8 / 27
7
しおりを挟む
その家は道に囲まれた一区画を一軒で占領しているようだった。道に面した一区間、ずっと壁が続いている。直角に曲がった別の道に面したところも同じだった。ただ、その塀の真ん中辺りがへこみ、大きな門が見えた。高い塀の中に、きちんと手入れされた木々が頭をのぞかせている。
家の門は閉ざされていた。
僕は時計を見て、指定時間きっかりにインターフォンのボタンを押した。
「どなたですか?」
「銀行の鈴木です。集金にお伺いさせていただきました」
僕は配達に当たってのマニュアルに記載されていた通りの文言を言った。
「お待ちください」
インターフォンから離れて辺りを見た。
本当にばかでかい。代々続く由緒ある家柄か、とんでもない金持ちの家なのだろう。門柱や塀の上には小型の監視カメラが見える。
大きな門の隣にある通用口が開いた。
「小口さんですか?」
僕は尋ねた。
おとどけものは小口というこの家の家政婦にしか渡してはいけないことになっている。写真はなかったが、四十代後半の女性だと資料にあった。
女が僕の問いかけに頷いた。
僕は四角い箱を渡した。
女は大事そうに箱を受け取り、扉を閉めた。
もう一軒はヤクザだった。
繁華街の一角を占めるビルの、中ほどの階のフロアを占領している不動産屋に入る時に見た看板がけばけばしくて、景気の良い会社なのだろうと思った。
会社の中には強面の男たちがたむろしていて、初顔の僕をじろじろと殺気を含んだ目で見た。反社会の人達かどうかわからないけれど、どのみち普通の人とは違う人種なのだろうと思い、震えあがった。
僕は近くの人達に聞こえるように、社長さんにおとどけものを持ってきたと告げた。
男たちの態度が一変した。
数人の男が立ち上がり、にこやかな笑顔を見せて(それでも怖かったけれど)僕を奥の部屋に案内した。
一人がドアをノックする。
「社長、お客さんがお見えです」
男はどすの利いた声でドアの向こうに呼びかけた。
「入れ」
中から声がした。
そこでは社長に直接、おとどけものを渡すという指示だった。
社長室と書かれた奥の部屋は様々な調度品で満たされていた。どれもこれも大きくて、とても高価な物のように見えた。
とてつもなく大きなツボの間に、これまた大きな机があり、その向こうに恰幅のいい男が椅子に座っていた。まだ四十代になったばかりだろうか。凄みのある顔だったが、想像していたよりも若い人だった。
男は人懐こい笑みを浮かべておとどけものを受け取った。
「礼だ。これからもよろしく頼むよ」
男は低いしわがれた声で言い、金色の財布から数枚のお札を出して僕に突き出した。
僕はそれを受け取っていいものかと迷ったが、この男の好意を断るとどんな目に合わせられるかわからないと思い、素直に受け取った。
家の門は閉ざされていた。
僕は時計を見て、指定時間きっかりにインターフォンのボタンを押した。
「どなたですか?」
「銀行の鈴木です。集金にお伺いさせていただきました」
僕は配達に当たってのマニュアルに記載されていた通りの文言を言った。
「お待ちください」
インターフォンから離れて辺りを見た。
本当にばかでかい。代々続く由緒ある家柄か、とんでもない金持ちの家なのだろう。門柱や塀の上には小型の監視カメラが見える。
大きな門の隣にある通用口が開いた。
「小口さんですか?」
僕は尋ねた。
おとどけものは小口というこの家の家政婦にしか渡してはいけないことになっている。写真はなかったが、四十代後半の女性だと資料にあった。
女が僕の問いかけに頷いた。
僕は四角い箱を渡した。
女は大事そうに箱を受け取り、扉を閉めた。
もう一軒はヤクザだった。
繁華街の一角を占めるビルの、中ほどの階のフロアを占領している不動産屋に入る時に見た看板がけばけばしくて、景気の良い会社なのだろうと思った。
会社の中には強面の男たちがたむろしていて、初顔の僕をじろじろと殺気を含んだ目で見た。反社会の人達かどうかわからないけれど、どのみち普通の人とは違う人種なのだろうと思い、震えあがった。
僕は近くの人達に聞こえるように、社長さんにおとどけものを持ってきたと告げた。
男たちの態度が一変した。
数人の男が立ち上がり、にこやかな笑顔を見せて(それでも怖かったけれど)僕を奥の部屋に案内した。
一人がドアをノックする。
「社長、お客さんがお見えです」
男はどすの利いた声でドアの向こうに呼びかけた。
「入れ」
中から声がした。
そこでは社長に直接、おとどけものを渡すという指示だった。
社長室と書かれた奥の部屋は様々な調度品で満たされていた。どれもこれも大きくて、とても高価な物のように見えた。
とてつもなく大きなツボの間に、これまた大きな机があり、その向こうに恰幅のいい男が椅子に座っていた。まだ四十代になったばかりだろうか。凄みのある顔だったが、想像していたよりも若い人だった。
男は人懐こい笑みを浮かべておとどけものを受け取った。
「礼だ。これからもよろしく頼むよ」
男は低いしわがれた声で言い、金色の財布から数枚のお札を出して僕に突き出した。
僕はそれを受け取っていいものかと迷ったが、この男の好意を断るとどんな目に合わせられるかわからないと思い、素直に受け取った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/1/1:『いえい』の章を追加。2026/1/8の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/31:『たこあげ』の章を追加。2026/1/7の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/30:『ねんがじょう』の章を追加。2026/1/6の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/29:『ふるいゆうじん』の章を追加。2026/1/5の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/28:『ふゆやすみ』の章を追加。2026/1/4の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/27:『ことしのえと』の章を追加。2026/1/3の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/26:『はつゆめ』の章を追加。2026/1/2の朝8時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる