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突然……(マリルノ視点)

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手紙が返ってこなくなったアルダタさん。

彼の消息を確かめたいと、パージさん、タラレッダさんにお話しした次の日のことです。

私は午前の授業が終わると、スコッテのところへ行きました。


「ねぇ、スコッテ。このあと、ちょっと時間をいただけませんか」

「なに?」

スコッテはつんけんした様子で答えました。


最近、私とスコッテはあまり良い雰囲気ではありません。

原因はおそらく私にあります。

アルダタさんからの手紙が来なくなってから、私はなんだか不安で、そのことばかり考えてしまっていました。

それを言い訳にしてはいけないのですが、スコッテの話を聞き逃してしまうことも増えて。

長期休暇を一緒に過ごそうと前々からスコッテが話してくれている間などにも、私はずっと上の空でした。


そのせいかは分からないのですが、しばらく前から、昼食を食べるのも別々で。

スコッテは用事があるからと、すぐに教室を出ていってしまうのです。

これまで何でも私に話してくれていたスコッテが、何の用事かも告げずに。


しかし、今日、私はどうしてもスコッテに伝えておかなければならないことがありました。ですから、スコッテに声をかけたのです。

本当は今、あまり雰囲気の良くない状態では頼みたくない話でした。

スコッテを悲しませてしまい、場合によっては怒らせてしまうかもしれない内容だったから。

しかし私はもう決めてしまいました。だから、スコッテには謝るしかありません。


「なに?」と聞き返してきたスコッテに、私はいいました。

「話したいことがあるのです」

スコッテは私の真剣な表情をじっと見て、「わかった」と答えました。

「カフェテリアに行く? 私、お昼は持ってきてるけど」

「私もです」

「そう。じゃあ、どこで話す? 話って、真面目なやつなの」

「そうですね。できれば二人で話せる場所がいいです」

スコッテはしばらく黙っていました。

それから頷くと、

「わかった。じゃあ、ついてきて」

と言って、廊下を歩き始めました。



スコッテについていくと、そこは美術準備室でした。

彼女は迷いなく、その部屋を開けました。

「ここ……使ってもいいのですか?」

私は彼女に尋ねました。

私の知っている限りスコッテは、美術部でも美術委員でもありません。芸術の選択科目で絵画を選択してこそいましたが。


「うん。ここ、人来ないから」とスコッテは言いました。

『もしかしたら、最近、ずっとここに来ていたのかも』

その言葉を聞いて、私はそう感じました。

彼女が一人で過ごしたいと考えていたのならまだ良いですが、私と一緒にいたくないという気持ちで、ここで一人、昼食をとっていたのだしたら。

そう考えると、私の胸はずきりと痛みました。


「それで、話っていうのは?」

私たちは美術準備室にあった段差に腰かけました。

スコッテはやはり淡々とした調子で、私に尋ねました。

私は正直に話すことに決めました。

「ごめんなさい。長期休暇なのですが、一緒に過ごせないかもしれません」

私は唇を噛みしめました。

「本当にごめんなさい」


私はスコッテの顔が見られませんでした。顔の上から、ふぅと息を吐く音が聞こえました。

「いいよ。なんかそんな気がしてた」

スコッテはさばさばした口調でそう言いました。

でも短くない付き合いでしたから、私には痛いほど伝わってきました。

口調ほど、スコッテが平気であるはずがないということ。


「話って、それだけ?」

「そう、ですけど……でも」

このままではいけないと、私は思いました。スコッテに、何とか話を聞いてもらわなければ。


今日、学園の授業が終わったら、私はそのまま、アルダタさんがいるであろうナテナに向かうことを決めていたのです。

パージさんにお願いしたこと。それは、私もナテナへ、アルダタさんのところへ連れていってください、というものでした。


学園の長期休暇までには、あと二日ほど日があります。

しかし私はその二日を待つことができず、すぐに向かうことにしたのです。

既に、お母様には許可を取りました。お母様は私が学校を休むということにも反対せず、「マリルノのやりたいようになさい」と、学園に出す欠席のための申請書にサインをしてくださいました。


そういうわけで、私はスコッテに謝らなければなりません。

長期休暇が終わるまでには帰ってくるつもりですが、いつ帰ってこられるか分からないため、一緒に旅行へ行くのが難しくなりそうなのです。

直前で断るのはとても心苦しいですが、もし今の気持ちのままスコッテと出かけたとしても、心から楽しむことができず、結局スコッテに迷惑をかけてしまうことは明白でした。


私はスコッテに、ナテナに向かわなければならないこと、そしてその理由について必死で説明しました。

ナテナに大切なひとがいて、その人と手紙のやり取りをしていたこと。

それが途絶えてしまったことで、胸騒ぎがするのだということ。

彼に何かあったのではないかと心配で、他のことが手につかなくなってしまっているということ。



スコッテは私の話を、最後まで静かに聞いてくれました。

私は顔を上げ、スコッテの表情を窺いました。


「……」

言葉を失いました。

スコッテは、涙を流していました。
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