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初出社!
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その探偵社の事務所は西新宿にあった。
電気街のそばのビルの2階に上がると、黒い洒落たドアがあり、壁に金属でできたプレートが貼ってあった。
「F.I.D.A」
フジモト・インターナショナル・ディテクティブ・エージェンシー
の略だ。
フジモトは社長の藤本を取った名前である。
インターフォンを鳴らすと、部長の岩出(いわいで)が扉を開けてくれた。
岩出は体の大きな男で、190センチはあるように見える。
体重も100キロ近くありそうだ。
こんな大きな体で尾行なんてできるのであろうか。
電柱から体がはみ出してしまい、すぐに目標の人物から見つかってしまうのではないかといらぬ心配をした。
「待ってたぞ、よろしくな。」
岩出は私の肩を2回ほど叩いた。
奥の社長室に藤本はいた。
ノックをし、中へ入った。
「本日から勤めさせていただきます、柴田高文と申します。
よろしくお願いします。」
私は藤本に頭を下げた。
藤本は岩出と違って背の低い男であったが、髪の毛をオールバックにし、仕立ての良いスーツを着ていて声は大きく、快活な男であった。
面接官は岩出だったので、藤本に会うのは今日が初めてであった。
「朝早くからご苦労さん。
柴田君は探偵の仕事は初めてだと言ったね。
OJT(新人教育)は佐藤君にお願いしてあるから、いろいろと教えてもらうように。」
「わかりました。
よろしくお願いします」
そうなのだ。今の時刻は午前5時前。
始発の電車に乗り、出社したのだった。
前代未聞の早朝の初出社であったが、探偵は24時間いつでも調査にあたる必要があるとは事前に聞いていた。
私が社長室を出ると、佐藤が目の前で待っていた。
佐藤は30代前半くらいで私より若く見えたが、タイトなスーツを着て細身のネクタイをし、時計もオメガをしていてお洒落が好きな男のようだった。
「柴田さんすね。よろしくお願いしまっす。
まぁOJTと言っても僕の仕事に同伴してもらうだけなので特に緊張しないでください。」
なんだか軽そうな男だなと思った。
この事務所には他に3名のメンバーがいた。
一人は50代半ばのベテラン探偵、
一人は30代半ばの女性の探偵、
もう一人は事務や外部からの電話を担当する20代の女性だった。
ベテラン探偵は外出中であり、30代の女性の探偵は今日は休みのようだった。
その他にも、F.ID.Aは世界各地に現地スタッフを常駐させ、国をまたいでの調査も行なっている。
また、他の国の調査機関とも連携し、その名の通り「インターナショナル」な探偵事務所であった。
「柴田さん行きましょうか。そろそろ時間ですので」
佐藤は私にそう言うと、飲んでいたコーヒーのカップをゴミ箱に捨てた。
ビルの1階のシャッター付きのガレージから、佐藤の運転する事務所の車のスバルWRXに乗り込み、中央自動車道新宿インターから八王子方面へと向かった。
運動性能の良い、速い車が追跡には良いようだ。
途中石川パーキングエリアでトイレ休憩をし、八王子第一出口で高速道路を降りた。
JR八王子駅近くまで行くと、途中で住宅街に入り、私達はコインパーキングに車を停めた。
「ここからすぐのところに目的の家はあります」
と佐藤は言った。
ここに来るまでに、佐藤から現在調査中の案件の内容は聞いていた。
夫が最近毎週のようにゴルフに行くようになった。
会社の上司との付き合いでと言ってはいるが、本当にゴルフに行っているのか疑問に思い始め、妻が調査依頼をしてきたという。
特に妻が不審に思ったのは、先週のゴルフから帰ったあと、ゴルフシューズを確認したが全く汚れていなかったことだった。
そのゴルフシューズは先週新しく下ろしたばかりの物で、泥や芝もスパイクについていなかった。
ラウンド後はエアダスターをし、雑巾で拭く人間も多いようだが、その夫はズボラで、普段も汚れはそのまま残っていることは多かったようだ。
コインパーキングを出て1つ目の角を曲がるとその家はあった。
車庫付きのグレーの壁の1軒屋で、建物は2階建、決して新しい家ではないが、ざっと見たところ50坪以上はありそうな立派な家だった。
午前6時過ぎ、夫が家から出てきた。
妻が教えてくれた通りの時刻だった。
ゴルフバックやシューズの入ったバッグ、その他に手荷物をトランクに入れると、キャスターがついている車庫のシャッターを夫は横にスライドして開けた。
「柴田さん車に戻りましょう」
佐藤と私は急いでコインパーキングに戻り、スバルWRXに乗り込んだ。
夫の運転する白のメルセデスベンツCクラスが車庫から出て、左折した。
