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夕闇が勢いを増して、駅前の通りは華やかに彩り始める。ビルに掲げられた様々な看板、店内を彩る明かり、道行く車のライト。
俊輔は見慣れた街並みの景色を何の感情もない目で見ていた。何となくその中に雪美がいるような気がした。
心は空っぽだった。何なのだろう、この虚ろな感情は。友達と別れてからどれくらい歩いたのかも覚えていない。ただただ体が重く感じる。それほどまで雪美のことが好きだったのだろうか。それほどまで人を好きになったことなどなかった。
バカヤロウ。
始めて振られたから気になっているだけだろう。そりゃ、初めて自分から声をかけたのは雪美が初めてだったし、抑えきれない何かがあったのも確かだ。だけど誰かを愛しているなんて言葉を使うには、自分はまだ幼いような気がしていた。
雪美の前に立てばドキドキした。雪美に振られた後は心が締め付けられるようだった。どちらも今までに経験したことがなかった。初めて人を愛したのだろうか。
バカバカシイ。
今の俺は今までの俺だ。昔からの俺だ。雪美がどうなろうと知ったことじゃない。
「計画はばっちりだし、きっと上手くいく。そうしたら真面目に働いて、今までの俺じゃなくなるんだ」
日に焼けた男と長い髪の女が話をしながら通り過ぎて行った。
俊輔は振り返り、その仲の良さそうなカップルを見送った。街の喧騒が二人を包んでいくようだった。
「いよいよ明日だな」
雪美の寝室ともなっているいつもの部屋で足立が言った。
「様子はどうですか?」
大石がやや緊張した面持ちで尋ねる。
「ばっちり」
「やっぱり僕が行きましょうか。今まで何もしてないし」
「いや、いい。俺が行く」
雪美は台所で昨日大石が教えたお好み焼きに挑戦している。
「絶対に捕まらないでください」
「大丈夫。準備は万端だ。六時までには帰れると思う。もし次の日になっても俺が帰ってこなかったらここを出てどこかに姿を消せ。調べられりゃ俺とおまえとの繋がりはすぐにわかっちまう」
「娘は?」
「そこら辺に放り出していきゃいい。自分で帰るくらいできるだろ」
「わかりました」
「まあ、それは万が一って場合だ。きっと上手くいく。お前は分け前をもらったらすぐに東京を離れるのか?」
「いえ、一旦アパートに帰って家賃の振り込みとかしてから」
「俺はすぐに出る。お前もなるべく早く東京を出たほうがいい。まあ、ここにいたって、捕まる心配はないと思うが」
「ねー。焦げちゃう!」
台所で雪美が悲鳴を上げた。
「ちょっと行ってやれよ」
足立が大石に目配せした。
大石が台所に行くと、雪美はフライパンを両手で持って固まっていた。
「どうした?」
「ひっくり返して」
「お前、こんなに入れるなよ。多すぎだ。ちょっと貸してみ」
大石が慣れた手つきでフライパンを振ると、巨大なお好み焼きは空中で半回転して再びフライパンに収まった。
「すごーい」
雪美がパチパチと手を叩く。さらわれの身だということをすっかり忘れているようだ。
「これ、何人分?」
「わからない。適当」
「家でお菓子を作るとき分量を量らないのか?」
「もちろん量るよ」
雪美は唇を尖らせる。
「まあ、うまく出来たようだからいいか」
大石はなだめるように言った。
俊輔は見慣れた街並みの景色を何の感情もない目で見ていた。何となくその中に雪美がいるような気がした。
心は空っぽだった。何なのだろう、この虚ろな感情は。友達と別れてからどれくらい歩いたのかも覚えていない。ただただ体が重く感じる。それほどまで雪美のことが好きだったのだろうか。それほどまで人を好きになったことなどなかった。
バカヤロウ。
始めて振られたから気になっているだけだろう。そりゃ、初めて自分から声をかけたのは雪美が初めてだったし、抑えきれない何かがあったのも確かだ。だけど誰かを愛しているなんて言葉を使うには、自分はまだ幼いような気がしていた。
雪美の前に立てばドキドキした。雪美に振られた後は心が締め付けられるようだった。どちらも今までに経験したことがなかった。初めて人を愛したのだろうか。
バカバカシイ。
今の俺は今までの俺だ。昔からの俺だ。雪美がどうなろうと知ったことじゃない。
「計画はばっちりだし、きっと上手くいく。そうしたら真面目に働いて、今までの俺じゃなくなるんだ」
日に焼けた男と長い髪の女が話をしながら通り過ぎて行った。
俊輔は振り返り、その仲の良さそうなカップルを見送った。街の喧騒が二人を包んでいくようだった。
「いよいよ明日だな」
雪美の寝室ともなっているいつもの部屋で足立が言った。
「様子はどうですか?」
大石がやや緊張した面持ちで尋ねる。
「ばっちり」
「やっぱり僕が行きましょうか。今まで何もしてないし」
「いや、いい。俺が行く」
雪美は台所で昨日大石が教えたお好み焼きに挑戦している。
「絶対に捕まらないでください」
「大丈夫。準備は万端だ。六時までには帰れると思う。もし次の日になっても俺が帰ってこなかったらここを出てどこかに姿を消せ。調べられりゃ俺とおまえとの繋がりはすぐにわかっちまう」
「娘は?」
「そこら辺に放り出していきゃいい。自分で帰るくらいできるだろ」
「わかりました」
「まあ、それは万が一って場合だ。きっと上手くいく。お前は分け前をもらったらすぐに東京を離れるのか?」
「いえ、一旦アパートに帰って家賃の振り込みとかしてから」
「俺はすぐに出る。お前もなるべく早く東京を出たほうがいい。まあ、ここにいたって、捕まる心配はないと思うが」
「ねー。焦げちゃう!」
台所で雪美が悲鳴を上げた。
「ちょっと行ってやれよ」
足立が大石に目配せした。
大石が台所に行くと、雪美はフライパンを両手で持って固まっていた。
「どうした?」
「ひっくり返して」
「お前、こんなに入れるなよ。多すぎだ。ちょっと貸してみ」
大石が慣れた手つきでフライパンを振ると、巨大なお好み焼きは空中で半回転して再びフライパンに収まった。
「すごーい」
雪美がパチパチと手を叩く。さらわれの身だということをすっかり忘れているようだ。
「これ、何人分?」
「わからない。適当」
「家でお菓子を作るとき分量を量らないのか?」
「もちろん量るよ」
雪美は唇を尖らせる。
「まあ、うまく出来たようだからいいか」
大石はなだめるように言った。
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