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お料理だー♪
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調理器具や薪代わりとなる魔道具やらを購入した私は、その後クーリヤさんと少しお話をしてから家に帰った。
家に着いた私は、調理場にする予定だった場所を【迷宮創造】でちゃちゃっと弄る。
高さは私が使いやすい高さにするとして、鍋を置ける場所は二箇所でいいかな……
その下に薪代わりである火を発する魔道具を設置。定期的に魔石を交換してあげればいいだけだから楽だよね!
他にも水を出してくれる魔道具も購入したので、それを流し台にセットして……っと、こんなもんかなー。
準備ができたら、レッツクッキング! って、いきたい所だけど、今まで肉を焼いて食べるくらいしかしてこなかった私に料理ができるか凄く…凄く不安だ……
なので簡単に作ろう。シンプルにっ!
まずは今日獲ってきたトカゲのお肉をそのままパクリ。
もぐもぐ……うん、毒は無さそうだし私以外も食べられるね。
毒味したトカゲ肉に塩胡椒で下味をつけてから、鍋でジューっと焼き目を付ける。
焦げ付かないように気をつけてーっと……アンガスさんが言うには焦げ付き難くなる加工をしてあるらしいけど、過信しすぎないようにしとかないとね。
集落内で採れた葉野菜や根菜やトマトみたいなモノをザクザクーと切っておいて、肉に焼き目がついたら野菜を鍋に投入っ!
トマトっぽいヤツから旨味たっぷりの水分が出てくるし、水は少しだけ追加ー
最後に塩と胡椒で味を整えたら、トマトスープもどきの完成っ!
完成したけれど物足りない感があるなぁ……塩と胡椒だけじゃ、こんなもんかな?
コンソメの素とかあれば、また違うんだろうけど……
あと野菜が想像していた味と違うってのも、コレじゃない感を強くさせてるんだと思うんだよね。
見た目との違和感が少なからずあるんだよねー……
「あら? 良い匂いがするわね」
「あ、母さんおかえりなさい」
「ただいま、シーちゃん。あら…この匂いは……シーちゃん料理してるの?」
「母さん達の口に合うかはわからないけどねー」
実は料理をする為の準備をしていた、というのは母さん達には内緒にしていたんだ。
驚かせたかったからね!
「シーちゃんが作った料理なら、なんでも美味しいに決まってるわ! もう料理は出来たの? ああもぅ! ガイアスなんか放っておいて先に食べてしまおうかしらっ」
「さすがにそれは父さんが可哀想だって……」
「娘の手料理があると言うのに、なんで早く帰ってこないのガイアスは……」
「母さん、さすがにそれは無茶苦茶だよ……」
というか、そんなに期待されるとプレッシャーがっ……!
物足りなさはあるものの私は美味しいと感じた。けれど……これが竜である母さん達にとっての美味しいかは不安しかないんだよね。
ああー……父さんに早く帰って来て欲しいような、欲しくないような……
とりあえず魔物肉を焼いただけのヤツも用意しておこーっと。
「これがシラハの手料理か! 美味いぞ!!」
「ええ……それに、これなら野菜も食べられそうだわ」
「うむ! うむ! こうやって食卓を囲むというのも良いモノだな! 美味い!」
「美味しく食べてもらえて良かったぁ~……って、当たり前のように居ますけど、マグナスさんは他の人から貰った食事があるじゃないですか……」
「一人で食うメシは味気ない! これはお前達が来てから知った事だがな!」
なんて追い出し難くなる事を言うんだ……
そもそもマグナスさんは敬われ過ぎている気がする。こんな人なのに……
今の生活が出来ているのがマグナスさんのおかげだとしても、皆ももう少しくらい気軽に接してあげればいいのに。
「本来ならシラハの手料理は我とレティーツィアだけの物だが、シラハの手料理が食べられたのは、マグナスが作った集落のおかげとも言えるからな……。特別に食わせてやっているが少しは遠慮を……待て追加で食うな!」
「甘いぞガイアス! こういう場では早い者勝ちと相場は決まっている!」
「二人とも煩いわ。もう少し静かに食べられないの?」
言い争う二人を注意しながら、母さんがトマトスープもどきをおかわりしていく。
しれっとおかわりしてるけど、それ三杯目だよ。
まぁ、美味しく食べてくれてるなら私としては嬉しいんだけどね。もぐもぐ……
「ぐぬぉー最後の肉がぁ!」
「俺とガイアスが争っている間に無くなっているとは……!」
「シーちゃん、ご馳走様」
初のお料理は美味しいと言って食べてもらえたから成功だね!
