最強だけど世界一極悪非道な勇者が王になる

原口源太郎

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勇者ダバイン

見習い勇者

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 翌日、ダバインは前日と同じ勇者のいでたちで、城に向かった。一晩寝ても、気分は晴れなかった。
 幸い、うるさいガキどもに会わずに城まで行くことができた。
「ダバイン様、ようこそ」
 昨日と同じように、城の門番に立つ兵士が敬礼をした。
「おはようごじゃむにゅ」
 ダバインはしょぼくれて、むにゃむにゃと言って城の中に入った。
「ダバイン。こちらへ」
 昨日の仕官に案内され、大広間へと行った。
 王様は昨日と同じ椅子に座っていた。斜め後ろには武道家もいる。
 ダバインは大広間に入った所でぺこりと頭を下げると、王様の前まで歩いていき、片膝を付いて挨拶をした。
「どうだ、昨夜はよく眠れたか?」
 王様が尋ねた。
「はい」
 ダバインは腫れぼったい目を見られないように、うつむいたまま答えた。
「では、さっそく昨日の試験の結果を伝える。ダバイン。お前を勇者見習いとして認める」
「見習い? ですか?」
「そうだ。誰でもいきなり勇者にはなれぬ。この国では、町の北にある祠から勇者のあかしを持ってきた者だけが勇者として認められる。ダバインよ。お前も町を出て北の祠に向かい、勇者のあかしを持ってくるのだ」
「はい」
「出発は一か月後。魔法使いと二人で旅をしてきなさい。魔法使いは城の西の堀に面した通りにある雑貨屋の隣に住んでおる。今日か明日のうちに訪ねるがよい。経験豊富な魔法使いだから、一緒に旅をして様々なことを学ぶのだ」
「わかりました」
「それから旅立ちまでの一か月間、武道家の道場に通い、武術を学ぶのだ。今のお前の力では、少しばかり強い魔物に出会えば、打ち倒すことはできまい」
 ダバインは武道家を見た。
 武道家はそっと頷く仕草をした。
 こいつに教えてもらうのか。
 ダバインは憂鬱になったが、勇者となるためには仕方がないことだと気持ちを入れ替えた。
「それではまず大蔵大臣のもとへ行き、雇用契約や賃金の説明を受けなさい。そのあと武道家の道場に行くのだ。武術の稽古は今日から始めるのだ。残された日は一カ月しかないのだから」
「はい」
 ダバインが返事をして立ち上がると、大広間の向こうで、仕官がこちらに来いと手招きをした。

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