おとどけもの

原口源太郎

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 高校に入学すると僕は軽音楽部に入った。
 そこでバンド活動したい奴が集まって話し合いが始まった。バンドを組もうとなると、なぜかギターを弾きたい奴らばかりになって、僕もその中の一人だったけれど、ろくにギターに触れたこともない僕は一番にギタリストの候補から外された。八年もピアノを習っていたのにそれに見合うだけの技量がないので、キーボードを演奏できることは黙っていた。
 ベースやドラムと、それなりにメンバーが決まっていったのに、ボーカルだけが決まらなかった。みんな楽器を演奏したい奴らばかりで、歌を歌いたいという奴がいなかった。結局楽器演奏からあぶれた者の中からボーカルを決めることになり、何曲か歌を歌わされた。歌にはまるっきり自信がなかったし、バンドの中で色々な楽器を演奏している自分は想像してきたけれど、歌っている自分は考えたこともなかった。
 歌は下手だったけれど、ピアノを長年やってきたせいか、どの曲を歌っても音程はきちんと取れていたことで、僕がボーカル担当と決まった。
 もちろん僕は猛烈に反対した。ボーカルといえば、バンドの顔ともいうべき存在だ。僕は歌が苦手なだけでなくビジュアル的にも適していなかったからボーカルは無理だと言った。だけど他に出来る奴がいないとか、ほんの少しの間、正式のボーカルが決まるまでの間だけでいいからという説得に押し切られて、取りあえずボーカルとしてバンド活動をすることになった。
 そう決まって考えてみると、ギターをかっこよく弾きながら歌うなんてのもいいかななんて思えてきた。僕は歌の練習を始めると同時に、ギターの弾き方もギター担当の奴や先輩たちから教わった。
 そして高校生活の間、僕はボーカリストとして活躍した。みんなそれほど高い技術を持っていたわけじゃなかったし、演奏する曲は流行りのコピーばかりだったけれど、最高といえる三年間だった。

 大学に進学する頃には、僕はプロのミュージシャンになりたいという夢を持っていた。
 ギターは元々ピアノをやっていて手先が器用だったせいか、すぐにバンドメンバーで弾き方を教えてくれていたギター担当よりうまくなった。
 今度こそ、新たにバンドを組み、ギターを弾きまくるぞという希望に満ちた思いで大学に入学した。
 バンド仲間はすぐに見つかった。そのつもりで学生数の多い学校を選んだ。だけど、そこでも一番人気はギターだった。僕は高校の頃ボーカル担当だったという理由だけで、またボーカルになった。面白くないので他のバンドに声をかけてみたり、見に行ったりもした。だけどたまたま最初に集まった奴らが、高校時代のメンバーとは比べ物にならないくらい超絶なテクニックの持ち主ばかりで、僕はそのバンドに残ってボーカリストとしてまた歌うことになった。
 そしてその頃から自分で曲を作るということも本格的に始めた。
 高校生の頃も何曲か作詞作曲したことはあった。大学に入ってからは作詞作曲をし、パソコンで編曲もした。主旋律に様々な楽器を重ねていく作業はとても楽しかった。
 大学の一年生の頃はバンド活動に夢中になって一生懸命やったけれど、僕の心の中では何となく違うなという思いが芽生えていた。二年目には歌ったりギターを演奏するよりも曲を作ることに夢中になった。アイデアはいくらでもあった。それを形にするのに時間を要した。よく知らない楽器の奏法を学んだり、様々なジャンルの音楽を聞く時間も欲しかった。
 僕はだんだんバンドの練習に参加するのが苦痛になっていった。時にはみんなで一心不乱に音楽を奏でる。でも、気分が乗らなければ、だらだらとくだらないおしゃべりをして時間を潰す。その時間が僕にはすごくもったいないと思えた。
 そんな雰囲気が周りにも伝わったのだろうか。だんだんメンバーたちとの仲は悪くなり、さらに険悪になっていった。
 僕は自ら提案し、バンドを抜けた。僕の脱退に伴ってバンドも解散ということになった。
 僕はバンドをやめると同時に、大学もやめた。大学に行って役に立つか立たないかわからない講義を受けている時間ももったいなかった。
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