毎日作るとなると献立が大変だろうけど、三日坊主にならないように頑張ろう……!
初の手料理を振る舞った翌日。
私は今日もリューダスさん達と手合わせをしてから、スキル練習&食糧調達として単独行動中である。
今日は雪原に出て来た。
森の中も良いけれど、遮蔽物のない開放感のある一面真っ白な雪原も見ていて楽しい。
日差しが雪に反射して眩しいっ!
まだ誰にも踏まれていない雪に私の足跡をつけながら歩いていると、私の匂いを追って来たのかスノーウルフが後方から迫ってくる。
スノーウルフの数は3匹。毛並みは白いからヨークに似ているけど、ヨークの方が大きいね。
今回はヨーク無しで、私一人で戦おう。
まずは【迷宮領域拡大】を使って半径十メートルくらいを私の領域にする。
やっぱり、これは燃費わるいなぁ……
そしてスノーウルフ達が私の領域内に入って来たら、お次は【影針】をスノーウルフ達に向かって放つ!
「ガゥッ!?」
【影針】が2匹の影を縫い止めた。
1匹はすんでのところで回避したね。
【影針】や【潜影】は私の領域内であれば、陽の光を気にせずに使える……というのが最近になって解った。
これなら制限を気にせずに使えるから凄く助かるんだよね。
まぁ、【迷宮領域拡大】を使うと魔力の流れを察知できる相手もいるから完璧ではないけれど、使い勝手が良くなったのは確かだ。
とりあえず2匹は動けないので無視して、避けたスノーウルフを目で追いかけながら【贄魂喰ライ】を発動させる。
私の中から出てきた黒い靄がスノーウルフに纏わりつく。
「――ッ?!」
黒い靄が纏わりついてすぐに異変を感じたらしいスノーウルフが飛び退いた。
見えてはいないみたいだけど、やっぱり違和感はあるんだなぁ。
なのでうまく捕まえられないスノーウルフを【竜鱗(剣)】を使って牽制する。
【龍紫眼】を使えば簡単に動きは止められるけど、これも練習練習っ
竜鱗で一瞬動きを止めたスノーウルフに肉薄して【鎌撫】を使いながら、腕を振るったり蹴りを放つ。
そうして幾つもの傷をつけたスノーウルフが、血で雪を汚しながら私を睨む。
私はスノーウルフから目を逸らさずに【血液操作】のスキルを発動させた。
「ギャウ?!」
スノーウルフが驚いたような声を上げる。
そりゃ雪の中からいくつも赤い棘が伸びてきて、自分の体を串刺せば誰でも驚くよね。
私の使う【血液操作】は、相手の体から零れ落ちて、尚且つ私の領域内であればその血液も扱う事ができるのだ。
【迷宮領域拡大】は燃費が悪いだけに、その中で出来ることは多いらしい。
沢山の可能性を秘めているみたい!
それを検証するのは楽しい。相手にさせられる魔物はたまったものじゃないだろうけどね。
そして血の棘や【影針】を使って動けなくなっているスノーウルフ達に改めて【贄魂喰ライ】を使っていく。
黒い靄がスノーウルフを包み込むと、次第にスノーウルフ達から生気が失われていく。
意識が無くなったと思われる状態から、さらに魔力を奪っていくとやがて死に至る。
それを目の前で見ていると、自分が何度か経験した魔力枯渇がどれほど危険だったのかがよく分かる。
今度からは魔力が無くならないように気をつけよう。そうしよう。
そうだ、今度ルミーナさんが来たら忘れずに魔力回復薬を買おう。
なんだかんだで忘れちゃうから心のメモに書き込み書き込み……
そして仕留めたスノーウルフ達の尻尾を両手で掴んでお持ち帰り~
1匹は持てないのでヨークを呼び出して、咥えて運んでもらう。
「ありがとね、ヨーク」
「わふん!」
尻尾をふりふりさせながら返事をするヨーク。
返事をするものだから咥えていたスノーウルフがポトリと口から溢れ落ちる。
「くぅん……」
それを尻尾をへんにょりさせながら咥え直すヨークが、とってもラブリー。
くぅ……撫でてあげたいけど、お家に帰るまでは我慢我慢。
あ、シリューに頼んで全部運んでもらうのもアリだったかも。
今度、荷物が多くなっちゃった時は、そうしてあげよう。
集落に入ると、クーリヤさんが畑に座って何か作業をしていた。
「クーリヤさん」
「やっほーシラハ」
「クーリヤさん、畑仕事お疲れ様です」
「シラハの方こそ狩りしてきたんでしょー? お疲れ様ー」
