思いました。
早速丘の上を目指して歩き始めました。体は疲れています。こんなにたくさん歩いたのは今までになかったことです。でも、急がなければなりません。帰りが遅くなればなるほどお父さんたちは心配するでしょうから。
その丘は鉱山の丘よりも小さくてなだらかでしたが、頂上に着いた時、タクマは息を切らしていました。走るように急いで登ってきたからです。そこに座り込みたいのを我慢して辺りをぐるりと見渡しました。
見えます。
さっき行ったロボットのいる建物の建つ丘。ぐるっと体を回していくと、鉱山がありました。さらにその先にいくつかのドームが一塊になっているのが小さく見えます。
タクマはうれしくなって駆け出そうとしました。
その時、視界の隅に何かきらりと光るものが見えたのです。
タクマたちの暮らすドームとは全然別の方向です。
タクマは目を凝らしてみましたが、なんだかわかりません。北極とは方向が違いますし、南極がそこからはどうやっても見えないことくらいは知っています。
リュックサックからカメラを取り出して覗いてみました。
一瞬、光の渦がタクマの目に飛び込んできました。慌てて目を閉じるまでもなく、最大望遠になったカメラのレンズが自動的に光の量を調節してくれます。
鋭く光を跳ね返しているのは、巨大なドームでした。そう、タクマたちが明後日移り住むことになっているダーイ6のドームの群れです。ダーイ6はタクマたちのドームの何千倍もの大きさがあり、街をすっぽりと包み込んでいる巨大ドームなのです。その巨大ドームが7つあり、それを取り巻くようにしてたくさんの小型ドームがあります。ダーイ6の人口は13万人です。この星ではとても大きな都市のうちの一つになります。
車で3、4時間もかかるダーイ6がこの目で見られるとは思いもしませんでした。
これからはそこで多くの人たちと一緒に暮らしていくのです。いつもダーイ6に連れていってもらう時はわくわくしたものでした。モニターの画面でしか会えない友達とも、これからは一緒に話したり遊んだりできます。まずはこの冒険のことを写真を見せながらみんなに話さなければなりません。その時のことを思うと、明後日がすぐに来てほしいと思いました。早くダーイ6に行きたい。
そんなことを考えながらダーイ6の写真を何枚も撮りました。そしてカメラをしまうと、足早に丘を降ります。急いではいますが、慎重に、決して転ばないように。
タクマはあまり多くは語らずに自分は大丈夫だ、これから帰るとだけ告げて無線を切りました。話したいことは山ほどあるのですが、それは家に帰ってからのことにします。
何度もロボットにお礼を言い、タクマはお父さんやお母さんの待つドームへと出発しました。
どんな時でも帰り道というのは早いものです。音楽を聴きながら鼻歌交じりで歩いていると、鉱山はたちまち目の前に来ていました。
さっき痛い目に合っていますから、今度は鉱山に登る気にはなりません。ぐるりと遠回りをしていくつもりです。
それまで丘を目指して歩いてきたものを、向きを変えて歩きます。その時、何かおかしいぞという思いが頭をよぎりました。
丘をよく見てみると、さっき滑り落ちたはずの急斜面がありません。なだらかな砂地が丘の上へと続いてるだけです。
タクマの心臓はドキドキと大きく鼓動しだしました。何か勘違いをしているのではないかと、丘の上にあるものを探してみました。
何もありません。さっきタクマが登った見晴らし台がないのです。
やっと道を間違えたことを理解しました。ロボットのいる建物を出てから間違った丘を目印にして歩いてきてしまったのです。
間抜けな自分に腹が立ちました。丘の上に見晴らし台が立っているかいないかくらい、よく見ればわかるはずなのに。
今、そんなことで悔やんでいても仕方がありません。ドームへ帰る正しい道を探し出すことが大事です。まずどうすればいいだろうかと考えました。
目の前の丘に登ってみようと思いました。丘の上に登ればドームか鉱山が見えるかもしれません。たとえ見えなくても、見晴らしのいいところで地図を広げて、磁石を見ながら位置と方向をを確認すればいいと思いました。
早速丘の上を目指して歩き始めました。体は疲れています。こんなにたくさん歩いたのは今までになかったことです。でも、急がなければなりません。帰りが遅くなればなるほどお父さんたちは心配するでしょうから。
その丘は鉱山の丘よりも小さくてなだらかでしたが、頂上に着いた時、タクマは息を切らしていました。走るように急いで登ってきたからです。そこに座り込みたいのを我慢して辺りをぐるりと見渡しました。
見えます。
さっき行ったロボットのいる建物の建つ丘。ぐるっと体を回していくと、鉱山がありました。さらにその先にいくつかのドームが一塊になっているのが小さく見えます。
タクマはうれしくなって駆け出そうとしました。
その時、視界の隅に何かきらりと光るものが見えたのです。
タクマたちの暮らすドームとは全然別の方向です。
タクマは目を凝らしてみましたが、なんだかわかりません。北極とは方向が違いますし、南極がそこからはどうやっても見えないことくらいは知っています。
リュックサックからカメラを取り出して覗いてみました。
一瞬、光の渦がタクマの目に飛び込んできました。慌てて目を閉じるまでもなく、最大望遠になったカメラのレンズが自動的に光の量を調節してくれます。
鋭く光を跳ね返しているのは、巨大なドームでした。そう、タクマたちが明後日移り住むことになっているダーイ6のドームの群れです。ダーイ6はタクマたちのドームの何千倍もの大きさがあり、街をすっぽりと包み込んでいる巨大ドームなのです。その巨大ドームが7つあり、それを取り巻くようにしてたくさんの小型ドームがあります。ダーイ6の人口は13万人です。この星ではとても大きな都市のうちの一つになります。
車で3、4時間もかかるダーイ6がこの目で見られるとは思いもしませんでした。
これからはそこで多くの人たちと一緒に暮らしていくのです。いつもダーイ6に連れていってもらう時はわくわくしたものでした。モニターの画面でしか会えない友達とも、これからは一緒に話したり遊んだりできます。まずはこの冒険のことを写真を見せながらみんなに話さなければなりません。その時のことを思うと、明後日がすぐに来てほしいと思いました。早くダーイ6に行きたい。
そんなことを考えながらダーイ6の写真を何枚も撮りました。そしてカメラをしまうと、足早に丘を降ります。急いではいますが、慎重に、決して転ばないように。
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