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雪美の父、佳一がふらりと部屋に入ってきた。
「犯人の手がかりは何か掴めましたか?」
ソファに座る刑事たちに尋ねる。
「いや、済みません。目撃情報と監視カメラから、娘さんを連れ去ったのに使われたと思われる車の車種が特定されました。現場から20キロ程離れたところで乗り捨てられた該当車両と思われる車を発見したのですが、その後の足取りが掴めていません。車は盗難車でした。犯人はかなり周到に準備をしていたと思われます」
「そうですか」
佳一は力なく言った。
「あと、金の用意の手はずはできました。受け渡しの時はどのように行動すればいいのですか?」
「明日、吉田刑事が来ますので、そのときに打ち合わせをします」
「はい。わかりました」
佳一はまた力なく返事をした。
「大丈夫ですよ。娘さんは無事に帰ってきます。そして必ず犯人も捕まえます」
雪美の父を元気づけるように刑事がった。
「どうだった? 二人だけの夜は」
昼に足立が顔を見せるなり言った。
「何言ってるんですか」
大石がむっとしたように応える。
「お前ら、この頃やけに打ち解けてないか?」
「ないです」
大石は即座に否定した。だが昨夜、自分のことを色々と話してしまった。今までのお互いに何も知らなかった時と何かが違う。
「それで今朝は何を食わせてもらったんだ?」
「ん、・・・・まあ」
大石が口ごもる。
「ん? 雪美ちゃん、何を作ってやったの?」
「スパゲティ」
それまで黙っていた雪美がニコニコして言った。
「ミートスパゲティ?」
「そう」
雪美は嬉しそうに言った。
「やっぱり来てない」
授業の始まる前に、教室の中を見ながら翔司が俊輔に言った。
二人は夏香の机の前まで歩いていった。
「どうだった?」
俊輔が尋ねる。
雪美のスマホに電話をしても繋がらないので、自宅の方にかけてみると夏香が昨日言っていた。
「風邪をひいて寝込んでるんだって」
「風邪?」
「うん。そう言われちゃうと家に行ってみるってわけにもいかない。寝込んでいるところにお見舞いって雰囲気じゃないし、第一、雪美のお母さん、暗に来てもらっては困りますって言っているようだった」
「何だか怪しい」
「土曜日から怪しいよ」
「そうか」
勇介は素っ気無く言った。
「諦めちゃうの?」
「何を?」
「雪美がどうなったか知ること」
「俺たちがどうのこうの言っても仕方がないだろ」
そう言って俊輔は自分の机へと歩いていった。
別にお料理することが嫌になったわけじゃないけれど、スパゲティばかりじゃやっぱり飽きちゃうし、別のものを作ろうと思っても上手くできずにイライラするだけだもん。
雪美は雑誌から顔を上げて男を見た。
「ん? 飯の支度?」
雪美の視線に気が付いた大石が尋ねる。
「うん・・・」
何気なく返事をして、再び雑誌に目を落とす。
みんなどうしているかな。夏香たちはどれほど心配してくれているだろう。俊輔君も心配してくれているのかな。
いけない、いけない。暗くなったりしては。明後日には家に帰れるんだ。
ふたたび雪美は顔を上げて大石を見た。
大石も雪美を見る。
そして立ち上がると部屋を出ていった。
あの人は何を考えているのかわからない。ずーっと同じ姿勢で雑誌、時々スマホ。私だったら耐えられそうにない。かといってお料理も・・・・。今度は大掃除でもしようか。
「おーい、料理教えてやるから来いよ」
台所の方から大石の声が聞こえてきた。
雪美はパッと立ち上がると、急いでいる様子を悟られないように急いで台所へ向かった。なぜそんなふうにしたのかなんて考えもしなかった。
「犯人の手がかりは何か掴めましたか?」
ソファに座る刑事たちに尋ねる。
「いや、済みません。目撃情報と監視カメラから、娘さんを連れ去ったのに使われたと思われる車の車種が特定されました。現場から20キロ程離れたところで乗り捨てられた該当車両と思われる車を発見したのですが、その後の足取りが掴めていません。車は盗難車でした。犯人はかなり周到に準備をしていたと思われます」
「そうですか」
佳一は力なく言った。
「あと、金の用意の手はずはできました。受け渡しの時はどのように行動すればいいのですか?」
「明日、吉田刑事が来ますので、そのときに打ち合わせをします」
「はい。わかりました」
佳一はまた力なく返事をした。
「大丈夫ですよ。娘さんは無事に帰ってきます。そして必ず犯人も捕まえます」
雪美の父を元気づけるように刑事がった。
「どうだった? 二人だけの夜は」
昼に足立が顔を見せるなり言った。
「何言ってるんですか」
大石がむっとしたように応える。
「お前ら、この頃やけに打ち解けてないか?」
「ないです」
大石は即座に否定した。だが昨夜、自分のことを色々と話してしまった。今までのお互いに何も知らなかった時と何かが違う。
「それで今朝は何を食わせてもらったんだ?」
「ん、・・・・まあ」
大石が口ごもる。
「ん? 雪美ちゃん、何を作ってやったの?」
「スパゲティ」
それまで黙っていた雪美がニコニコして言った。
「ミートスパゲティ?」
「そう」
雪美は嬉しそうに言った。
「やっぱり来てない」
授業の始まる前に、教室の中を見ながら翔司が俊輔に言った。
二人は夏香の机の前まで歩いていった。
「どうだった?」
俊輔が尋ねる。
雪美のスマホに電話をしても繋がらないので、自宅の方にかけてみると夏香が昨日言っていた。
「風邪をひいて寝込んでるんだって」
「風邪?」
「うん。そう言われちゃうと家に行ってみるってわけにもいかない。寝込んでいるところにお見舞いって雰囲気じゃないし、第一、雪美のお母さん、暗に来てもらっては困りますって言っているようだった」
「何だか怪しい」
「土曜日から怪しいよ」
「そうか」
勇介は素っ気無く言った。
「諦めちゃうの?」
「何を?」
「雪美がどうなったか知ること」
「俺たちがどうのこうの言っても仕方がないだろ」
そう言って俊輔は自分の机へと歩いていった。
別にお料理することが嫌になったわけじゃないけれど、スパゲティばかりじゃやっぱり飽きちゃうし、別のものを作ろうと思っても上手くできずにイライラするだけだもん。
雪美は雑誌から顔を上げて男を見た。
「ん? 飯の支度?」
雪美の視線に気が付いた大石が尋ねる。
「うん・・・」
何気なく返事をして、再び雑誌に目を落とす。
みんなどうしているかな。夏香たちはどれほど心配してくれているだろう。俊輔君も心配してくれているのかな。
いけない、いけない。暗くなったりしては。明後日には家に帰れるんだ。
ふたたび雪美は顔を上げて大石を見た。
大石も雪美を見る。
そして立ち上がると部屋を出ていった。
あの人は何を考えているのかわからない。ずーっと同じ姿勢で雑誌、時々スマホ。私だったら耐えられそうにない。かといってお料理も・・・・。今度は大掃除でもしようか。
「おーい、料理教えてやるから来いよ」
台所の方から大石の声が聞こえてきた。
雪美はパッと立ち上がると、急いでいる様子を悟られないように急いで台所へ向かった。なぜそんなふうにしたのかなんて考えもしなかった。
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