私がクーリヤさんと話をしていると、トテトテと男の子が歩み寄って来てクーリヤさんの服を引っ張る。
「ねーちゃん、仕事サボっちゃダメ」
「あー……スー。ごめんごめん」
「ごめんね、スヴェンくん。私がお姉さんに話しかけちゃったから……」
「シラハねーちゃんが声かけなかったら、ねーちゃんの方から話しかけてただろうから謝らなくていい」
この子はスヴェンくん。クーリヤさんの弟だ。
私が家から外に出入りする辺りに畑を持っているから、良くこうやって話すんだよ。
そんなスヴェンくんは、私が持っているスノーウルフに視線が釘付けだ。
育ち盛りだからねー
「よかったら、1匹要ります?」
「いいの?!」
「いつもゴメンねー。また今度野菜持っていくからー」
「クーリヤさんちの野菜美味しいですからね、楽しみにしてます」
「うんうん。それで悪いんだけどー……」
「家まで運んでおくんで、クーリヤさんちのお母さんに渡しておけば良いんですよね?」
「うん、よろしくー」
「シラハねーちゃん、ありがとなー!」
まだ畑仕事が残っているスヴェンくんとクーリヤさんと別れる。
姿が見えなくなるまでスヴェンくんがブンブンと手を振っていた。お肉嬉しいんだろうなぁー
その後クーリヤさんの家に行って、あまり傷のついてないスノーウルフを置いて家に帰る。
さぁーて……今日の晩御飯は何を作ろうかなー!
//////////////////////////////////////////////////////
後書き
シラハ「なんか料理してるところ、あっさりしてるね。もっと色々作るのかと思ってたよ」
狐鈴「まぁ調味料が色々あるわけじゃないしねー。あと私が料理得意じゃない、というのも理由の一つだね!」
シラハ「得意じゃないのに、なんで料理の話題を出したのさ……」
狐鈴「シラハの女子力向上の為にっ! あと家庭的なところも見せておこうかと……」
シラハ「そんな気遣いができたなんて……」
狐鈴「い、いつもシラハのこと気遣ってるしっ!」
シラハ「へー…色々酷い目に遭わされてる気がするけどなぁ……。というかこの先、狐鈴の料理の腕が上達しなきゃ私の女子力も上達しないって事?」
狐鈴「次に料理の話が出来るのは、何百話後の話だろうねー」
シラハ「すでにやる気無さそう!」
家に着いた私は、調理場にする予定だった場所を【迷宮創造】でちゃちゃっと弄る。
高さは私が使いやすい高さにするとして、鍋を置ける場所は二箇所でいいかな……
その下に薪代わりである火を発する魔道具を設置。定期的に魔石を交換してあげればいいだけだから楽だよね!
他にも水を出してくれる魔道具も購入したので、それを流し台にセットして……っと、こんなもんかなー。
準備ができたら、レッツクッキング! って、いきたい所だけど、今まで肉を焼いて食べるくらいしかしてこなかった私に料理ができるか凄く…凄く不安だ……
なので簡単に作ろう。シンプルにっ!
まずは今日獲ってきたトカゲのお肉をそのままパクリ。
もぐもぐ……うん、毒は無さそうだし私以外も食べられるね。
毒味したトカゲ肉に塩胡椒で下味をつけてから、鍋でジューっと焼き目を付ける。
焦げ付かないように気をつけてーっと……アンガスさんが言うには焦げ付き難くなる加工をしてあるらしいけど、過信しすぎないようにしとかないとね。
集落内で採れた葉野菜や根菜やトマトみたいなモノをザクザクーと切っておいて、肉に焼き目がついたら野菜を鍋に投入っ!
トマトっぽいヤツから旨味たっぷりの水分が出てくるし、水は少しだけ追加ー
最後に塩と胡椒で味を整えたら、トマトスープもどきの完成っ!
完成したけれど物足りない感があるなぁ……塩と胡椒だけじゃ、こんなもんかな?
コンソメの素とかあれば、また違うんだろうけど……
あと野菜が想像していた味と違うってのも、コレじゃない感を強くさせてるんだと思うんだよね。
見た目との違和感が少なからずあるんだよねー……
「あら? 良い匂いがするわね」
「あ、母さんおかえりなさい」
「ただいま、シーちゃん。あら…この匂いは……シーちゃん料理してるの?」
「母さん達の口に合うかはわからないけどねー」
実は料理をする為の準備をしていた、というのは母さん達には内緒にしていたんだ。
驚かせたかったからね!
