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「いやー疲れた」
コンビニで買い物をした袋をぶら下げて男が家に入ってきた。
「おい、酒買ってきたぞ」
「時間がかかりましたね」
雪美を見張っていた男が、車を運転してきた男に言う。日に焼けた逞しい男は雪美に声をかけた時と同じ服装をしていた。
「今はどうやって場所を特定されるかわからねえから。お隣の県まで行ってきた。電話を掛けるためだけに遠出するのも骨が折れるぜ」
「ご苦労様です。」
「もう掛けることもないと思うからいいけどよ。それよりどうだ? 娘は良い子ちゃんにしてたか?」
「はい。もう寝ました」
「まさかちょっかい出してないだろうな?」
「出してません」
監視役の男はムキになって首を左右に振った。
「俺たちのやり方は話したな?」
「はい」
「思いっきり恐怖心を植え付けておくんだ」
「はい」
「じゃ、これまでの成功に乾杯だ。お前と顔を合わせるのもあと一週間だ」
二人は狭い台所のテーブルの上でビールの缶を合わせた。
家々の明かりは減っていき、眠らない街を眠りに誘おうとしている。
翌日、雪美はぱちっと目を覚ました。うーんと伸びをしてから起き上がる。
「洗面所はどこかな?」
部屋を出て台所に行ってみると、二人の男は床にごろんと転がって小さないびきをかいていた。
「あーあ、だらしがない。こんなんじゃ、逃げようと思えば簡単に逃げられるじゃない」
雪美の独り言に監視役が目を覚ました。
雪美はその男と話をしたくなかったので慌てて部屋に戻った。
「フー」
大きく息を吐き出してから布団に寝転がって頭の後ろで手を組む。
今日は日曜日だからいいけど、明日からどうなるのだろう。それより、本当に家に帰らせてくれるのかな? あの人たち、偉そうなこと言ってるけど、本当は二人しかいないのじゃないかな? 今逃げ出して警察に行けば・・・・でも、何も警戒していないから、やっぱり仲間の人がいて昨日言ったようなことをされるのかな。あの人たちだけで誘拐ができるほど度胸がありそうもないもんね。
その時、部屋のドアがガラッと開いた。雪美は慌てて毛布を被る。
「よう、おはよう」
昨日、通りで雪美に声をかけた男が人懐こい笑顔を見せて機嫌良さそうに言った。
雪美は毛布から顔だけ出して男を見た。
「これ、着替えだ。着たらこっちに来い」
ジーパンとシャツを毛布の上に投げると男は戸を閉めて行ってしまった。
服を着替えてダイニングに行くと、二人の男は椅子に座っていた。テーブルに弁当屋の弁当が置かれている。
「飯だ。食え」
雪美に着替えを持ってきた男が言った。そして空いた椅子を顎で示す。
「あの歯ブラシはありますか?」
雪美がおずおずと尋ねる。
「おっと、そうか。気が付かなかったな。後で買ってくる」
「はい」
雪美は気のない返事をした。
「今でないと駄目か」
「いえ、私も買い物についていっちゃ、ダメですか?」
「駄目だ。この家から出るのは駄目だ。何かいる物があるのか?」
「え、えっと」
「下着じゃないの?」
それまで黙っていた男が口を開いた。
「そうか。それも後で買ってきてやるよ。取りあえず飯食え」
「はい」
「さすがにいい神経してるな。しっかりしてやがる」
「すみません」
「早く食え」
男は微笑みながら言った。
雪美は男たちに勝手に名前を付けていた。日に焼けて明るい男がクロちゃん。肌が黒いからだ。もう一方がクラちゃん。性格が暗そうだからだ。クロちゃんとクラちゃん。
二人に名前を付けて心の中で呼んでみるとなんだか楽しくなってきた。
この人たちはそんなに悪い人じゃないみたい。きっとクロちゃんが言っていたように仲間がいっぱいいるのだ。二人は下端の使い走りなのだろう。
雪美はシャワーを浴びたいと言いたかったが、やめて割りばしをパチンと二つにした。
