おとどけもの

原口源太郎

文字の大きさ
22 / 27

21

しおりを挟む
 僕は綾に電話をして会いたいと告げた。
 待ち合わせのファミレスには、先に綾が来ていた。
「ごめん、急に呼び出して」
「いえ」
 僕は綾の前に座った。
「この前は済まなかった。あんなことをして。僕がバカだった」
「全然気にしていませんから」
「実は、話そうかどうか迷ったんだけど・・・・」
「?」
 綾は僕を見て、ほんの少し首を傾げる。
「もう会えなくなるかもしれない」
「え?」
「僕がコンビニを辞めてから、新しい仕事をしていたのは知っている?」
「ええ、何となく」
「僕はある物を配達する仕事をしていた。最近その仕事がなくなり、関係者が次々と死んでいった」
 綾は息を飲んで僕を見る。
「ごめん、変な話して」
「いえ」
「僕と一緒にそのことを調べていた人も死んだ。その人のためにも、僕は真実を調べなければならない」
 綾は僕の話に、明らかにショックを受けたようだった。
「それって危険なこと、ですよね?」
「うん。多分」
「そんなことしないで」
 綾が真剣な目で僕を見る。
「今まで僕は自分のために行動してきた。だけど、僕に協力してくれようとしていた人たちが死んでいった。もう僕だけの問題じゃない。真実を知り、必要ならそれを解決しなければならない。時間はもう残されていないし、誰かに協力を頼もうにも、信じてもらえそうにない。僕は自分の力でやる。だから・・・・」
 僕は話をしていて、綾に告げるべきではなかったと気が付いた。こんな話をされて、綾はどう思うだろう。僕のことを好きだとしても、好きじゃないとしても、綾の心に重いものを背負わせてしまう。
 だけど僕はどうしても。
「あの時のまま別れたくなかった。突然僕が姿を消してしまったら、綾だってつらいかもしれない。そう思ったからこそ綾に会った。でも、それは間違いだったかもしれない」
「この前の夜のことは、私、全然気にしていません。二人でお酒を飲んで話をしたことは一番の思い出です」
 そう話す綾の目から涙がこぼれた。
「二人でいた時間はとても楽しかった。もし僕が戻らなかったら、僕のことは忘れて」
 そう言って僕は立ち上がった。
「もう行くよ」
「待って。私、待っています。いつまでも待っています。必ず帰ってきて」
「うん」
 僕は一人テーブルに残る綾に背を向けて店を出た。

 学生時代に乗っていた埃まみれの原付バイクを引っ張り出してきた。必要な時もあるだろうとナンバーを付けたままにして、時々エンジンもかけてきた。そのバイクで出かけるつもりだった。
 パソコンで田辺から教えられた電話番号の住所は調べてあった。
 ヘルメットをかぶり、バイクにまたがった。シートの下には三十センチのモンキーレンチが入れてある。それくらいしか身を守るために使えそうな物はなかった。
 僕は時々スマホで場所とルートを確認しながらバイクを走らせた。岡部の家と思われる場所は田辺の家から数キロほどの所だ。
 田辺の家のあった住宅街を通り過ぎると、その先には田園風景が広がっていた。僕は田舎道へと入っていった。
 山が近くまで迫り、段々畑の中に家が点在している。小高い丘を回り込んだ先に岡部の家があった。
 ゆるやかな丘の斜面に、鉄の柵で囲まれた広大な敷地がある。敷地の大部分は公園のように芝生で覆われていて、中央に洋風の大きな建物が佇んでいる。
 僕は鉄柵の門の前にバイクを停めて、インターフォンのボタンを押した。
 何度か押してみたけれど、反応はなかった。
 鉄柵の扉には南京錠が掛けられている。
 僕はバイクのシート下の収納場所からモンキーレンチを取り出し、ズボンの後ろに差し込んだ。
 近くの柵によじ登り、乗り越える。敷地内の芝はかつてはよく手入れされていたのだろう。しかし今は背の低い雑草に覆われている。
 僕は身を低くして建物の近くまで走った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2026/1/1:『いえい』の章を追加。2026/1/8の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/31:『たこあげ』の章を追加。2026/1/7の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/30:『ねんがじょう』の章を追加。2026/1/6の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/29:『ふるいゆうじん』の章を追加。2026/1/5の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/28:『ふゆやすみ』の章を追加。2026/1/4の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/27:『ことしのえと』の章を追加。2026/1/3の朝8時頃より公開開始予定。 2025/12/26:『はつゆめ』の章を追加。2026/1/2の朝8時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...