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一章 ノイジーガール?
3 アイドルソング
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俊はあまりSNSをしない。
情報収集の手段の一環としては理解しているが、その精度には疑問があるからだ。
なのでそれに気づいたのは、学校が終わってそのままアルバイトに行き、それも終わって家に帰って一息ついていた時だ。
食事中に、適当にメールやメッセージの整理などをする。
その中でSNSの一つに、新たなフォローがついていた。
別にそれ自体は珍しいことではないのだが、名前がミキであったのだ。
(あの子か?)
期待でも願望でもなく、普通にありうることだと考えて確認する。
メッセージも送られてきていたが、短いものであった。
『曲をききました。かんどうしました』
「平仮名」
少し笑いが漏れたが、内容自体は不快ではない。
スマートフォンではなく、パソコンを使ってメッセージを送る。
『ありがとうございます。歌ってみてくれましたか?』
彼女のボーカルを主体に、他のメンバーをコーラスとして使うので、誰がどこを受け持つかは選択すればいい。
もっともこんなものは、ただの挨拶代わりでしかないのだが。
他の作業をしながら、食事まで終えてしまう。
ついでに音楽も流しながら。集中力が続く限りは、時間は効率よく使わなければいけない。
SNSをあまりしないというのは、かけている時間がないからだ。
ただリアルタイムで流れているニュースを知るには、ちゃんと役に立つ。
その作業中に、またメッセージが流れてくる。
『おねがいがあるのですが、通話できないでしょうか?』
距離感の詰め方が急であるが、ほとんど漢字変換もしていないあたり、向こうはスマートフォンなのだろう。
コミュニケーションに無駄に時間をかけるのは、俊も嫌うところである。
アプリから通話を起動し、電話をかける。
『もしもし、ミキです』
「こんばんわ、サリエリです。お願いというのは?」
『外でお会いできますか?』
「……こちらは構いませんけど、そちらはアイドルをやっているなら、男と会ったりしていいんですか?」
『あ、それは大丈夫だと思うんですけど……え~と、こちらのレッスンスタジオがあるんで、出来ればそこで」
「場所は?」
『あ、渋谷です』
「なら場所は問題ないですが、いつになりますか? こちらもそれなりに予定は詰まっているので」
『あ、う、そうですよね。どこが空いてますかね?』
「逆にそちらの予定を聞いていいですか? こっちで時間を作りますので」
『う、ありがとうございます。ちょっと待ってください。一度切ります』
通話が終わり、俊は少し考える。
これまでの彼女とのやり取りを思い出すが、自分にこうやって積極的に関心を持つ理由は少ない。
それにわざわざ会って話したいということ。
実際にとても忙しい俊が、時間を作る気分になっている。
何かが生まれるというのは、こういうものがきっかけなのかもしれない。
渋谷の表通りから一本入った道に面した、六階建てのビル。
一気に人通りは少なくなるが、別に危険なわけでもない。
時間ぴったりに、俊はそのビルの六階に入っているダンスレッスンスタジオのドアをノックした。
「は~い」
返事があってからドアが開けられると、そこにはメイプルカラーの紫がいた。
「こんにちわ」
「いらっしゃいませ! ……あれ?」
反応の鈍さに、俊は念のためにとかけていたサングラスを外す。
「サリエリさん、ですよね?」
どうやらはっきりと憶えていてはもらっていなかったらしい。
六月の陽気の中で、ダンススタジオは既に充分な冷房が効いていた。
だがそれまでのレッスンの影響か、メンバーの五人は汗だくになっている。
あのような振り付けで、ここまで汗をかくものなのか、俊は疑問に思った。
パーテーションで一応区切られた、応接スペース。
そこで俊と向き合うのは、メイプルカラーの赤、リーダーのルリである。
もっとも他のメンバーも、座ったルリの背後に陣取っているが。
「率直に言いますと、サリエリさんにわたしたちの曲を作ってほしいのと、他のカバーをアレンジしてほしいんです」
お互いの自己紹介が終わった後、ルリは人好きのする笑顔で、真っ向から言ってきた。
「なるほど。じゃあまず予算と納期はどれぐらいですか?」
「え、作ってくれるんですか?」
作ってくれないと思って言って来たのだろうか。
「仕事としてなら、条件次第で受けますけど」
「条件……」
目が泳ぐルリであるが、まさかそんなことも決まっていないのか。
