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ラ・シュー基地に帰還すると、ユウはすぐにヨーロッパ地域への異動を願い出た。
ヨーロッパでは両軍とも軍備の増強が続き、間もなく大きな戦いが起こるといわれている。
スカイはキャスに言われた、死に急ぐなという言葉を何度も口にしてユウのヨーロッパ行きを思い留まらせようとした。
ユウはダブルドラゴンとの戦いで心に傷を負っていた。
あの時、スカイから敵のFマシーンが出撃したと連絡があり、十分警戒をしていたつもりだった。それなのに一瞬の攻撃でユウのF104は破壊された。さらにとどめを刺す時間は十分にあったはずなのに、敵のFマシーンはそれをしなかった。
戦いの場を何度も経験し、スカイには及ばないにしろ、大抵のパイロットよりもF104を上手く扱えると自負していたユウにとって、それは屈辱的なことだった。敵のFマシーンはユウのF104を子供扱いしているとしか思えてならなかった。
だからこそ、激しい戦闘が行われる地で自分の力を試し、技量を上げて再びあのFマシーンと戦いたい。それがユウの異動を願い出た理由だった。
数週間後にユウの配属転換の連絡が入り、ユウは慌ただしく荷物をまとめてラ・シューを出ていった。
やがて東ヨーロッパで大規模な戦闘が始まった。
Fマシーンの新たな供給は途絶え、スカイたちはルー・ソシア部隊が残していった腕の曲がったF104を修理して使用した。連邦軍はその地域での勢力を維持する気はないようで、ラ・シューはすぐに前線基地としての役割を失い、スカイはあちこちの基地を転々として過ごした。
ヨーロッパでの戦いは凄惨を極め、日々入ってくる情報は宇宙同盟軍にとっていいものではなかった。
やがて数カ月にも及んだヨーロッパで戦闘は同盟軍の敗北という形で終えることとなった。
連邦軍が次々と戦場に投入したダブルドラゴン型の移動要塞は終戦時にほとんどが存在していたが、宇宙同盟軍は数多くのFマシーンを失った。
ヨーロッパでの敗戦の数日後に宇宙同盟軍は地球連邦軍と平和条約を結び、地球上からの撤退を表明したが、実際には同盟軍の敗北だった。
スカイは戦争が終わると退役し、母が一人で暮らす故郷の宇宙ステーション№10に帰った。
ユウは激戦のヨーロッパで何度も死にそうになりながらも生き延び、数々の功績を挙げた。戦争中は戦いが終わったら地球に残って暮らしたいとスカイに語っていたが、結局ユウも生まれ故郷の宇宙ステーション№21に戻っていった。
スカイは宇宙に帰ってからもユウと連絡を取り合い、いつかお互いのステーションを訪ねるという約束をし、その日が来るのを楽しみにして過ごした。
そしてもう一人、スカイには終戦後に連絡を取る人がいた。
父からスチファニーの連絡先を聞き、宇宙に戻ってからスカイはびっくり箱を開けるような気持ちでスチファニーと初めてのコンタクトを取った。宇宙ステーション№17に暮らすスチファニーは突然の連絡に驚いたが、スカイのことは覚えていた。
宇宙ステーション№17は宇宙に暮らす人々が増え、さらに増え続けることを想定して作物を供給する方法を研究する実験棟としての意味合いを持って建造された。狭い場所でいかに効率よく多くの食物を育てられるか。あるいは逆に広大な空間を作ってそこで食物を育てるといった施設があった。
戦争が始まると、その巨大な空間は同盟軍が地上用のFマシーンの動力性能のテストに使ったり、パイロットの操縦訓練の場として使用された。戦争時に連邦軍が宇宙ステーション№17を攻撃しようとした理由はそこにあった。しかし実際にステーション№17が攻撃されることはなかった。
終戦を迎えると連邦軍は多くの人をステーション№17に送り込み、軍事関係の物は徹底的に排除された。やがて連邦軍の多くの人が去ると、宇宙ステーション№17は戦争前の穏やかな姿を取り戻した。
スカイはそれほど大きくはないステーション間連絡船に乗り、シートに座った。エンジンが始動し、微かな振動が伝わってくる。
スチファニーはスカイが想像していたように、いや、それ以上に美しくなっていた。幼い頃の記憶は断片的でしかないが、それでもいくつものスチファニーと過ごした場面を覚えている。自分より幼かったスチファニーはどれほど自分の事を覚えていてくれるのだろうか。
そんなことを思いながらスカイは宇宙ステーション№17へと向かう船の中から、ゆっくりと遠ざかっていくステーション№10の巨大な宇宙ドックを見ていた。
