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月曜日に簡単な小包が森口家に送られてきた。中には無造作に包まれた札束が入っていた。それは大石が受け取った身代金の分け前の全てだった。
大石も警察では仲間のことについては一切話さなかった。
雪美も大石が誘拐に関わっていたことだけは認めた。
いつもの車両に夏香と優樹菜がいた。雪美が電車に乗り込むと、ぎゅうぎゅう詰めの中、夏香がサラリーマンの陰から手を振ってみせた。
人に揉まれながら、雪美は思っていた。それは金曜日からずっと思っていることだった。
私はあの人が好きだったんだ。金曜日にあの人を見て言った言葉。それは本心だ。好きになってしまったのはうすうす気づいていた。ただ、好きになっても会えない人だから、好きになってはいけない人だからとその気持ちに蓋をしようとしてきた。
それなのに、あの人が目の前に現れた途端にあんな言葉を・・・・
「どうしたの?」
気が付くと夏香が怪訝そうな顔で覗き込んでいた。
「何でもない」
「早く降りないと」
雪美たちは電車に乗り込んでくる人たちをかき分けるようにしてホームに降りた。
大石が自首したことによって、大石の交友関係が調べられた。誘拐事件の頃から行方不明となっている足立が関係者として浮かび上がり、その足取りが捜索された。
警察が岐阜県の足立たちが借りたアパートを見つけ出した時、二人の姿はそこになかった。大石も雪美も足立のことは決して口にせず、足立が犯行に関わっていたという確証は得られなかった。
やがて大石の裁判が行われた。
人質が無事に返されたこと、自首したこと、分け前として得た金を全額返した事などにより、大石には執行猶予付きの判決が下された。
その日、大石が裁判所を出ると、コンクリートの上を冬の到来を告げる風が落ち葉を連れて舞った。そこからの眺めは、くすんだような秋の色が街を覆っていた。そんな景色の片隅に、長いマフラーを巻いた一人の女の姿を見つけた。
大石はその久しぶりに見る大人びた女の視界から逃れようとした。
しかし体は動かなかった。
雪美が駆け寄ってきた。
「こんにちは」
雪美の声を聞いて、全身の細胞が震えるのを感じた。
「さようなら」
やっとその言葉を口にした。
「どうして?」
雪美は悲しそうな目になって大石を見つめた。
いけないと思いながらも意思とは逆に雪美を抱きしめていた。
その時、大石はこのまま世界が溶けてなくなってしまえばいいと思った。
「おれは・・・・」
そう口にした時、雪美の目から涙がこぼれ落ちた。
「やっぱり、おれは・・・・もうどうなってもいい」
ふたたび雪美を固く抱きしめた。
二人の姿をかき消すように枯葉が舞った。
歩き始めた二人の姿が街の中に消えてゆき、見えなくなった。
終わり
大石も警察では仲間のことについては一切話さなかった。
雪美も大石が誘拐に関わっていたことだけは認めた。
いつもの車両に夏香と優樹菜がいた。雪美が電車に乗り込むと、ぎゅうぎゅう詰めの中、夏香がサラリーマンの陰から手を振ってみせた。
人に揉まれながら、雪美は思っていた。それは金曜日からずっと思っていることだった。
私はあの人が好きだったんだ。金曜日にあの人を見て言った言葉。それは本心だ。好きになってしまったのはうすうす気づいていた。ただ、好きになっても会えない人だから、好きになってはいけない人だからとその気持ちに蓋をしようとしてきた。
それなのに、あの人が目の前に現れた途端にあんな言葉を・・・・
「どうしたの?」
気が付くと夏香が怪訝そうな顔で覗き込んでいた。
「何でもない」
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雪美たちは電車に乗り込んでくる人たちをかき分けるようにしてホームに降りた。
大石が自首したことによって、大石の交友関係が調べられた。誘拐事件の頃から行方不明となっている足立が関係者として浮かび上がり、その足取りが捜索された。
警察が岐阜県の足立たちが借りたアパートを見つけ出した時、二人の姿はそこになかった。大石も雪美も足立のことは決して口にせず、足立が犯行に関わっていたという確証は得られなかった。
やがて大石の裁判が行われた。
人質が無事に返されたこと、自首したこと、分け前として得た金を全額返した事などにより、大石には執行猶予付きの判決が下された。
その日、大石が裁判所を出ると、コンクリートの上を冬の到来を告げる風が落ち葉を連れて舞った。そこからの眺めは、くすんだような秋の色が街を覆っていた。そんな景色の片隅に、長いマフラーを巻いた一人の女の姿を見つけた。
大石はその久しぶりに見る大人びた女の視界から逃れようとした。
しかし体は動かなかった。
雪美が駆け寄ってきた。
「こんにちは」
雪美の声を聞いて、全身の細胞が震えるのを感じた。
「さようなら」
やっとその言葉を口にした。
「どうして?」
雪美は悲しそうな目になって大石を見つめた。
いけないと思いながらも意思とは逆に雪美を抱きしめていた。
その時、大石はこのまま世界が溶けてなくなってしまえばいいと思った。
「おれは・・・・」
そう口にした時、雪美の目から涙がこぼれ落ちた。
「やっぱり、おれは・・・・もうどうなってもいい」
ふたたび雪美を固く抱きしめた。
二人の姿をかき消すように枯葉が舞った。
歩き始めた二人の姿が街の中に消えてゆき、見えなくなった。
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