「そもそもこういう依頼は、マネージャーかプロデュースしている人間が持ってくるものだと思っていました」
俊にもごく稀に、サリエリ名義の方には楽曲提供の依頼はある。
条件が折り合わないため、断ることがほとんどであるが。
よく考えればこの場には、他にスタッフらしき姿もない。
つまりこの案件は、彼女たちの独断であるわけか。
ならば予算も納期も、全く分かっていないということだろう。
いや、そもそもそんなことにかける金があるのか。
「マネージャーとかに確認は?」
「してないです」
「それじゃあ話にならない」
だいたい曲を作ったとしても、それを使うかどうかさえ分かっていないではないか。
ネットのサイトもさほど更新頻度は高くなく、メンバーのSNSの方が宣伝は多い。
もっともその中でも、紫色はあまり目立って活動はしていないようであったが。
結局のところ、子供たちが思いつきで話を持ってきた、ということなのだろう。
「お金はほとんど出せないけど、代わりになるものはあります!」
そう言ったルリは、月子の手を引っ張って、自分の横に持ってくる。
「推しのために曲を作って歌ってもらうのって、ファン冥利に尽きると思いませんか!」
「うん?」
なんだか話が変な方向に行きそうである。
やりがい搾取という言葉がある。
好きなことをやっているのだから、報酬が安くても我慢しろ、という意味であると思えばいいだろうか。
今では仕事の内容で自分を成長させるのだ、という自己啓発に近い部分もあったりする。
俊の考えでは、そういうやりがいなどというのは、芸術的な分野でしか成り立たないし、そもそも言われてやりがいなどを出すものではない。
日本の場合は、サラリーマンは多くがこれに捉われているなどとも言われるが、俊にはあまり関係がない。
そもそもまだ人生20年ちょっとしか生きていない人間が、そんなことを深くは考えない。
やりたいことをやるしかないのだ。
それが結局は、一番上達が早い。
そして通用しなかったのならば諦めるしかないが、どこで諦めるかは人による。
俊は少し考えたが、どうも上手く噛み合っていないことに気づいた。
それに彼女たちが、自分とは違う価値観や決まりの中で動いていることも。
「君たちは俺が彼女のファンで、そのためにはボランティアで仕事をする、と?」
「さすがに虫が良すぎますか」
ルリは苦笑しつつも、どこか媚を売るような視線を上手に向けてくる。
そういえばチェキの列もこの子が一番長かったかな、と記憶を探る。どうでもいいと思っていたことだ。
俊はプロフェッショナルなつもりでいる。
プロの仕事というものには、必ず対価が発生する。
しかし創造性の分野においては、このプロの仕事への対価というものが、金ではない場合がある。
「まず俺は、彼女のファンではないし、推しというものでもない」
昨今はよく使われる言葉だが、作詞もする俊としては、ちょっとまだ違和感が残る単語だ。
「彼女の声にインスピレーションを感じたから、もしも歌う仕事をしてるなら、組んでみたかっただけだ。アイドルグループの彼女には興味がない」
そうは言ってみたが、少しやってみたい仕事ではある。
俊はこれまで、プロフェッショナルの精神で曲を作り詞を書いてきた。
それである程度の収入を得ているし、楽曲提供を依頼されたこともある。
だが目にはっきりと見える形で、それを確認したことはない。
「彼女が俺と組んで……そうだな、一日六時間程度を10日ほど歌ってくれるなら、考えないでもない」
「無理です!」
月子の拒否は瞬時に返ってきた。
月子の人生というのは、自分ではどうしようもないものに流されてきた。
それに抗うために、やっと一人で東京に出てきたのだ。
何者かになりたいと思った自分が、やっと手に入れた場所がアイドルという舞台。
だがそれで食べていくのは簡単ではない。
「なんで~。ミキだってかっこいいオリジナル曲やりたいって言ってたじゃん」
そう言われても、月子にも限界があるのだ。
「だって、アルバイトしないと生きていけない」
う、という表情が他のメンバーの顔に浮かんだ。
地下アイドルは食えない。
特に月子などはチェキや物販の売り上げも少なく、むしろアイドルなどしていない方が、生きるのは簡単であったりする。
他のメンバーにしても、アルバイトをしていたり、実家暮らしであったりと、センターのルリは別にしても苦労はしている。
「今ってどんだけやってるんだっけ?」
「新聞配達にお弁当工場、それとポスティング」
「三つかあ」
「ならその分、こちらが金銭を払ってもいい」
月子をよしよししていたが、俊の言葉に一斉に振り返るメンバーである。
元々俊は、ちゃんと報酬を考えて、月子に依頼するつもりであったのだ。
