26 / 60
第26話 巨人の進撃
しおりを挟む
圧倒的だった。
圧倒的な力だった。
それは暴力ではない。暴力とはもっと、攻撃的な物だ。
攻撃ではなく、単に邪魔な物をどけるような。
そんな単純で、純粋な力だった。
サイクロプスの動作は、その巨体からは想像もできないほど速い。サージに加速の魔法をかけてもらっていなかったら、即座に詰んでいただろう。
しかし攻撃を避けることが出来たとして、それがどうと言うのだろう。
懸命に攻撃をしかけても、こちらは巨人の膝までも届かない。そして巨人の肌は、ギグの戦鎚の一撃を加えられても、それを跳ね返すほどの弾力があった。
「エクスカリバー!」
サージの魔法は空間を断つ。だが巨人の薄皮一枚を傷つける程度の効果しかなかった。
「火球!」
魔力を高めたリアの魔法は、巨人の肌の表面で弾けて消えた。
さんざん魔法で強化したリアの太刀の一撃も、うっすらと巨人の血を流させるに留まった。
だがそれでも痛みを感じたのか、巨人は再び咆哮し、力任せに暴れ出した。
戦棍の一撃で地面が砕け、破片が飛び散った。リアが風呂を作ろうとしても傷つかなかった素材がである。
小さいことが幸いしてか、巨人の武器や手足が直接リアたちを捉えることはない。もちろん加速の魔法の力もある。
巨人は怒った。
そこに神々の知恵はなかったが、力だけはあった。
振り回される戦棍が暴風を呼び、砕かれた地面は石弾となった。とても全てかわせるものではない。
「ああああああっ!」
リアは吠えた。身体強化で、体を打つ石礫にも耐えた。
回りこみ、腱を絶つべく巨人の足首に刃を放つ。
無駄だった。
鋼のような肌は、ほとんど斬撃の威力を吸収し、わずかに血を流させるのみである。
それでもリアは諦めない。こんなこともあろうかと採っておいたヒュドラの毒をためらいなく刃に塗り、何度も同じ箇所に斬撃を加える。
だが効果は分からない。鑑定の魔法が弾かれていた。
「サージ鑑定してくれ!」
「ごめん! 分からない!」
サージの鑑定でも看破できない。堕ちた神々の末裔は、その名にふさわしい異能を持っていた。
その間にも巨人の攻撃は続いていた。
そしてある一撃が、無数の礫を、回避できない範囲でルルーに飛ばす。
そこへカルロスが割り込んだ。盾が歪むほどの衝撃だった。
だがルルーが無事だ。カルロスも腕が痺れただけだ。
「大丈夫ですか!?」
問うカルロスに、ルルーは答えようとした。
答えようとしたのだ。
巨人の腕が振られ、カルロスが吹き飛ばされた。
虫を叩き飛ばすかのような、無造作で苛立った動きだった。
それでも盾は吹き飛び、鎧は歪む一撃だった。
騎士は壁に打ち付けられ、血を吐いた。
ルルーの治癒魔法が飛ぶ。だが歪んだ鎧が肉体の復元を阻んだ。
そこへ巨人の追撃がきた。
ぐしゃり、とカルロスが潰れた。
即死だった。むしろそれが幸いだったろう。
光の粒となりカルロスの体は消え、後には圧縮された鎧が残された。血まみれの鎧だった。
彼の剣はどこに行ったのだろう。
そんなどうでもいいことを、ルルーは考えていた。考えながら、叫んでいた。
よくも。
よくもカルロスを。
完全に頭に血が上っていた。あまり指摘されないが、ルルーは短絡的で、血の気が多い。そうでなければ田舎を出てこなかったし、リアの旅に付いて来なかっただろう。
普段は理性で抑えられている攻撃性が露になる。とにかく目の前のこいつを殺したくてたまらない。それだけを考える。
練り上げられる魔力。構成される術式。
杖を振り上げる。
「白色獄炎!」
この世ならざるほどの威力を持つという上級火魔法。白い炎の蛇が、サイクロプスの胸を打つ。
巨人は吠えた。苦悶の叫びだった。
胸が赤熱された鉱物のように赤くなっていた。
だがそれだけだった。
巨人は己に苦痛を与えた魔法使いを睥睨し、その戦棍を振りかぶった。
「ルルー!」
リアの叫びが届くのと、戦棍が振り下ろされるのが同時だった。
ぐしゃりと肉体が潰れて、杖だけが残った。
圧倒的な力だった。
それは暴力ではない。暴力とはもっと、攻撃的な物だ。
攻撃ではなく、単に邪魔な物をどけるような。
そんな単純で、純粋な力だった。
サイクロプスの動作は、その巨体からは想像もできないほど速い。サージに加速の魔法をかけてもらっていなかったら、即座に詰んでいただろう。
しかし攻撃を避けることが出来たとして、それがどうと言うのだろう。
懸命に攻撃をしかけても、こちらは巨人の膝までも届かない。そして巨人の肌は、ギグの戦鎚の一撃を加えられても、それを跳ね返すほどの弾力があった。
「エクスカリバー!」
サージの魔法は空間を断つ。だが巨人の薄皮一枚を傷つける程度の効果しかなかった。
「火球!」
魔力を高めたリアの魔法は、巨人の肌の表面で弾けて消えた。
さんざん魔法で強化したリアの太刀の一撃も、うっすらと巨人の血を流させるに留まった。
だがそれでも痛みを感じたのか、巨人は再び咆哮し、力任せに暴れ出した。
戦棍の一撃で地面が砕け、破片が飛び散った。リアが風呂を作ろうとしても傷つかなかった素材がである。
小さいことが幸いしてか、巨人の武器や手足が直接リアたちを捉えることはない。もちろん加速の魔法の力もある。
巨人は怒った。
そこに神々の知恵はなかったが、力だけはあった。
振り回される戦棍が暴風を呼び、砕かれた地面は石弾となった。とても全てかわせるものではない。
「ああああああっ!」
リアは吠えた。身体強化で、体を打つ石礫にも耐えた。
回りこみ、腱を絶つべく巨人の足首に刃を放つ。
無駄だった。
鋼のような肌は、ほとんど斬撃の威力を吸収し、わずかに血を流させるのみである。
それでもリアは諦めない。こんなこともあろうかと採っておいたヒュドラの毒をためらいなく刃に塗り、何度も同じ箇所に斬撃を加える。
だが効果は分からない。鑑定の魔法が弾かれていた。
「サージ鑑定してくれ!」
