遥かなる故郷は宇宙

原口源太郎

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 巨大宇宙ステーションを建造するにあたり、危険な宇宙空間での作業を行うために、色々な形態のロボットが開発された。特に一つの機体で様々な作業を行える人間型のロボットがより多く開発され、次から次へと改良が加えられていった。
 新型の宇宙ステーション№31を建造する頃には、一つの現場の簡単な指示をコンピューターに命ずるだけで、コンピューターがそれぞれのロボットに指示を与え、ロボットたちは自らの行動を考えて集団作業を行った。
 ロボットは人間の指よりも小さなものから、人間の数十倍の大きさのものまでが造られ、様々な現場に投入された。
 宇宙同盟国軍は戦争突入に際し、大型ロボットの装甲を強化し、様々な場所に取り付けられているロケットノズルの出力を上げるなどして戦闘兵器へと改造した。
 さらに地球の重力に適した動力性能のものが新たに開発され、地上戦へと投入された。また、そのような戦闘ロボット用の兵器も次々と開発され、宇宙同盟国軍は地球上の支配地域をたちまちのうちに拡大していった。
 地球連邦軍は戦闘用ロボットの対抗手段として、強力な妨害電波を発することと特殊な微細粒子を空中に散布することによって電波によるロボットの遠隔操作を行えないようにした。
 宇宙同盟国軍はすぐにロボットを改良し、通信の命令なしに、初めに与えられた任務に基づき行動するプログラムをロボットに搭載した。これに対抗し、地球連邦軍は妨害電波と特殊微細粒子がある場所でレーザーをロボットに当てて極小半導体の動作に変化を与え、AIによるロボット行動を制限する方法を編み出した。
 宇宙同盟国軍はその防御方法をすぐに見つけて対応したが、地球連邦軍はさらにそれを無効化する方法で反撃するというイタチごっこに陥り、宇宙同盟国軍は無人による戦闘ロボットの改良を諦め、電磁波の影響の少ない人間の操作による有人戦闘ロボットの開発へと移行した。
 それがFH型、通称Fマシーンと呼ばれる人間が乗り込んで操縦する人型の戦闘ロボットで、全長は二十メートル近くにもなる。FH型は試作機が1号機から7号機まで造られ、7号機は実戦で大いに成果をあげた。その後7号機の量産型になるF101が地球上の各地に配備された。次の新型、F102、F103と続き、さらに性能が強化されたF104が今の戦場での主流となっている。

 途中で少女を降してから、二機のF104は基地に帰還した。
「ジョン、どうした? ミサイルの直撃を食らったのか?」
 ドッグに入るなり、メカニックのドン・マクタが無線で話しかけてきた。
「左手がうまく作動しない。肩のジョイント辺りをやられたらしい」
 スカイが応じる。
「お前でもそんなことがあるのか」
「よせやい。それより、新型のマシーンは届いたのか?」
「いや、まだだ。遅れるらしい」
「おいおい、冗談じゃないぜ」
 F104の動力を落とすと、スカイはハッチを上げ、コックピットから飛び降りた。
 マクタが走ってくる。
「司令官はどこに?」
 ヘルメットを脱ぎながらスカイが声を張り上げる。
「指令室にいると思うが」
 マクタの答えを聞き終わらないうちにスカイは走り出していた。

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