「新聞配達や工場は無理としても、ポスティングはある程度不定期なんじゃないか? その分を賄えるぐらいには」
「え、と、ちなみにどれぐらいを?」
「一日六時間、休憩を一時間取って、小休止を何度か取って、一日……一万でどうだろう?」
「やります!」
これまた瞬時に承諾する月子であった。
10日かかるなら10万円。
時給換算するなら、2000円である。
これだけ割のいいバイトは、なかなかあるものではない。
それにこれは、歌で稼げるものなのだ。
「でもどこでやるんですか? 変なところに連れ込まれると、それも困るんですけど」
そんな重要なところに、しっかりと切り込んできたのはルリであった。
童顔だが実はそれなりに年齢を重ねた彼女は、上手い話には裏があると知っている。
「俺の大学のレッスンスタジオが使えるから、とりあえずそこで基本的なことをやって、それからレコーディングまでするかどうか決める」
「え、そこまでするんですか?」
今時レコーディングなど、質の問題を別にすれば、スマートフォンでもどうにかなったりする。
また彼女たちも、物販用のCDはほとんど時間をかけて作っていない。
地下アイドルにはそんなに金はかけられないのだ。
俊としては月子の歌を試せるなら、後のことは些事ではある。
ただ確認しておかないといけないことはあるのだ。
「そもそも俺が曲を作ったとしても、それを使う許可なんて出るのかな?」
報酬として月子の時間をもらうにしても、使われもしない曲を作るというのは、さすがに疲れる。
「大丈夫です。そもそも今の曲も、やりたい方向性とはちょっと違うし」
「アレンジされた曲の方が絶対に良かったし!」
まあ、あれはそもそも曲の出来自体が悪かったので、良くする余地しかなかった。
「じゃあまず、方向性から考えていこうか」
アイドルソングであるなら、切り貼りでもなんとかなるだろう、と甘く考えている俊であった。
メイプルカラーのメンバーに共通している意識は、もっと強く自分たちを見せ付けたい、というものであった。
なんともふわっとしたものであるが、話を聞いていけば分かる。
「単にカワイイ売りじゃなくて、歌とかダンスをもっと強い印象にしたいわけかな」
「そうそう、そうです」
今は五人全員が座って、俊に圧力をかけてくる。
そんな中で月子だけは、複雑そうな顔をしていたが。
漠然とした印象に、俊は持ってきたノートPCで電波を拾い、アイドルやダンスのあるグループのMVを見せていく。
「さすがにマイケル・ジャクソンレベルは無理だよな? そもそも俺は振り付けは出来ないんだが」
「大丈夫、振り付けはわたしたちが自分でするから」
「マイケル・ジャクソンって名前は聞くけど、こんなダンスはちょっと無理だよね」
「バックダンサーまで上手すぎ」
それはまあ、キング・オブ・ポップと比べるのは無茶であろう。
ダンスとなると、ではどのレベルなのか。
「俺は全然知らないんだが、K-POPの方向性かな?」
「それも違う感じで」
「こうクネクネ踊るんじゃなくって、もっと手とかの動きで雰囲気を作りたいって言うか」
「う~ん、じゃあこういうのも違うのかな? 90年代に短期間で圧倒的に人気が出たグループなんだけど」
「うあ、何これ。日本人グループだよね?」
「若くない?」
「デビュー時は小学生と中学生だったらしい。SPEEDっていうグループで、ボーカルを主に二人が担当し、残りの二人はダンス担当みたいだな」
「でもこれってMVだから、生でどう歌ってるのかは分からないんじゃない?」
「どちらにしろこんなに動くこと出来ないよ」
実のところ俊は、彼女たちのダンスのレベルが分からない。
ライブでも途中から音しか聴いていなかったからだ。あまりライブパフォーマンスには興味のない俊である。朝倉のやらかしは、はっきり記憶に残っている。
ただレッスンを自分たちだけでやっているというところからも、そのレベルはだいたい分からないでもない。
「すごい人数のグループの団体売りもあったし、その前もそこそこの人数でのグループはあったんだな。知らなかった」
俊の守備範囲からは外れているのだ。彼は基本的にアイドル売りをしている音楽には興味がない。
大人数グループのアイドルが集団で発生した。
それらは今もまだ残っている。
ただそれの全盛期は過ぎて、今はアイドルにも個性が求められている。
その中でこうやって、地下アイドルなどという存在も生まれているわけで。
「アイドルって言ったら、ちょっと前にものすごくアニメで流行ったやつがなかったかな?」
「アイドルアニメは強いけど、大流行レベルってなんだろ?」
「確かOP曲が邦楽史上最速で一億PV超えたっていう」