水アカの筋が何本も入っていて決して綺麗な車ではなかった。
私達は少し距離を取り、夫の後を追った。
電気街のそばのビルの2階に上がると、黒い洒落たドアがあり、壁に金属でできたプレートが貼ってあった。
「F.I.D.A」
フジモト・インターナショナル・ディテクティブ・エージェンシー
の略だ。
フジモトは社長の藤本を取った名前である。
インターフォンを鳴らすと、部長の岩出(いわいで)が扉を開けてくれた。
岩出は体の大きな男で、190センチはあるように見える。
体重も100キロ近くありそうだ。
こんな大きな体で尾行なんてできるのであろうか。
電柱から体がはみ出してしまい、すぐに目標の人物から見つかってしまうのではないかといらぬ心配をした。
「待ってたぞ、よろしくな。」
岩出は私の肩を2回ほど叩いた。
奥の社長室に藤本はいた。
ノックをし、中へ入った。
「本日から勤めさせていただきます、柴田高文と申します。
よろしくお願いします。」
私は藤本に頭を下げた。
藤本は岩出と違って背の低い男であったが、髪の毛をオールバックにし、仕立ての良いスーツを着ていて声は大きく、快活な男であった。
面接官は岩出だったので、藤本に会うのは今日が初めてであった。
「朝早くからご苦労さん。
柴田君は探偵の仕事は初めてだと言ったね。
OJT(新人教育)は佐藤君にお願いしてあるから、いろいろと教えてもらうように。」
「わかりました。
よろしくお願いします」
そうなのだ。今の時刻は午前5時前。
始発の電車に乗り、出社したのだった。
前代未聞の早朝の初出社であったが、探偵は24時間いつでも調査にあたる必要があるとは事前に聞いていた。
私が社長室を出ると、佐藤が目の前で待っていた。
佐藤は30代前半くらいで私より若く見えたが、タイトなスーツを着て細身のネクタイをし、時計もオメガをしていてお洒落が好きな男のようだった。
「柴田さんすね。よろしくお願いしまっす。
まぁOJTと言っても僕の仕事に同伴してもらうだけなので特に緊張しないでください。」
なんだか軽そうな男だなと思った。
この事務所には他に3名のメンバーがいた。
一人は50代半ばのベテラン探偵、
一人は30代半ばの女性の探偵、
もう一人は事務や外部からの電話を担当する20代の女性だった。
ベテラン探偵は外出中であり、30代の女性の探偵は今日は休みのようだった。
その他にも、F.ID.Aは世界各地に現地スタッフを常駐させ、国をまたいでの調査も行なっている。
また、他の国の調査機関とも連携し、その名の通り「インターナショナル」な探偵事務所であった。
「柴田さん行きましょうか。そろそろ時間ですので」
佐藤は私にそう言うと、飲んでいたコーヒーのカップをゴミ箱に捨てた。
ビルの1階のシャッター付きのガレージから、佐藤の運転する事務所の車のスバルWRXに乗り込み、中央自動車道新宿インターから八王子方面へと向かった。
運動性能の良い、速い車が追跡には良いようだ。
途中石川パーキングエリアでトイレ休憩をし、八王子第一出口で高速道路を降りた。
JR八王子駅近くまで行くと、途中で住宅街に入り、私達はコインパーキングに車を停めた。
「ここからすぐのところに目的の家はあります」
と佐藤は言った。
ここに来るまでに、佐藤から現在調査中の案件の内容は聞いていた。
夫が最近毎週のようにゴルフに行くようになった。
会社の上司との付き合いでと言ってはいるが、本当にゴルフに行っているのか疑問に思い始め、妻が調査依頼をしてきたという。
特に妻が不審に思ったのは、先週のゴルフから帰ったあと、ゴルフシューズを確認したが全く汚れていなかったことだった。
そのゴルフシューズは先週新しく下ろしたばかりの物で、泥や芝もスパイクについていなかった。
ラウンド後はエアダスターをし、雑巾で拭く人間も多いようだが、その夫はズボラで、普段も汚れはそのまま残っていることは多かったようだ。
コインパーキングを出て1つ目の角を曲がるとその家はあった。
車庫付きのグレーの壁の1軒屋で、建物は2階建、決して新しい家ではないが、ざっと見たところ50坪以上はありそうな立派な家だった。
午前6時過ぎ、夫が家から出てきた。
妻が教えてくれた通りの時刻だった。
ゴルフバックやシューズの入ったバッグ、その他に手荷物をトランクに入れると、キャスターがついている車庫のシャッターを夫は横にスライドして開けた。
「柴田さん車に戻りましょう」
佐藤と私は急いでコインパーキングに戻り、スバルWRXに乗り込んだ。
夫の運転する白のメルセデスベンツCクラスが車庫から出て、左折した。
水アカの筋が何本も入っていて決して綺麗な車ではなかった。
私達は少し距離を取り、夫の後を追った。
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