「婚約破棄させてやる……」最低王子が企むも、純粋な公爵令嬢にその手は効かない。

オコムラナオ

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素晴らしい乗り手(タラレッダ視点)

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 パージ爺さんは素晴らしい馬の扱い手だね。

 あっという間に町へ着いちまった。
 それから私が伝えた目的地へ、爺さんは馬を走らせていく。


「この屋敷がそうなのかい?」
「ああ、そうだ。ここがマリルノ様の住まれているお屋敷だよ」

 なんと。立派なお屋敷じゃないか。
 爺さんは送り迎えで何度も見ているだろうが、私は初めてなもんで、ちょっとその大きさにびっくりだよ。
 
 とても控えめな方だから、てっきりあの馬鹿王子とは位の差が大きいもんだと思っていたけれど、屋敷の大きさは大して変わらない気がするね。

 ますます、あんな馬鹿王子にはもったいないって思ってしまうね。


 入口の扉をノックすると、若くてほっそりした使用人が出てきた。ありゃあ、使用人までこんな美人さんなのかい。

「突然申し訳ありません。マリルノ様はいらっしゃいますでしょうか」

 いきなり使用人姿の女が押しかけてきたもんだから、向こうも驚いただろうね。しかし細かいことを話している時間はないよ。

「マリルノ様……」
 使用人のお嬢ちゃんがそう言うと、
「どなたですか?」と玄関の奥から声があった。
 
 ああ、こりゃあマリルノ様のお母様に違いない。
 マリルノ様もそうだけれど、随分と品のある方じゃないか。

「大変失礼致しました。私、ウィスカ・ペドロル第二王子のお屋敷で使用人をしている者でございます」

「ペドロル様の? あら、何の御用かしら」

「第二王子より、リノア・マリルノ様に直接お伝えするよう命じられた言葉がございまして、参上いたしました。急な訪問をお許しください」

 もちろん嘘だけど、ここまで来れば怖いもんなんて何もないよ……!

「まぁ、そうでしたか」

 よかった。納得してくれたみたいだね。

「実はマリルノが、犬の散歩に出かけたまま帰ってきていないのです。私もすぐに戻ってくるものとばかり思っていましたし、本人があまり好みませんから付き添いもやらなかったのです。
 そろそろ帰ってくるとは思うのですが……」

 犬の散歩……?

 私の記憶の中に、何か引っかかるものがあった。
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