Love letter

原口源太郎

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 翌日の昼休み。
 薄暗く人気のない体育館の裏で『青山見守り会』、別名『青山澄香ファンクラブ』のメンバー四人が輪になって座り込んでいる。
「それじゃ、本並先輩は振られたんだな?」
 大崎が興奮したようにメガネの位置を直しながら尋ねた。
「会話が聞こえたわけじゃないけど、見てた感じじゃ、振られたと判断してほぼ間違いなさそうだ」
 大崎の質問に答えるのは昨日、公園で二人の様子を見ていた河原だ。
「よし!」
 大崎は大げさにガッツポーズをした。
「何が『よし!』だ。あんな大騒ぎになるようなことしておいて。爆弾騒ぎが俺達のしたことだって知れたら」
 前日に青山の家の近くで待ちぼうけを食った平が言う。
「おい! よせ! 誰かに聞かれるだろ」
 大崎は平らに飛びかかり、口をふさぐ。
「誰も聞いてないよ」
 平は大崎の手を払い除けて言った。

 学校に爆弾を仕掛けたと電話をかけたのは森下だ。彼はパソコンやドローンなど簡単に自作してしまう機械オタクで、電話も装置を使って指定時間に自動でかけた。
 爆弾のことはその前日に四人で決めたことだった。
 なぜそんなことをしたのかというと、この高校のナンバー1のイケメンでモテ男の本並が青山に告白するという情報を掴んだからだった。『青山澄香ファンクラブ』の蜘蛛の巣のように張り巡らされた情報網により、告白のXデーをその日と見込んだメンバーたちは、告白を阻止するために爆弾騒ぎをでっち上げたのだった。
 だが、妨害工作にも関わらず本並の告白は行われた。しかし予想に反して本並は青山に振られた。作戦は失敗だったが、結果は予想以上だった。

「次の怪しい動きは? なにかキャッチしたか?」
 大崎がメンバーの顔を見回し、最後に森下を見て言った。
 『青山澄香ファンクラブ』の情報網は主に森下によって構築されていて、当然ながらその情報も森下のところに集まるからだ。
「今のところはないね」
 森下が言った。
「次に警戒が必要なのは三組の鈴木あたりだが」
 鈴木はイケメンで野球部のエース、爽やかな性格で女子生徒たちの人気度は本並に次ぐ存在と言われている。
「手は打ってある」
 森下が不気味な笑みを浮かべて言った。
 盗聴器まがいのものや、小型監視カメラもどきのものを幾つも駆使して情報網を築いていることは、ファンクラブメンバーなら皆知っている。
「そのうち捕まるぞ」
 平がボソリと言った。
「バカ言え。森下のおかげで我々は何度も青山澄香の危機を救ってきたんだぞ。下手なこと言うな」
 大崎が血相を変えて言う。
「はいはい」
 平は諦めたように返事をした。
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