コンビニで買い物をした袋をぶら下げて男が家に入ってきた。
「おい、酒買ってきたぞ」
「時間がかかりましたね」
雪美を見張っていた男が、車を運転してきた男に言う。日に焼けた逞しい男は雪美に声をかけた時と同じ服装をしていた。
「今はどうやって場所を特定されるかわからねえから。お隣の県まで行ってきた。電話を掛けるためだけに遠出するのも骨が折れるぜ」
「ご苦労様です。」
「もう掛けることもないと思うからいいけどよ。それよりどうだ? 娘は良い子ちゃんにしてたか?」
「はい。もう寝ました」
「まさかちょっかい出してないだろうな?」
「出してません」
監視役の男はムキになって首を左右に振った。
「俺たちのやり方は話したな?」
「はい」
「思いっきり恐怖心を植え付けておくんだ」
「はい」
「じゃ、これまでの成功に乾杯だ。お前と顔を合わせるのもあと一週間だ」
二人は狭い台所のテーブルの上でビールの缶を合わせた。
家々の明かりは減っていき、眠らない街を眠りに誘おうとしている。
翌日、雪美はぱちっと目を覚ました。うーんと伸びをしてから起き上がる。
「洗面所はどこかな?」
部屋を出て台所に行ってみると、二人の男は床にごろんと転がって小さないびきをかいていた。
「あーあ、だらしがない。こんなんじゃ、逃げようと思えば簡単に逃げられるじゃない」
雪美の独り言に監視役が目を覚ました。
雪美はその男と話をしたくなかったので慌てて部屋に戻った。
「フー」
大きく息を吐き出してから布団に寝転がって頭の後ろで手を組む。
今日は日曜日だからいいけど、明日からどうなるのだろう。それより、本当に家に帰らせてくれるのかな? あの人たち、偉そうなこと言ってるけど、本当は二人しかいないのじゃないかな? 今逃げ出して警察に行けば・・・・でも、何も警戒していないから、やっぱり仲間の人がいて昨日言ったようなことをされるのかな。あの人たちだけで誘拐ができるほど度胸がありそうもないもんね。
その時、部屋のドアがガラッと開いた。雪美は慌てて毛布を被る。
「よう、おはよう」
昨日、通りで雪美に声をかけた男が人懐こい笑顔を見せて機嫌良さそうに言った。
雪美は毛布から顔だけ出して男を見た。
「これ、着替えだ。着たらこっちに来い」
ジーパンとシャツを毛布の上に投げると男は戸を閉めて行ってしまった。
服を着替えてダイニングに行くと、二人の男は椅子に座っていた。テーブルに弁当屋の弁当が置かれている。
「飯だ。食え」
雪美に着替えを持ってきた男が言った。そして空いた椅子を顎で示す。
「あの歯ブラシはありますか?」
雪美がおずおずと尋ねる。
「おっと、そうか。気が付かなかったな。後で買ってくる」
「はい」
雪美は気のない返事をした。
「今でないと駄目か」
「いえ、私も買い物についていっちゃ、ダメですか?」
「駄目だ。この家から出るのは駄目だ。何かいる物があるのか?」
「え、えっと」
「下着じゃないの?」
それまで黙っていた男が口を開いた。
「そうか。それも後で買ってきてやるよ。取りあえず飯食え」
「はい」
「さすがにいい神経してるな。しっかりしてやがる」
「すみません」
「早く食え」
男は微笑みながら言った。
雪美は男たちに勝手に名前を付けていた。日に焼けて明るい男がクロちゃん。肌が黒いからだ。もう一方がクラちゃん。性格が暗そうだからだ。クロちゃんとクラちゃん。
二人に名前を付けて心の中で呼んでみるとなんだか楽しくなってきた。
この人たちはそんなに悪い人じゃないみたい。きっとクロちゃんが言っていたように仲間がいっぱいいるのだ。二人は下端の使い走りなのだろう。
雪美はシャワーを浴びたいと言いたかったが、やめて割りばしをパチンと二つにした。
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