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ふと我に返ってリュックに飛びつき、中から教科書を取り出す。
パラパラとめくると、間に手紙が挟まっていた。
「あれ?」
それは先程まで追いかけていた自分が書いた手紙ではなかった。その手紙なら川に落ちて流れていったから、こんなとことにあるわけがない。
手紙の表には『野村くんへ』と書いてある。
大雄は机からハサミを出してきて、慎重に封筒の一辺を切った。
『野村くん、突然このような手紙を渡されて驚いていることと思います。私は今、すごくドキドキしています。手紙を書いていて、なんでこんなことをしているのだろうと、不思議な気持ちになります。
先日、ある人から好きだと告げられました。以前にも同じようなことを言われたことがあります。噂になってしまったから、野村くんも知っているかな。すべてその場でお断りしてきました。そうしないと失礼だと思ったからです。そしてそのたびに、私はある人が好きなんだと強く思うようになっていくのに気が付きました。
たまに話をするときはドキドキしました。今もそうです。ドキドキできるかもしれない数学の授業がいつも楽しみでした。そして私の気持ちを伝えたい、もっとドキドキしたい。そんな思いからこの手紙を書くことにしました。
野村くんが好きです。野村くんは誰を好きなんだろう? いつも考えています。私に対する気持ちだけでいいので、お返事をいただけたらと思います。もし他に好きな人がいたり、付き合っている人がいるのなら、そうはっきり言ってください。へこたれるかもしれませんが、あやふやにさるよりいいです。その時は今までのようにお友達でいてください。
明日会えるのを楽しみにしています。
青山澄香』
大雄は手紙を二度読み返したあと、もとの通りにそっとたたみ、封筒へ戻した。そして天井を見上げ、大きくガッツポーズを作った。
ランドセルを背負った小学生たちが河原で遊んでいる。
「あんまり水の近くに行っちゃあいけないんだよ」
一人が言った。
「わかってるよ。ちょっとだけ。あそこに何かある」
別の一人が水の流れの近くにあった白いものを持ってくる。
「なにそれ?」
「手紙?」
そう言って手紙を拾ってきた小学生が封を破く。
「なになに」
中の便箋を開き、読み出す。
「あなたのことが好きです。僕の変人になってください」
「ヘンジン?」
「変人って書いてある」
「こいつアホだな」
「アホだアホ」
手紙を読んだ小学生は、封筒と便箋を一緒にして丸める。
「えい!」
川へと投げる。
丸められた手紙は水に浮き、流れていった。
終わり
パラパラとめくると、間に手紙が挟まっていた。
「あれ?」
それは先程まで追いかけていた自分が書いた手紙ではなかった。その手紙なら川に落ちて流れていったから、こんなとことにあるわけがない。
手紙の表には『野村くんへ』と書いてある。
大雄は机からハサミを出してきて、慎重に封筒の一辺を切った。
『野村くん、突然このような手紙を渡されて驚いていることと思います。私は今、すごくドキドキしています。手紙を書いていて、なんでこんなことをしているのだろうと、不思議な気持ちになります。
先日、ある人から好きだと告げられました。以前にも同じようなことを言われたことがあります。噂になってしまったから、野村くんも知っているかな。すべてその場でお断りしてきました。そうしないと失礼だと思ったからです。そしてそのたびに、私はある人が好きなんだと強く思うようになっていくのに気が付きました。
たまに話をするときはドキドキしました。今もそうです。ドキドキできるかもしれない数学の授業がいつも楽しみでした。そして私の気持ちを伝えたい、もっとドキドキしたい。そんな思いからこの手紙を書くことにしました。
野村くんが好きです。野村くんは誰を好きなんだろう? いつも考えています。私に対する気持ちだけでいいので、お返事をいただけたらと思います。もし他に好きな人がいたり、付き合っている人がいるのなら、そうはっきり言ってください。へこたれるかもしれませんが、あやふやにさるよりいいです。その時は今までのようにお友達でいてください。
明日会えるのを楽しみにしています。
青山澄香』
大雄は手紙を二度読み返したあと、もとの通りにそっとたたみ、封筒へ戻した。そして天井を見上げ、大きくガッツポーズを作った。
ランドセルを背負った小学生たちが河原で遊んでいる。
「あんまり水の近くに行っちゃあいけないんだよ」
一人が言った。
「わかってるよ。ちょっとだけ。あそこに何かある」
別の一人が水の流れの近くにあった白いものを持ってくる。
「なにそれ?」
「手紙?」
そう言って手紙を拾ってきた小学生が封を破く。
「なになに」
中の便箋を開き、読み出す。
「あなたのことが好きです。僕の変人になってください」
「ヘンジン?」
「変人って書いてある」
「こいつアホだな」
「アホだアホ」
手紙を読んだ小学生は、封筒と便箋を一緒にして丸める。
「えい!」
川へと投げる。
丸められた手紙は水に浮き、流れていった。
終わり
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