「あ~、あれは曲名はアイドルだけどアイドルアニメじゃなくて芸能界アニメだよ」
「そうなのか」
作品自体は見ていない俊である。
なかなか方向性というのも決まらない。
そもそも今出来ることから、方向性を定めた方がいいのではないか。
「最近はアニメタイアップでヒット曲が出るから、そっちの方向性は……地下アイドルには関係ないな」
「ひどい!」
「ちょっとフォロワー多いからって調子乗ってる!」
「ああ? 俺よりフォロワーの多いアマチュアなんて腐るほどいるんだが」
そんなことを言い合っている間、一人じっくりと画面を見ていた月子は気になるものを見つけた。
「あの、これ何ですか?」
「ん? ああ、これか」
3DCGによるキャラクターの歌とダンス。
確かにこれもアイドルなんだったか、と記憶をたどる俊。
「これ近いんじゃない?」
「ダンスもそこまで複雑じゃないし、曲もかっこいいし、こんな感じのがいい」
「アイドルアニメでこんなのあったっけ?」
「これはアイドルアニメじゃないからな」
俊としてもすっかり候補から除外していた。
「ロボットアニメの中に出てくる架空のアイドルグループだったはずだ」
「ワルキューレ?」
「ああ」
曲の数はけっこう多かったんじゃないか、と俊も思い出さないわけではない。
だが五人と人数が重なっているところも、偶然の一致ではあるが興味深い。
とりあえず方向性は決定した。
音色の方向性は決まったものの、それで作曲とはいかない。
各自がどこまで歌えるのか、それも確認しておかないといけないのだ。
色々と調べている間に、時間もそれなりに経過していた。
ネットや電話で確認できることもあるが、この場にいないと確認が難しいこともある。
どこまで歌えるかを、現場で確認することだ。
「一人ずつ歌っていけばいいかな?」
「そうだな、幸いピアノもあるし」
たまにダンスレッスンで、生ピアノを使ってくれるため、用意されているのだ。
「そっちにギターも持ってきてるみたいだけど?」
「一応持ってきただけで、ピアノの方が得意なんだ」
おかげで荷物が多くなったわけだが。
鍵盤を叩いてみたが、しっかりと調律はしてある。
「おお~」
これだけで歓声が上がるが、普段のレッスン環境はひどいものなのだろう。
それでもアイドルをやっているというのが、どうにも将来につながらないと思う俊である。
「え、わたしたちの曲、全部弾けるの?」
「アレンジしてたらな。そんな難しい曲でもないし」
ただアレンジのしようによっては、曲はいくらでも難しくは出来る。
「じゃあ、わたしから」
リーダーらしくルリが一番手に出てくる。
「キーはこれでいいのかな? 少し上げるか?」
「え? 上げるって?」
「だから、譜面どおりでいいのか、少し上げるか」
メロディーラインを二つ弾いてみると、ルリが目を丸くしていた。
「え、そんなの簡単に出来ることなの?」
「それなりに真剣にやってたらな。普段はキーボードで作曲もしてるし」
まあギターに比べたら難しいかもしれないが。
不思議そうな顔をしているルリを急かして、俊は歌唱力とその将来性にまで思いを馳せる。
まずリーダーのルリ、この子は基礎からかなりしっかりしている。
メインボーカルでいいのだろう。ただ平凡ではある。
それとコーラスしたり、パートを分けたりするのが副リーダーのアンナ。
ただ彼女は、ダンスの方が上手いらしい。
カナエとノンノはアイドル歴も短いらしく、コーラスが主体の使い方をした方が良さそうだ。
実際にCDの中では、二人のソロパートは少なかった。
そしてミキと呼ばれている月子。
ハイトーンが上手く抜けていく。
クリアであり、何か色をつければ、一気に染まって表現の幅が広がりそうだ。
「何か音楽をしてたのか? ちょっとその声は天然じゃないだろう」
「実は津軽三味線の弾くのと唄うのを」
「なるほどなあ。そっちか」
体に柱が一本入っているような歌声だな、と思ったものだ。
もっとも俊は、民謡に関してはさすがに詳しくない。むしろレゲエの基礎教養の方があるかもしれない。
だが、民謡か。
(あ、きっかけが来たか)
創作のインスピレーションというのは、凡人にもそれなりに宿っているものだ。
それをどう作品にまで昇華するかが、才能であるのかもしれない。
情報収集の手段の一環としては理解しているが、その精度には疑問があるからだ。
なのでそれに気づいたのは、学校が終わってそのままアルバイトに行き、それも終わって家に帰って一息ついていた時だ。
食事中に、適当にメールやメッセージの整理などをする。
その中でSNSの一つに、新たなフォローがついていた。
別にそれ自体は珍しいことではないのだが、名前がミキであったのだ。
(あの子か?)
