Love letter

原口源太郎

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 日は高く登り、教室では数学の授業が行われていた。
 先生が説明しながら黒板に数式を書いている。
 教室の中央、最後方の席に大雄が座っていて、少し間を空けた隣の席に青山が座っていた。
 大雄は先生の話を全く聞かずに紙切れに文字を書いている。
「青山、青山」
 大雄が小声で隣の青山に呼びかけた。
 黒板を見ていた青山が大雄を見る。
「これ読め」
 書いたばかりの紙を青山に渡そうとする。
「野村!」
 先生に名前を呼ばれ、、大雄は慌てて手を引っ込めた。
「教科書の73ページ、問2の答えを述べよ」
「はい」
 大雄は立ち上がり、慌てて教科書のページをめくる。
「えーと、えーと」
 焦りながら問題文を読む。
「今説明したばかりだぞ」
 大雄は慌てていたので教科書を床に落としてしまう。
「すみません、聞いていませんでした」
 落ちた教科書を拾おうともせずに言った。
「ダメだろう。隣の青山のことでも考えていたか」
「いいい、いいえ、そういうわけじゃ」
 大雄はうろたえて言う。
 その時、授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
「ちゃんと教科書を読んで理解しておくように」
 そう言って数学の先生は教室を出ていった。
 大雄は助かったという表情で机に座る。
「はい」
 青山が落ちた教科書を大雄に渡した。
「あ、ありがとう」
 青山はそのまま向こうに行こうとする。
「ちょっと待って。これ」
 大雄は慌てて立ち上がり、さきほど渡そうとした紙をポケットから出して青山に差し出した。
 青山は紙を受け取り、文字を読む。
 紙には『部活のあと昇降口の横で待っててくれ』と書いてある。
「なにこれ?」
「来てくれ」
「わざわざ紙に書かなくても口で言えばいいじゃない」
 そう言って大雄をにらむように見た青山は、すぐに踵を返して教室の外へ行ってしまう。
 かー、失敗したか、といった表情で大雄は椅子にヘナヘナと座り込んだ。
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