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美菜は部屋から出るとスマホで電話をかけた。
「ごめんなさい、だいぶ熱が出ちゃって」
「ええ、それほど心配するほどのことでもないと思うんだけど。本当にごめんなさい」
美菜は電話を切った。
「あーあ」
残念そうにため息をつく。
美菜の部屋では女装した壮大がまじまじと鏡に映る自分の顔を眺めている。
「なんでやめちゃうんだよ」
壮大が部屋に戻ってきた美菜に言った。
「なんでって、あんた連れてったら、坂上さんはあんたに恋しちゃうよ」
「やめてくれよ。俺行かないから、一人で行けば?」
「だめよ、人数を合わせなきゃ。今回は中止」
「そうなの」
「そうだ、今日飲みに行こう。あんたみたいな美人を見て男がどんな反応をするか見てみたい」
「バカ言うな。嫌だよ」
「さっきの条件はそのままでいいから。・・・・私、失恋したかもしれないのよ」
「勝手に失恋してろ」
「うえーん」
「おい、いい大人が泣くか?」
「うえーん、うえーん」
「わかったよ、行けばいいんだろ」
「よし」
「ふざけんな、ウソ泣きかよ」
「男に二言はなし」
「は?」
「私も着替えるから、部屋から出てって」
「おいおい」
壮大は無理矢理部屋から追い出された。
夜の街を歩く壮大と美菜。もちろん壮大は化粧をして女装した格好でいる。
美菜も美人と呼べる範疇にいると思われるが、道行く人が振り返って見るのは壮大ばかり。
「どう? 思った通り。気分いいでしょ?」
「よくないよ。知り合いに会ったりしたら大変なことだ」
「ちょっと、しゃべり方も注意しなさいよ。あんたは女なんだから」
「女じゃない」
「すぐに女の良さがわかるよ」
「わかりたくないね」
「いじけた弟」
「いじけた姉貴。付き合ってやってるんだから感謝しろ」
そのまま二人、無言で歩いていく。
居酒屋に入った二人はカウンターに座り、ビールを注文した。
「あんたたちのバンド、凄くよかったじゃない。あんなにうまいとは思わなかった。歌う人以外はね」
一杯目のジョッキを飲み干して美菜が言った。
「俺はボーカルがいないって、駆り出されただけだから。一人、プロのミュージシャンになりたいってやるがいるからね。結構、本格的だっただろ?」
「ミュージシャンになりたい人って、ギターを弾いてた人?」
「そう。背の高い方。小さいころからピアノを習ってたんだって」
「それが何で柔道部にいるの?」
「さあ。多分、子供の時にひ弱だってバカにされたんじゃない?」
二人の後ろを歩いていた人が壮大を見てぎょっとする。さらに壮大の声を聞いて持っていたかばんを落とした。
二人はそんな他人のことに気がつかずに話を続けている。
「曲はオリジナルって言ってたから、みんなその人が作ったんでしょ? 才能があるんじゃない?」
「俺も一曲書いたよ。詞と曲。一番派手なやつ。アレンジはうんと派手にしてくれって頼んだから」
「うそ。あんたが作詞作曲?」
「俺も才能があるんだ」
「ないない」
美菜は即座に否定した。
「お姉さんたち、一緒に飲まない?」
テーブルに座っていた男のグループの一人が美菜たちに声をかけた。
美菜は男を見て、壮大を見る。
壮大はぶるぶると顔を横に振る。
「あんた、かつらが落ちるよ」
美菜が小声で注意した。
「いいじゃん、少しくらいなら」
酔っ払った男は楽しそうに話す。
「嫌だよ」
どすの利いた声で言って、壮大は男を睨む。
男は驚いた表情でしゅるるるっと席に戻っていった。
「もう出よう。居づらくなった」
「そうね。お勘定してもらう」
そう言うと美菜は店員に声をかけた。
「ごめんなさい、だいぶ熱が出ちゃって」
「ええ、それほど心配するほどのことでもないと思うんだけど。本当にごめんなさい」
美菜は電話を切った。
「あーあ」
残念そうにため息をつく。
美菜の部屋では女装した壮大がまじまじと鏡に映る自分の顔を眺めている。
「なんでやめちゃうんだよ」
壮大が部屋に戻ってきた美菜に言った。
「なんでって、あんた連れてったら、坂上さんはあんたに恋しちゃうよ」
「やめてくれよ。俺行かないから、一人で行けば?」
「だめよ、人数を合わせなきゃ。今回は中止」
「そうなの」
「そうだ、今日飲みに行こう。あんたみたいな美人を見て男がどんな反応をするか見てみたい」
「バカ言うな。嫌だよ」
「さっきの条件はそのままでいいから。・・・・私、失恋したかもしれないのよ」
「勝手に失恋してろ」
「うえーん」
「おい、いい大人が泣くか?」
「うえーん、うえーん」
「わかったよ、行けばいいんだろ」
「よし」
「ふざけんな、ウソ泣きかよ」
「男に二言はなし」
「は?」
「私も着替えるから、部屋から出てって」
「おいおい」
壮大は無理矢理部屋から追い出された。
夜の街を歩く壮大と美菜。もちろん壮大は化粧をして女装した格好でいる。
美菜も美人と呼べる範疇にいると思われるが、道行く人が振り返って見るのは壮大ばかり。
「どう? 思った通り。気分いいでしょ?」
「よくないよ。知り合いに会ったりしたら大変なことだ」
「ちょっと、しゃべり方も注意しなさいよ。あんたは女なんだから」
「女じゃない」
「すぐに女の良さがわかるよ」
「わかりたくないね」
「いじけた弟」
「いじけた姉貴。付き合ってやってるんだから感謝しろ」
そのまま二人、無言で歩いていく。
居酒屋に入った二人はカウンターに座り、ビールを注文した。
「あんたたちのバンド、凄くよかったじゃない。あんなにうまいとは思わなかった。歌う人以外はね」
一杯目のジョッキを飲み干して美菜が言った。
「俺はボーカルがいないって、駆り出されただけだから。一人、プロのミュージシャンになりたいってやるがいるからね。結構、本格的だっただろ?」
「ミュージシャンになりたい人って、ギターを弾いてた人?」
「そう。背の高い方。小さいころからピアノを習ってたんだって」
「それが何で柔道部にいるの?」
「さあ。多分、子供の時にひ弱だってバカにされたんじゃない?」
二人の後ろを歩いていた人が壮大を見てぎょっとする。さらに壮大の声を聞いて持っていたかばんを落とした。
二人はそんな他人のことに気がつかずに話を続けている。
「曲はオリジナルって言ってたから、みんなその人が作ったんでしょ? 才能があるんじゃない?」
「俺も一曲書いたよ。詞と曲。一番派手なやつ。アレンジはうんと派手にしてくれって頼んだから」
「うそ。あんたが作詞作曲?」
「俺も才能があるんだ」
「ないない」
美菜は即座に否定した。
「お姉さんたち、一緒に飲まない?」
テーブルに座っていた男のグループの一人が美菜たちに声をかけた。
美菜は男を見て、壮大を見る。
壮大はぶるぶると顔を横に振る。
「あんた、かつらが落ちるよ」
美菜が小声で注意した。
「いいじゃん、少しくらいなら」
酔っ払った男は楽しそうに話す。
「嫌だよ」
どすの利いた声で言って、壮大は男を睨む。
男は驚いた表情でしゅるるるっと席に戻っていった。
「もう出よう。居づらくなった」
「そうね。お勘定してもらう」
そう言うと美菜は店員に声をかけた。
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