期待でも願望でもなく、普通にありうることだと考えて確認する。
メッセージも送られてきていたが、短いものであった。
『曲をききました。かんどうしました』
「平仮名」
少し笑いが漏れたが、内容自体は不快ではない。
スマートフォンではなく、パソコンを使ってメッセージを送る。
『ありがとうございます。歌ってみてくれましたか?』
彼女のボーカルを主体に、他のメンバーをコーラスとして使うので、誰がどこを受け持つかは選択すればいい。
もっともこんなものは、ただの挨拶代わりでしかないのだが。
他の作業をしながら、食事まで終えてしまう。
ついでに音楽も流しながら。集中力が続く限りは、時間は効率よく使わなければいけない。
SNSをあまりしないというのは、かけている時間がないからだ。
ただリアルタイムで流れているニュースを知るには、ちゃんと役に立つ。
その作業中に、またメッセージが流れてくる。
『おねがいがあるのですが、通話できないでしょうか?』
距離感の詰め方が急であるが、ほとんど漢字変換もしていないあたり、向こうはスマートフォンなのだろう。
コミュニケーションに無駄に時間をかけるのは、俊も嫌うところである。
アプリから通話を起動し、電話をかける。
『もしもし、ミキです』
「こんばんわ、サリエリです。お願いというのは?」
『外でお会いできますか?』
「……こちらは構いませんけど、そちらはアイドルをやっているなら、男と会ったりしていいんですか?」
『あ、それは大丈夫だと思うんですけど……え~と、こちらのレッスンスタジオがあるんで、出来ればそこで」
「場所は?」
『あ、渋谷です』
「なら場所は問題ないですが、いつになりますか? こちらもそれなりに予定は詰まっているので」
『あ、う、そうですよね。どこが空いてますかね?』
「逆にそちらの予定を聞いていいですか? こっちで時間を作りますので」
『う、ありがとうございます。ちょっと待ってください。一度切ります』
通話が終わり、俊は少し考える。
これまでの彼女とのやり取りを思い出すが、自分にこうやって積極的に関心を持つ理由は少ない。
それにわざわざ会って話したいということ。
実際にとても忙しい俊が、時間を作る気分になっている。
何かが生まれるというのは、こういうものがきっかけなのかもしれない。
渋谷の表通りから一本入った道に面した、六階建てのビル。
一気に人通りは少なくなるが、別に危険なわけでもない。
時間ぴったりに、俊はそのビルの六階に入っているダンスレッスンスタジオのドアをノックした。
「は~い」
返事があってからドアが開けられると、そこにはメイプルカラーの紫がいた。
「こんにちわ」
「いらっしゃいませ! ……あれ?」
反応の鈍さに、俊は念のためにとかけていたサングラスを外す。
「サリエリさん、ですよね?」
どうやらはっきりと憶えていてはもらっていなかったらしい。
六月の陽気の中で、ダンススタジオは既に充分な冷房が効いていた。
だがそれまでのレッスンの影響か、メンバーの五人は汗だくになっている。
あのような振り付けで、ここまで汗をかくものなのか、俊は疑問に思った。
パーテーションで一応区切られた、応接スペース。
そこで俊と向き合うのは、メイプルカラーの赤、リーダーのルリである。
もっとも他のメンバーも、座ったルリの背後に陣取っているが。
「率直に言いますと、サリエリさんにわたしたちの曲を作ってほしいのと、他のカバーをアレンジしてほしいんです」
お互いの自己紹介が終わった後、ルリは人好きのする笑顔で、真っ向から言ってきた。
「なるほど。じゃあまず予算と納期はどれぐらいですか?」
「え、作ってくれるんですか?」
作ってくれないと思って言って来たのだろうか。
「仕事としてなら、条件次第で受けますけど」
「条件……」
目が泳ぐルリであるが、まさかそんなことも決まっていないのか。
「そもそもこういう依頼は、マネージャーかプロデュースしている人間が持ってくるものだと思っていました」
俊にもごく稀に、サリエリ名義の方には楽曲提供の依頼はある。
条件が折り合わないため、断ることがほとんどであるが。
よく考えればこの場には、他にスタッフらしき姿もない。
つまりこの案件は、彼女たちの独断であるわけか。
ならば予算も納期も、全く分かっていないということだろう。
いや、そもそもそんなことにかける金があるのか。
「マネージャーとかに確認は?」