「ごめん! 分からない!」
サージの鑑定でも看破できない。堕ちた神々の末裔は、その名にふさわしい異能を持っていた。
その間にも巨人の攻撃は続いていた。
そしてある一撃が、無数の礫を、回避できない範囲でルルーに飛ばす。
そこへカルロスが割り込んだ。盾が歪むほどの衝撃だった。
だがルルーが無事だ。カルロスも腕が痺れただけだ。
「大丈夫ですか!?」
問うカルロスに、ルルーは答えようとした。
答えようとしたのだ。
巨人の腕が振られ、カルロスが吹き飛ばされた。
虫を叩き飛ばすかのような、無造作で苛立った動きだった。
それでも盾は吹き飛び、鎧は歪む一撃だった。
騎士は壁に打ち付けられ、血を吐いた。
ルルーの治癒魔法が飛ぶ。だが歪んだ鎧が肉体の復元を阻んだ。
そこへ巨人の追撃がきた。
ぐしゃり、とカルロスが潰れた。
即死だった。むしろそれが幸いだったろう。
光の粒となりカルロスの体は消え、後には圧縮された鎧が残された。血まみれの鎧だった。
彼の剣はどこに行ったのだろう。
そんなどうでもいいことを、ルルーは考えていた。考えながら、叫んでいた。
よくも。
よくもカルロスを。
完全に頭に血が上っていた。あまり指摘されないが、ルルーは短絡的で、血の気が多い。そうでなければ田舎を出てこなかったし、リアの旅に付いて来なかっただろう。
普段は理性で抑えられている攻撃性が露になる。とにかく目の前のこいつを殺したくてたまらない。それだけを考える。
練り上げられる魔力。構成される術式。
杖を振り上げる。
「白色獄炎!」
この世ならざるほどの威力を持つという上級火魔法。白い炎の蛇が、サイクロプスの胸を打つ。
巨人は吠えた。苦悶の叫びだった。
胸が赤熱された鉱物のように赤くなっていた。
だがそれだけだった。
巨人は己に苦痛を与えた魔法使いを睥睨し、その戦棍を振りかぶった。
「ルルー!」
リアの叫びが届くのと、戦棍が振り下ろされるのが同時だった。
ぐしゃりと肉体が潰れて、杖だけが残った。
0
あなたにおすすめの小説
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
クラスまるごと異世界転移
八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。
ソレは突然訪れた。
『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』
そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。
…そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。
どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。
…大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても…
そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。
異世界は流されるままに
椎井瑛弥
ファンタジー
貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。
日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。
しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。
これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。
異世界転移したら、神の力と無敵の天使軍団を授かったんだが。
猫正宗
ファンタジー
白羽明星は気付けば異世界転移しており、背に純白の六翼を生やした熾天使となっていた。
もともと現世に未練などなかった明星は、大喜びで異世界の大空を飛び回る。
すると遥か空の彼方、誰も到達できないほどの高度に存在する、巨大な空獣に守られた天空城にたどり着く。
主人不在らしきその城に入ると頭の中にダイレクトに声が流れてきた。
――霊子力パターン、熾天使《セラフ》と認識。天界の座マスター登録します。……ああ、お帰りなさいルシフェル様。お戻りをお待ち申し上げておりました――
風景が目まぐるしく移り変わる。
天空城に封じられていた七つの天国が解放されていく。
移り変わる景色こそは、
第一天 ヴィロン。
第二天 ラキア。
第三天 シャハクィム。
第四天 ゼブル。
第五天 マオン。
第六天 マコン。
それらはかつて天界を構成していた七つの天国を再現したものだ。
気付けば明星は、玉座に座っていた。
そこは天の最高位。
第七天 アラボト。
そして玉座の前には、明星に絶対の忠誠を誓う超常なる存在《七元徳の守護天使たち》が膝をついていたのだった。
――これは異世界で神なる権能と無敵の天使軍団を手にした明星が、調子に乗ったエセ強者を相手に無双したり、のんびりスローライフを満喫したりする物語。
異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~
存在証明
ファンタジー
不慮の事故によって異世界に転生したカイ。異世界でも家族に疎まれる日々を送るがある日赤い瞳の少年と出会ったことによって世界が一変する。突然街を襲ったスタンピードから2人で隣国まで逃れ、そこで冒険者となったカイ達は仲間を探して冒険者ライフ!のはずが…?!
はたしてカイは運命をぶち壊して幸せを掴むことができるのか?!
火・金・日、投稿予定
投稿先『小説家になろう様』『アルファポリス様』
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる