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東大から始まる異世界転生

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僕の名前は山田太郎。

ごく普通のサラリーマンの家に産まれ、ごく普通に育った、ごく普通の大学生だ。

ただ一つ人に自慢できる事と言えば、この国で一番とされる大学の試験に合格をした事だ。

通学には片道2時間程かかるけど、自宅から通学できる事には恵まれている方だと感謝している。

まだ日の出からそんなにたっていないはずだけど、今朝は朝日が一段と眩しい。

『朝日ではありません。』
光の中から誰かがしゃべった。

『貴方を異世界に転生します。』
「!?」

これって強制拉致だよね。
僕は普通の生活がしたいだけなのに。

下手なことを言って神罰でも食らったら嫌だなあ、と思いつつも、不満が心をよぎる。

産まれた家は王都に程近い中規模の街の一般家庭のようだった。
質素なところがなんだか落ち着く。

体の小さいうちは家の仕事を手伝いながら、家にあった貴重な本で読み書きを覚える。

当たり前だが計算の出来た僕は、程なくして商人のところで働くようになり、そこでこの国の地理、歴史、法律、経済、有力者など出来る限りの情報を収集し、頭に叩き込んだ。

暗記は根気。やるかやらないかだ。
継続は力なり。この知識が役に立つ時がいつかきっと来る。

「王都で文官の試験を受けてみないかい?」
知り合いの商人経由で士官のお誘いがあった。

「平民が貴族になることは10年に一度も無いけれど、君なら一代限りの名誉男爵になれるかもしれないよ。」

資格は大事。誰かがそう言っていた気がする。
良い機会だし、取り敢えず受けてみるか。

地理、歴史、法律、経済、計算・・・、
答えの決まっている問題なんて間違えようがない。

次は、行政や経済の問題点?
論文形式もあるのか。これは面白そうだ。日本とは国の前提が違うから、いろいろ新しい思い付きが頭にひらめく。

人間は考える葦である。
フランスの有名な哲学者・パスカルの言葉だっけか。

そして、とても偉い人がわざわざ家にやって来た。

「素晴らしい!過去最高の得点だよ。論述での数々の改善案も革新的だが現実的で良くできている。」

「今すぐにでも王都に来て、私の右腕となって欲しい。」

調子にのったら駄目だ。

こんなの現代人なら誰にだって当たり前に出来る事だよね。

僕は目立たないように気を付けながら、今日も異世界で普通の生活を目指す。
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