「してないです」
「それじゃあ話にならない」
だいたい曲を作ったとしても、それを使うかどうかさえ分かっていないではないか。
ネットのサイトもさほど更新頻度は高くなく、メンバーのSNSの方が宣伝は多い。
もっともその中でも、紫色はあまり目立って活動はしていないようであったが。
結局のところ、子供たちが思いつきで話を持ってきた、ということなのだろう。
「お金はほとんど出せないけど、代わりになるものはあります!」
そう言ったルリは、月子の手を引っ張って、自分の横に持ってくる。
「推しのために曲を作って歌ってもらうのって、ファン冥利に尽きると思いませんか!」
「うん?」
なんだか話が変な方向に行きそうである。
やりがい搾取という言葉がある。
好きなことをやっているのだから、報酬が安くても我慢しろ、という意味であると思えばいいだろうか。
今では仕事の内容で自分を成長させるのだ、という自己啓発に近い部分もあったりする。
俊の考えでは、そういうやりがいなどというのは、芸術的な分野でしか成り立たないし、そもそも言われてやりがいなどを出すものではない。
日本の場合は、サラリーマンは多くがこれに捉われているなどとも言われるが、俊にはあまり関係がない。
そもそもまだ人生20年ちょっとしか生きていない人間が、そんなことを深くは考えない。
やりたいことをやるしかないのだ。
それが結局は、一番上達が早い。
そして通用しなかったのならば諦めるしかないが、どこで諦めるかは人による。
俊は少し考えたが、どうも上手く噛み合っていないことに気づいた。
それに彼女たちが、自分とは違う価値観や決まりの中で動いていることも。
「君たちは俺が彼女のファンで、そのためにはボランティアで仕事をする、と?」
「さすがに虫が良すぎますか」
ルリは苦笑しつつも、どこか媚を売るような視線を上手に向けてくる。
そういえばチェキの列もこの子が一番長かったかな、と記憶を探る。どうでもいいと思っていたことだ。
俊はプロフェッショナルなつもりでいる。
プロの仕事というものには、必ず対価が発生する。
しかし創造性の分野においては、このプロの仕事への対価というものが、金ではない場合がある。
「まず俺は、彼女のファンではないし、推しというものでもない」
昨今はよく使われる言葉だが、作詞もする俊としては、ちょっとまだ違和感が残る単語だ。
「彼女の声にインスピレーションを感じたから、もしも歌う仕事をしてるなら、組んでみたかっただけだ。アイドルグループの彼女には興味がない」
そうは言ってみたが、少しやってみたい仕事ではある。
俊はこれまで、プロフェッショナルの精神で曲を作り詞を書いてきた。
それである程度の収入を得ているし、楽曲提供を依頼されたこともある。
だが目にはっきりと見える形で、それを確認したことはない。
「彼女が俺と組んで……そうだな、一日六時間程度を10日ほど歌ってくれるなら、考えないでもない」
「無理です!」
月子の拒否は瞬時に返ってきた。
月子の人生というのは、自分ではどうしようもないものに流されてきた。
それに抗うために、やっと一人で東京に出てきたのだ。
何者かになりたいと思った自分が、やっと手に入れた場所がアイドルという舞台。
だがそれで食べていくのは簡単ではない。
「なんで~。ミキだってかっこいいオリジナル曲やりたいって言ってたじゃん」
そう言われても、月子にも限界があるのだ。
「だって、アルバイトしないと生きていけない」
う、という表情が他のメンバーの顔に浮かんだ。
地下アイドルは食えない。
特に月子などはチェキや物販の売り上げも少なく、むしろアイドルなどしていない方が、生きるのは簡単であったりする。
他のメンバーにしても、アルバイトをしていたり、実家暮らしであったりと、センターのルリは別にしても苦労はしている。
「今ってどんだけやってるんだっけ?」
「新聞配達にお弁当工場、それとポスティング」
「三つかあ」
「ならその分、こちらが金銭を払ってもいい」
月子をよしよししていたが、俊の言葉に一斉に振り返るメンバーである。
元々俊は、ちゃんと報酬を考えて、月子に依頼するつもりであったのだ。
「新聞配達や工場は無理としても、ポスティングはある程度不定期なんじゃないか? その分を賄えるぐらいには」
「え、と、ちなみにどれぐらいを?」
「一日六時間、休憩を一時間取って、小休止を何度か取って、一日……一万でどうだろう?」
