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留置所から始まる異世界転生

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僕の名前は堀中衛門。名の知れた起業家だ。

現在地はなんと留置所の中!
想定内ではあったけれど、流石に僕も初めての経験だ。せっかくだからプレイ・ボールとか言ってみよう♪

まったく服飾決算なんて、どこでもやっている事なのに。出る杭は打たれる。有名人となった僕は特捜にとって格好の餌食だったのだろう。

留置所と言っても、何処かの国の収容所みたいに暗くて不潔なわけではない。今だってちゃんと眩しい朝日が入って来る。

『朝日ではありません。』
光の中から誰かがしゃべった。

『貴方を異世界に転生します。』
「うん、大丈夫。これも想定内です。」

適応能力の高さは僕の取り柄だ。

情報を制するものは、世界を制す。前の世界では情報難民が多すぎた。先ずはとにかく情報収集っと。

産まれた場所は地方都市か。産まれた家にも経済的な問題も無さそうなので、後天的な努力で何とでも出来るだろう。

この国の歴史を見てみると、幾つか権力者に都合良く造られた感は有るものの、地球みたいにフェイクニュースによる煽動の心配は無さそうだ。

法律もあったが、どうせここでも権力者の都合で解釈されるだろうから注意が必要だ。

商業ギルドに特許のような仕組みも見付けた。小遣い稼ぎに幾つか登録してみるか。

取り敢えず毎日の生活を観察してみる。井戸から水を汲み上げるのにロープに繋いだ木桶って、どうよ。毎日大変そうだから、手押しポンプがあったら便利だよね。

必要は発明の母とは良く言ったものだ。湯水のようにアイデアが沸き上がってくる。ロケットは無理だとして、次は何をしようかな♪

・・・
考え事をしながら街を歩いているといきなり目隠しをされ、あっという間に拘束をされていた。この手際の良さは称賛に値する。目的は僕の知識だとすると直ぐに殺される事はないだろう。下手な抵抗は止めた方が良さそうだ。

移動の後、長い階段と扉を越えた気配がする。最後に鉄格子の牢屋に入れられ、目隠しが外された。暗くて湿っぽい。やはり地下室のようだ。

檻の中から転生し、檻の中に戻ったか。

「うん、大丈夫。これも想定内です。」

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