終わり
ヨーロッパでは両軍とも軍備の増強が続き、間もなく大きな戦いが起こるといわれている。
スカイはキャスに言われた、死に急ぐなという言葉を何度も口にしてユウのヨーロッパ行きを思い留まらせようとした。
ユウはダブルドラゴンとの戦いで心に傷を負っていた。
あの時、スカイから敵のFマシーンが出撃したと連絡があり、十分警戒をしていたつもりだった。それなのに一瞬の攻撃でユウのF104は破壊された。さらにとどめを刺す時間は十分にあったはずなのに、敵のFマシーンはそれをしなかった。
戦いの場を何度も経験し、スカイには及ばないにしろ、大抵のパイロットよりもF104を上手く扱えると自負していたユウにとって、それは屈辱的なことだった。敵のFマシーンはユウのF104を子供扱いしているとしか思えてならなかった。
だからこそ、激しい戦闘が行われる地で自分の力を試し、技量を上げて再びあのFマシーンと戦いたい。それがユウの異動を願い出た理由だった。
数週間後にユウの配属転換の連絡が入り、ユウは慌ただしく荷物をまとめてラ・シューを出ていった。
やがて東ヨーロッパで大規模な戦闘が始まった。
Fマシーンの新たな供給は途絶え、スカイたちはルー・ソシア部隊が残していった腕の曲がったF104を修理して使用した。連邦軍はその地域での勢力を維持する気はないようで、ラ・シューはすぐに前線基地としての役割を失い、スカイはあちこちの基地を転々として過ごした。
ヨーロッパでの戦いは凄惨を極め、日々入ってくる情報は宇宙同盟軍にとっていいものではなかった。
やがて数カ月にも及んだヨーロッパで戦闘は同盟軍の敗北という形で終えることとなった。
連邦軍が次々と戦場に投入したダブルドラゴン型の移動要塞は終戦時にほとんどが存在していたが、宇宙同盟軍は数多くのFマシーンを失った。
ヨーロッパでの敗戦の数日後に宇宙同盟軍は地球連邦軍と平和条約を結び、地球上からの撤退を表明したが、実際には同盟軍の敗北だった。
スカイは戦争が終わると退役し、母が一人で暮らす故郷の宇宙ステーション№10に帰った。
ユウは激戦のヨーロッパで何度も死にそうになりながらも生き延び、数々の功績を挙げた。戦争中は戦いが終わったら地球に残って暮らしたいとスカイに語っていたが、結局ユウも生まれ故郷の宇宙ステーション№21に戻っていった。
スカイは宇宙に帰ってからもユウと連絡を取り合い、いつかお互いのステーションを訪ねるという約束をし、その日が来るのを楽しみにして過ごした。
そしてもう一人、スカイには終戦後に連絡を取る人がいた。
父からスチファニーの連絡先を聞き、宇宙に戻ってからスカイはびっくり箱を開けるような気持ちでスチファニーと初めてのコンタクトを取った。宇宙ステーション№17に暮らすスチファニーは突然の連絡に驚いたが、スカイのことは覚えていた。
宇宙ステーション№17は宇宙に暮らす人々が増え、さらに増え続けることを想定して作物を供給する方法を研究する実験棟としての意味合いを持って建造された。狭い場所でいかに効率よく多くの食物を育てられるか。あるいは逆に広大な空間を作ってそこで食物を育てるといった施設があった。
戦争が始まると、その巨大な空間は同盟軍が地上用のFマシーンの動力性能のテストに使ったり、パイロットの操縦訓練の場として使用された。戦争時に連邦軍が宇宙ステーション№17を攻撃しようとした理由はそこにあった。しかし実際にステーション№17が攻撃されることはなかった。
終戦を迎えると連邦軍は多くの人をステーション№17に送り込み、軍事関係の物は徹底的に排除された。やがて連邦軍の多くの人が去ると、宇宙ステーション№17は戦争前の穏やかな姿を取り戻した。
スカイはそれほど大きくはないステーション間連絡船に乗り、シートに座った。エンジンが始動し、微かな振動が伝わってくる。
スチファニーはスカイが想像していたように、いや、それ以上に美しくなっていた。幼い頃の記憶は断片的でしかないが、それでもいくつものスチファニーと過ごした場面を覚えている。自分より幼かったスチファニーはどれほど自分の事を覚えていてくれるのだろうか。
そんなことを思いながらスカイは宇宙ステーション№17へと向かう船の中から、ゆっくりと遠ざかっていくステーション№10の巨大な宇宙ドックを見ていた。
終わり
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