「やります!」
これまた瞬時に承諾する月子であった。
10日かかるなら10万円。
時給換算するなら、2000円である。
これだけ割のいいバイトは、なかなかあるものではない。
それにこれは、歌で稼げるものなのだ。
「でもどこでやるんですか? 変なところに連れ込まれると、それも困るんですけど」
そんな重要なところに、しっかりと切り込んできたのはルリであった。
童顔だが実はそれなりに年齢を重ねた彼女は、上手い話には裏があると知っている。
「俺の大学のレッスンスタジオが使えるから、とりあえずそこで基本的なことをやって、それからレコーディングまでするかどうか決める」
「え、そこまでするんですか?」
今時レコーディングなど、質の問題を別にすれば、スマートフォンでもどうにかなったりする。
また彼女たちも、物販用のCDはほとんど時間をかけて作っていない。
地下アイドルにはそんなに金はかけられないのだ。
俊としては月子の歌を試せるなら、後のことは些事ではある。
ただ確認しておかないといけないことはあるのだ。
「そもそも俺が曲を作ったとしても、それを使う許可なんて出るのかな?」
報酬として月子の時間をもらうにしても、使われもしない曲を作るというのは、さすがに疲れる。
「大丈夫です。そもそも今の曲も、やりたい方向性とはちょっと違うし」
「アレンジされた曲の方が絶対に良かったし!」
まあ、あれはそもそも曲の出来自体が悪かったので、良くする余地しかなかった。
「じゃあまず、方向性から考えていこうか」
アイドルソングであるなら、切り貼りでもなんとかなるだろう、と甘く考えている俊であった。
メイプルカラーのメンバーに共通している意識は、もっと強く自分たちを見せ付けたい、というものであった。
なんともふわっとしたものであるが、話を聞いていけば分かる。
「単にカワイイ売りじゃなくて、歌とかダンスをもっと強い印象にしたいわけかな」
「そうそう、そうです」
今は五人全員が座って、俊に圧力をかけてくる。
そんな中で月子だけは、複雑そうな顔をしていたが。
漠然とした印象に、俊は持ってきたノートPCで電波を拾い、アイドルやダンスのあるグループのMVを見せていく。
「さすがにマイケル・ジャクソンレベルは無理だよな? そもそも俺は振り付けは出来ないんだが」
「大丈夫、振り付けはわたしたちが自分でするから」
「マイケル・ジャクソンって名前は聞くけど、こんなダンスはちょっと無理だよね」
「バックダンサーまで上手すぎ」
それはまあ、キング・オブ・ポップと比べるのは無茶であろう。
ダンスとなると、ではどのレベルなのか。
「俺は全然知らないんだが、K-POPの方向性かな?」
「それも違う感じで」
「こうクネクネ踊るんじゃなくって、もっと手とかの動きで雰囲気を作りたいって言うか」
「う~ん、じゃあこういうのも違うのかな? 90年代に短期間で圧倒的に人気が出たグループなんだけど」
「うあ、何これ。日本人グループだよね?」
「若くない?」
「デビュー時は小学生と中学生だったらしい。SPEEDっていうグループで、ボーカルを主に二人が担当し、残りの二人はダンス担当みたいだな」
「でもこれってMVだから、生でどう歌ってるのかは分からないんじゃない?」
「どちらにしろこんなに動くこと出来ないよ」
実のところ俊は、彼女たちのダンスのレベルが分からない。
ライブでも途中から音しか聴いていなかったからだ。あまりライブパフォーマンスには興味のない俊である。朝倉のやらかしは、はっきり記憶に残っている。
ただレッスンを自分たちだけでやっているというところからも、そのレベルはだいたい分からないでもない。
「すごい人数のグループの団体売りもあったし、その前もそこそこの人数でのグループはあったんだな。知らなかった」
俊の守備範囲からは外れているのだ。彼は基本的にアイドル売りをしている音楽には興味がない。
大人数グループのアイドルが集団で発生した。
それらは今もまだ残っている。
ただそれの全盛期は過ぎて、今はアイドルにも個性が求められている。
その中でこうやって、地下アイドルなどという存在も生まれているわけで。
「アイドルって言ったら、ちょっと前にものすごくアニメで流行ったやつがなかったかな?」
「アイドルアニメは強いけど、大流行レベルってなんだろ?」
「確かOP曲が邦楽史上最速で一億PV超えたっていう」