「シーちゃんが作った料理なら、なんでも美味しいに決まってるわ! もう料理は出来たの? ああもぅ! ガイアスなんか放っておいて先に食べてしまおうかしらっ」
「さすがにそれは父さんが可哀想だって……」
「娘の手料理があると言うのに、なんで早く帰ってこないのガイアスは……」
「母さん、さすがにそれは無茶苦茶だよ……」
というか、そんなに期待されるとプレッシャーがっ……!
物足りなさはあるものの私は美味しいと感じた。けれど……これが竜である母さん達にとっての美味しいかは不安しかないんだよね。
ああー……父さんに早く帰って来て欲しいような、欲しくないような……
とりあえず魔物肉を焼いただけのヤツも用意しておこーっと。
「これがシラハの手料理か! 美味いぞ!!」
「ええ……それに、これなら野菜も食べられそうだわ」
「うむ! うむ! こうやって食卓を囲むというのも良いモノだな! 美味い!」
「美味しく食べてもらえて良かったぁ~……って、当たり前のように居ますけど、マグナスさんは他の人から貰った食事があるじゃないですか……」
「一人で食うメシは味気ない! これはお前達が来てから知った事だがな!」
なんて追い出し難くなる事を言うんだ……
そもそもマグナスさんは敬われ過ぎている気がする。こんな人なのに……
今の生活が出来ているのがマグナスさんのおかげだとしても、皆ももう少しくらい気軽に接してあげればいいのに。
「本来ならシラハの手料理は我とレティーツィアだけの物だが、シラハの手料理が食べられたのは、マグナスが作った集落のおかげとも言えるからな……。特別に食わせてやっているが少しは遠慮を……待て追加で食うな!」
「甘いぞガイアス! こういう場では早い者勝ちと相場は決まっている!」
「二人とも煩いわ。もう少し静かに食べられないの?」
言い争う二人を注意しながら、母さんがトマトスープもどきをおかわりしていく。
しれっとおかわりしてるけど、それ三杯目だよ。
まぁ、美味しく食べてくれてるなら私としては嬉しいんだけどね。もぐもぐ……
「ぐぬぉー最後の肉がぁ!」
「俺とガイアスが争っている間に無くなっているとは……!」
「シーちゃん、ご馳走様」
初のお料理は美味しいと言って食べてもらえたから成功だね!
毎日作るとなると献立が大変だろうけど、三日坊主にならないように頑張ろう……!
初の手料理を振る舞った翌日。
私は今日もリューダスさん達と手合わせをしてから、スキル練習&食糧調達として単独行動中である。
今日は雪原に出て来た。
森の中も良いけれど、遮蔽物のない開放感のある一面真っ白な雪原も見ていて楽しい。
日差しが雪に反射して眩しいっ!
まだ誰にも踏まれていない雪に私の足跡をつけながら歩いていると、私の匂いを追って来たのかスノーウルフが後方から迫ってくる。
スノーウルフの数は3匹。毛並みは白いからヨークに似ているけど、ヨークの方が大きいね。
今回はヨーク無しで、私一人で戦おう。
まずは【迷宮領域拡大】を使って半径十メートルくらいを私の領域にする。
やっぱり、これは燃費わるいなぁ……
そしてスノーウルフ達が私の領域内に入って来たら、お次は【影針】をスノーウルフ達に向かって放つ!
「ガゥッ!?」
【影針】が2匹の影を縫い止めた。
1匹はすんでのところで回避したね。
【影針】や【潜影】は私の領域内であれば、陽の光を気にせずに使える……というのが最近になって解った。
これなら制限を気にせずに使えるから凄く助かるんだよね。
まぁ、【迷宮領域拡大】を使うと魔力の流れを察知できる相手もいるから完璧ではないけれど、使い勝手が良くなったのは確かだ。
とりあえず2匹は動けないので無視して、避けたスノーウルフを目で追いかけながら【贄魂喰ライ】を発動させる。
私の中から出てきた黒い靄がスノーウルフに纏わりつく。
「――ッ?!」
黒い靄が纏わりついてすぐに異変を感じたらしいスノーウルフが飛び退いた。
見えてはいないみたいだけど、やっぱり違和感はあるんだなぁ。
なのでうまく捕まえられないスノーウルフを【竜鱗(剣)】を使って牽制する。
【龍紫眼】を使えば簡単に動きは止められるけど、これも練習練習っ
竜鱗で一瞬動きを止めたスノーウルフに肉薄して【鎌撫】を使いながら、腕を振るったり蹴りを放つ。
そうして幾つもの傷をつけたスノーウルフが、血で雪を汚しながら私を睨む。
私はスノーウルフから目を逸らさずに【血液操作】のスキルを発動させた。
「ギャウ?!」
スノーウルフが驚いたような声を上げる。
そりゃ雪の中からいくつも赤い棘が伸びてきて、自分の体を串刺せば誰でも驚くよね。
私の使う【血液操作】は、相手の体から零れ落ちて、尚且つ私の領域内であればその血液も扱う事ができるのだ。
【迷宮領域拡大】は燃費が悪いだけに、その中で出来ることは多いらしい。
沢山の可能性を秘めているみたい!
