少年少女たちの日々

原口源太郎

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 翌日もからりと晴れて南国らしく青い空が広がり、真っ白い雲が幾つも浮かんでいる。
 俊輔と翔司、修が果物を抱えて皆のいるところに戻ってきた。
「ちょっと待った。見ろよ」
 先頭を歩いていた俊輔が後の二人を制した。
 皆が寝ていた近くの浜辺に軍用のジープが止まっている。
 三人は果物を抱えたまま身を低くして近くまで走った。
 ジープの近くに軍人が立っていろ。俊輔たちの国の軍服とは違う。
「ここでちょっと待っていて。様子を見てくる」
 俊輔はジープの近くに立つ軍人に見つからないようにして皆がいる場所に近づく。
 三人の少女と老人夫婦、親子の他に銃を構える二人の軍人がいた。
「だからさっきから言っているじゃない。私たちはボートで流されてきただけだって」
 真希が興奮した様子で話している。
「そうだ。わしらの乗った船は敵国に攻撃されて沈没した。乗り込んだボートは嵐に遭ってここまで流されてきたのだ」
 老人が真希を援護するように言う。
「よりによって最新式戦車の開発場所に?」
「私たちがスパイか何かだっていうの?」
「そうだ」
「嘘でしょう? スパイならこんな姿でこんな所にいるわけがないじゃない」
「そこが付け目だ。見つかった時の。第一、女子供と年寄りだけで、どうやってボートをこんな所まで運んだのだ?」
「私達だけじゃないから」
「他にも仲間がいるのか? ますます怪しい。こんな戦時中に」
「だから言っているでしょ、大陸に行く途中に襲われて乗っていた大きな船は沈んじゃって、気が付いたらここまで流されてきていたの」
「取りあえず基地まで連行する。大人しく言うことを聞くんだ」
「だから違うって言っているでしょ!」
「うるさい!」
 軍人が真希の頬を叩いた。
 俊輔は飛び出したいのをぐっとこらえて、翔司たちのところに戻った。
「マズいぞ、スパイと間違われた」
「何とかしなきゃ」
 翔司が言う。
「あのジープを壊しちまおうぜ」
 修が続いて言う。
「そんなことしたってしょうがないだろ」
 その時、ガサガサと音がした。
 少年たちがハッとして振り返る。
 山田だった。
「どうした、こんな所で」
 俊輔はジープを指差した。
「見つかったのか」
 その時、ダーンと銃声が響いた。キャーという悲鳴。
 少年たちが走りだそうとした。
「待て! 銃声は一発だけだ」
 見ていると二人の軍人とみゆきと梨花、親子に続き、腕から血を流す老人とそれを助けるようにして老女と真希が現れた。
「あいつら」
 修がそれを怒りの目で見ながら言う。
「どうしよう」
 翔司は心配そうに言った。
「捕まってよかったんじゃないか。捕虜になっていれば食い物と寝るところは保証される」
 山田が冷静に言う。
 ジープのところで話をしていた男が俊輔たちを見つけて声を出した。
「見つかった」
 敵の軍人たちが銃で撃ってきた。弾が俊輔の近くをキュン、キュンと飛んでいき、近くの木に当たって音を立てる。
「やばい、逃げろ!」
 四人は一目散に逃げた。そして木の陰に身を隠す。山田は肩を押さえていた。そこから血がツーッと流れ落ちる。
「いきなり撃ってくるなんてひどい奴らだ」
「戦争なんだから仕方がない」
 山田が血に染まる肩をタオルで縛りながら言う。
「それじゃ、彼女たち、殺されちゃう」
 修が言った。
「そう簡単に捕虜は殺さんよ」
「それでも」
「ちょっと冷静に考えよう。時間はあまりないが」
「これからのこと?」
 俊輔が軍人に尋ねる。
「そうだ。このままいたって、いずれはあいつらに捕まってしまうだろう」
「どうします?」
「うむ」
 山田は考え込んだ。
「やっぱり捕まった人たちを助けよう」
 修が言う。
「どうやって?」
 軍人が尋ねる。
「それは・・・・これから考えるとして」
「じゃ、無事助け出せたとして、それからどうするんだ? またすぐに捕まるだけだ」
「逃げるんです、ここから」
「どうやって? また海に出るつもりか?」
「それは・・・・」
 修は言いよどんだ。
 その時、山田は何か閃いたようだった。
「よし、やれるだけやってみるか。ただし命の保証はできない。捕虜になれば命だけは保証されるだろう。それでもやるか?」
 翔司が頷く。
「あとの二人は?」
 修も頷く。
「君は?」
 山田が俊輔を見る。
「俺はやってもいいです。けど、彼女たちの命だって必ず保証できるとは言えないんでしょ?」
「そうだ」
「そうなると」
「あいつら、丸腰の老人を撃ったんだぞ」
 修が言う。
 俊輔は先ほどのテントでの光景を思い出した。真希と話をして相手の言い分を聞こうとしない軍人。真希をいきなり殴りつけた軍人。
「わかった」
「よし、そうと決まったら早速やろう」
「え? その傷で?」
「こんなのはいい。早くしないと助け出すのが困難になる」
「で、どうやって?」
「うーん。・・・・戦車だ。あれを奪えば」
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