「あ~、あれは曲名はアイドルだけどアイドルアニメじゃなくて芸能界アニメだよ」
「そうなのか」
作品自体は見ていない俊である。
なかなか方向性というのも決まらない。
そもそも今出来ることから、方向性を定めた方がいいのではないか。
「最近はアニメタイアップでヒット曲が出るから、そっちの方向性は……地下アイドルには関係ないな」
「ひどい!」
「ちょっとフォロワー多いからって調子乗ってる!」
「ああ? 俺よりフォロワーの多いアマチュアなんて腐るほどいるんだが」
そんなことを言い合っている間、一人じっくりと画面を見ていた月子は気になるものを見つけた。
「あの、これ何ですか?」
「ん? ああ、これか」
3DCGによるキャラクターの歌とダンス。
確かにこれもアイドルなんだったか、と記憶をたどる俊。
「これ近いんじゃない?」
「ダンスもそこまで複雑じゃないし、曲もかっこいいし、こんな感じのがいい」
「アイドルアニメでこんなのあったっけ?」
「これはアイドルアニメじゃないからな」
俊としてもすっかり候補から除外していた。
「ロボットアニメの中に出てくる架空のアイドルグループだったはずだ」
「ワルキューレ?」
「ああ」
曲の数はけっこう多かったんじゃないか、と俊も思い出さないわけではない。
だが五人と人数が重なっているところも、偶然の一致ではあるが興味深い。
とりあえず方向性は決定した。
音色の方向性は決まったものの、それで作曲とはいかない。
各自がどこまで歌えるのか、それも確認しておかないといけないのだ。
色々と調べている間に、時間もそれなりに経過していた。
ネットや電話で確認できることもあるが、この場にいないと確認が難しいこともある。
どこまで歌えるかを、現場で確認することだ。
「一人ずつ歌っていけばいいかな?」
「そうだな、幸いピアノもあるし」
たまにダンスレッスンで、生ピアノを使ってくれるため、用意されているのだ。
「そっちにギターも持ってきてるみたいだけど?」
「一応持ってきただけで、ピアノの方が得意なんだ」
おかげで荷物が多くなったわけだが。
鍵盤を叩いてみたが、しっかりと調律はしてある。
「おお~」
これだけで歓声が上がるが、普段のレッスン環境はひどいものなのだろう。
それでもアイドルをやっているというのが、どうにも将来につながらないと思う俊である。
「え、わたしたちの曲、全部弾けるの?」
「アレンジしてたらな。そんな難しい曲でもないし」
ただアレンジのしようによっては、曲はいくらでも難しくは出来る。
「じゃあ、わたしから」
リーダーらしくルリが一番手に出てくる。
「キーはこれでいいのかな? 少し上げるか?」
「え? 上げるって?」
「だから、譜面どおりでいいのか、少し上げるか」
メロディーラインを二つ弾いてみると、ルリが目を丸くしていた。
「え、そんなの簡単に出来ることなの?」
「それなりに真剣にやってたらな。普段はキーボードで作曲もしてるし」
まあギターに比べたら難しいかもしれないが。
不思議そうな顔をしているルリを急かして、俊は歌唱力とその将来性にまで思いを馳せる。
まずリーダーのルリ、この子は基礎からかなりしっかりしている。
メインボーカルでいいのだろう。ただ平凡ではある。
それとコーラスしたり、パートを分けたりするのが副リーダーのアンナ。
ただ彼女は、ダンスの方が上手いらしい。
カナエとノンノはアイドル歴も短いらしく、コーラスが主体の使い方をした方が良さそうだ。
実際にCDの中では、二人のソロパートは少なかった。
そしてミキと呼ばれている月子。
ハイトーンが上手く抜けていく。
クリアであり、何か色をつければ、一気に染まって表現の幅が広がりそうだ。
「何か音楽をしてたのか? ちょっとその声は天然じゃないだろう」
「実は津軽三味線の弾くのと唄うのを」
「なるほどなあ。そっちか」
体に柱が一本入っているような歌声だな、と思ったものだ。
もっとも俊は、民謡に関してはさすがに詳しくない。むしろレゲエの基礎教養の方があるかもしれない。
だが、民謡か。
(あ、きっかけが来たか)
創作のインスピレーションというのは、凡人にもそれなりに宿っているものだ。
それをどう作品にまで昇華するかが、才能であるのかもしれない。
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