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アイドルから始まる異世界転生

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私の名前は神田聖女。永遠の18歳よ。

今夜のディナーパーティーも勿論、大盛況!
そしてステージは今、まさに最高潮!

次の曲はいよいよ皆がお待ちかねの・・・
全てのスポットライトが一斉に私を照らす。
嗚呼、この瞬間のために私は生きている!

『スポットライトではありません。』
光の中から誰かがしゃべった。

『貴方を異世界に転生します。』
「!?」

気付いたら異世界に赤子として転生していた。
「!!」
「神様ありがとうございます!」
「一生あなた様を崇めさせて頂きます!!」

『!?』

若さって本当に素晴らしい!
乾燥した肌。隠せない皺に弛み。仮面のように塗りたくった化粧をしていたあの頃がまるで嘘のようだわ。



私は言葉を覚えるとともに神様に感謝の言葉を唱え、歩きを覚えるとともに神殿に足しげく通うようになっていた。

そして神殿の前では未来のアイドル活動に備えて歌の練習をし、躍りの練習もした。真剣に、そして命懸けで。だって私はプロだから。

ここは私のステージ。私だけのステージ。
集中力が高まり、私は自然とトランス状態に入る。
・・・

「聖女様だ。」
「聖女様が祝詞を唱えていらっしゃる。」
「聖女様が神楽を舞っていらっしゃる。」
「聖女様!聖女様!」

気が付くと周りは観衆で満たされ、
いつの間にか親衛隊が出来ていた。

「聖女様は素晴らしいお方なのだが、見た目がもう少しましだったらなあ~」
「しーっ!」

なんですと!?

産まれた世界は、まるで古代中国のような街並みだった。そして料理が中華ソックリ。とても美味しいのだけれども、とにかく油っこい。

両親も周りの人達も、良く言ってポッチャリ系、貫禄タップリ。有り体に言って太っている。

だから体型には十分過ぎるほど注意している。まさに幼女ダイエットだ。

ある日付き人から、それとなく進言があった。
「聖女様に対して畏れ多い事でございますが、もう少し太る努力をしたらいかがでしょうか?」

そう言う事か!
確か古代中国では豊かさの象徴としてポッチャリさんが魅力的とされていたはず。

ならば、上等。

私はプロだ。顧客の要望には完璧を持って答えて見せよう。

3ヶ月だ。3ヶ月あれば、この身体も妊娠3ヶ月並みにして見せる。

そう言えば、「後に現れる勇者に仕えて・・・」、なんて話もあったわね。

私はアイドル以外に興味は無いけれど。

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