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僕は綾に電話をして会いたいと告げた。
待ち合わせのファミレスには、先に綾が来ていた。
「ごめん、急に呼び出して」
「いえ」
僕は綾の前に座った。
「この前は済まなかった。あんなことをして。僕がバカだった」
「全然気にしていませんから」
「実は、話そうかどうか迷ったんだけど・・・・」
「?」
綾は僕を見て、ほんの少し首を傾げる。
「もう会えなくなるかもしれない」
「え?」
「僕がコンビニを辞めてから、新しい仕事をしていたのは知っている?」
「ええ、何となく」
「僕はある物を配達する仕事をしていた。最近その仕事がなくなり、関係者が次々と死んでいった」
綾は息を飲んで僕を見る。
「ごめん、変な話して」
「いえ」
「僕と一緒にそのことを調べていた人も死んだ。その人のためにも、僕は真実を調べなければならない」
綾は僕の話に、明らかにショックを受けたようだった。
「それって危険なこと、ですよね?」
「うん。多分」
「そんなことしないで」
綾が真剣な目で僕を見る。
「今まで僕は自分のために行動してきた。だけど、僕に協力してくれようとしていた人たちが死んでいった。もう僕だけの問題じゃない。真実を知り、必要ならそれを解決しなければならない。時間はもう残されていないし、誰かに協力を頼もうにも、信じてもらえそうにない。僕は自分の力でやる。だから・・・・」
僕は話をしていて、綾に告げるべきではなかったと気が付いた。こんな話をされて、綾はどう思うだろう。僕のことを好きだとしても、好きじゃないとしても、綾の心に重いものを背負わせてしまう。
だけど僕はどうしても。
「あの時のまま別れたくなかった。突然僕が姿を消してしまったら、綾だってつらいかもしれない。そう思ったからこそ綾に会った。でも、それは間違いだったかもしれない」
「この前の夜のことは、私、全然気にしていません。二人でお酒を飲んで話をしたことは一番の思い出です」
そう話す綾の目から涙がこぼれた。
「二人でいた時間はとても楽しかった。もし僕が戻らなかったら、僕のことは忘れて」
そう言って僕は立ち上がった。
「もう行くよ」
「待って。私、待っています。いつまでも待っています。必ず帰ってきて」
「うん」
僕は一人テーブルに残る綾に背を向けて店を出た。
学生時代に乗っていた埃まみれの原付バイクを引っ張り出してきた。必要な時もあるだろうとナンバーを付けたままにして、時々エンジンもかけてきた。そのバイクで出かけるつもりだった。
パソコンで田辺から教えられた電話番号の住所は調べてあった。
ヘルメットをかぶり、バイクにまたがった。シートの下には三十センチのモンキーレンチが入れてある。それくらいしか身を守るために使えそうな物はなかった。
僕は時々スマホで場所とルートを確認しながらバイクを走らせた。岡部の家と思われる場所は田辺の家から数キロほどの所だ。
田辺の家のあった住宅街を通り過ぎると、その先には田園風景が広がっていた。僕は田舎道へと入っていった。
山が近くまで迫り、段々畑の中に家が点在している。小高い丘を回り込んだ先に岡部の家があった。
ゆるやかな丘の斜面に、鉄の柵で囲まれた広大な敷地がある。敷地の大部分は公園のように芝生で覆われていて、中央に洋風の大きな建物が佇んでいる。
僕は鉄柵の門の前にバイクを停めて、インターフォンのボタンを押した。
何度か押してみたけれど、反応はなかった。
鉄柵の扉には南京錠が掛けられている。
僕はバイクのシート下の収納場所からモンキーレンチを取り出し、ズボンの後ろに差し込んだ。
近くの柵によじ登り、乗り越える。敷地内の芝はかつてはよく手入れされていたのだろう。しかし今は背の低い雑草に覆われている。
僕は身を低くして建物の近くまで走った。
待ち合わせのファミレスには、先に綾が来ていた。
「ごめん、急に呼び出して」
「いえ」
僕は綾の前に座った。
「この前は済まなかった。あんなことをして。僕がバカだった」
「全然気にしていませんから」
「実は、話そうかどうか迷ったんだけど・・・・」
「?」
綾は僕を見て、ほんの少し首を傾げる。
「もう会えなくなるかもしれない」
「え?」
「僕がコンビニを辞めてから、新しい仕事をしていたのは知っている?」
「ええ、何となく」
「僕はある物を配達する仕事をしていた。最近その仕事がなくなり、関係者が次々と死んでいった」
綾は息を飲んで僕を見る。
「ごめん、変な話して」
「いえ」
「僕と一緒にそのことを調べていた人も死んだ。その人のためにも、僕は真実を調べなければならない」
綾は僕の話に、明らかにショックを受けたようだった。
「それって危険なこと、ですよね?」
「うん。多分」
「そんなことしないで」
綾が真剣な目で僕を見る。
「今まで僕は自分のために行動してきた。だけど、僕に協力してくれようとしていた人たちが死んでいった。もう僕だけの問題じゃない。真実を知り、必要ならそれを解決しなければならない。時間はもう残されていないし、誰かに協力を頼もうにも、信じてもらえそうにない。僕は自分の力でやる。だから・・・・」
僕は話をしていて、綾に告げるべきではなかったと気が付いた。こんな話をされて、綾はどう思うだろう。僕のことを好きだとしても、好きじゃないとしても、綾の心に重いものを背負わせてしまう。
だけど僕はどうしても。
「あの時のまま別れたくなかった。突然僕が姿を消してしまったら、綾だってつらいかもしれない。そう思ったからこそ綾に会った。でも、それは間違いだったかもしれない」
「この前の夜のことは、私、全然気にしていません。二人でお酒を飲んで話をしたことは一番の思い出です」
そう話す綾の目から涙がこぼれた。
「二人でいた時間はとても楽しかった。もし僕が戻らなかったら、僕のことは忘れて」
そう言って僕は立ち上がった。
「もう行くよ」
「待って。私、待っています。いつまでも待っています。必ず帰ってきて」
「うん」
僕は一人テーブルに残る綾に背を向けて店を出た。
学生時代に乗っていた埃まみれの原付バイクを引っ張り出してきた。必要な時もあるだろうとナンバーを付けたままにして、時々エンジンもかけてきた。そのバイクで出かけるつもりだった。
パソコンで田辺から教えられた電話番号の住所は調べてあった。
ヘルメットをかぶり、バイクにまたがった。シートの下には三十センチのモンキーレンチが入れてある。それくらいしか身を守るために使えそうな物はなかった。
僕は時々スマホで場所とルートを確認しながらバイクを走らせた。岡部の家と思われる場所は田辺の家から数キロほどの所だ。
田辺の家のあった住宅街を通り過ぎると、その先には田園風景が広がっていた。僕は田舎道へと入っていった。
山が近くまで迫り、段々畑の中に家が点在している。小高い丘を回り込んだ先に岡部の家があった。
ゆるやかな丘の斜面に、鉄の柵で囲まれた広大な敷地がある。敷地の大部分は公園のように芝生で覆われていて、中央に洋風の大きな建物が佇んでいる。
僕は鉄柵の門の前にバイクを停めて、インターフォンのボタンを押した。
何度か押してみたけれど、反応はなかった。
鉄柵の扉には南京錠が掛けられている。
僕はバイクのシート下の収納場所からモンキーレンチを取り出し、ズボンの後ろに差し込んだ。
近くの柵によじ登り、乗り越える。敷地内の芝はかつてはよく手入れされていたのだろう。しかし今は背の低い雑草に覆われている。
僕は身を低くして建物の近くまで走った。
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