それを検証するのは楽しい。相手にさせられる魔物はたまったものじゃないだろうけどね。
そして血の棘や【影針】を使って動けなくなっているスノーウルフ達に改めて【贄魂喰ライ】を使っていく。
黒い靄がスノーウルフを包み込むと、次第にスノーウルフ達から生気が失われていく。
意識が無くなったと思われる状態から、さらに魔力を奪っていくとやがて死に至る。
それを目の前で見ていると、自分が何度か経験した魔力枯渇がどれほど危険だったのかがよく分かる。
今度からは魔力が無くならないように気をつけよう。そうしよう。
そうだ、今度ルミーナさんが来たら忘れずに魔力回復薬を買おう。
なんだかんだで忘れちゃうから心のメモに書き込み書き込み……
そして仕留めたスノーウルフ達の尻尾を両手で掴んでお持ち帰り~
1匹は持てないのでヨークを呼び出して、咥えて運んでもらう。
「ありがとね、ヨーク」
「わふん!」
尻尾をふりふりさせながら返事をするヨーク。
返事をするものだから咥えていたスノーウルフがポトリと口から溢れ落ちる。
「くぅん……」
それを尻尾をへんにょりさせながら咥え直すヨークが、とってもラブリー。
くぅ……撫でてあげたいけど、お家に帰るまでは我慢我慢。
あ、シリューに頼んで全部運んでもらうのもアリだったかも。
今度、荷物が多くなっちゃった時は、そうしてあげよう。
集落に入ると、クーリヤさんが畑に座って何か作業をしていた。
「クーリヤさん」
「やっほーシラハ」
「クーリヤさん、畑仕事お疲れ様です」
「シラハの方こそ狩りしてきたんでしょー? お疲れ様ー」
私がクーリヤさんと話をしていると、トテトテと男の子が歩み寄って来てクーリヤさんの服を引っ張る。
「ねーちゃん、仕事サボっちゃダメ」
「あー……スー。ごめんごめん」
「ごめんね、スヴェンくん。私がお姉さんに話しかけちゃったから……」
「シラハねーちゃんが声かけなかったら、ねーちゃんの方から話しかけてただろうから謝らなくていい」
この子はスヴェンくん。クーリヤさんの弟だ。
私が家から外に出入りする辺りに畑を持っているから、良くこうやって話すんだよ。
そんなスヴェンくんは、私が持っているスノーウルフに視線が釘付けだ。
育ち盛りだからねー
「よかったら、1匹要ります?」
「いいの?!」
「いつもゴメンねー。また今度野菜持っていくからー」
「クーリヤさんちの野菜美味しいですからね、楽しみにしてます」
「うんうん。それで悪いんだけどー……」
「家まで運んでおくんで、クーリヤさんちのお母さんに渡しておけば良いんですよね?」
「うん、よろしくー」
「シラハねーちゃん、ありがとなー!」
まだ畑仕事が残っているスヴェンくんとクーリヤさんと別れる。
姿が見えなくなるまでスヴェンくんがブンブンと手を振っていた。お肉嬉しいんだろうなぁー
その後クーリヤさんの家に行って、あまり傷のついてないスノーウルフを置いて家に帰る。
さぁーて……今日の晩御飯は何を作ろうかなー!
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シラハ「なんか料理してるところ、あっさりしてるね。もっと色々作るのかと思ってたよ」
狐鈴「まぁ調味料が色々あるわけじゃないしねー。あと私が料理得意じゃない、というのも理由の一つだね!」
シラハ「得意じゃないのに、なんで料理の話題を出したのさ……」
狐鈴「シラハの女子力向上の為にっ! あと家庭的なところも見せておこうかと……」
シラハ「そんな気遣いができたなんて……」
狐鈴「い、いつもシラハのこと気遣ってるしっ!」
シラハ「へー…色々酷い目に遭わされてる気がするけどなぁ……。というかこの先、狐鈴の料理の腕が上達しなきゃ私の女子力も上達しないって事?」
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