上 下
18 / 20

インターハイから始まる異世界転生

しおりを挟む
僕は桐生彦根。高校三年生の一流アスリートだ。

陸上インターハイの常連で、今年も当たり前のように国立競技場に来ている。

100メートルで名を馳せているが、他の陸上競技は勿論の事、過去にはサッカーなどでもそれなりの実績をあげている。

要は走るだけの男ではない。

今、まさにスタートラインに並び、スタートのピストルが鳴ろうとしている。

「位置について!」
「よーい・・・」
「バーン!」

乾いた音が立ち、僕は直ぐに体を引き起こす。

周りの時間がゆっくりとなるのを感じる。まるでスローモーションのようだ。

いわゆるゾーンと呼ばれるものに入ったのかも知れない。

『ゾーンではありません。』
光の中から誰かがしゃべった。

『貴方を異世界に転生します。』
「!?」

気付いたら異世界に転生していた。

新しい体は同年代と比較してかなり恵まれているようだが、前世の素質が影響したのだろうか。

5歳
将来を見越してからだ作りにいそしむ。
才能に溺れて努力を怠るなんてのは馬鹿のする事だ。

7歳
効率的かつ、この子供の身体に無理の無いよう計画的に鍛え上げていく。難を言えば栄養面か。嗚呼、プロテインが欲しい!

9歳
100キロ越えの猪モドキも棍棒一つで倒せるようになっていた。自警団でも既に主戦力だ。

10歳
川の近辺に熊が出るようになった。あれは流石に俺でも無理だ。気付かれる前に逃げた。何か対策を考えよう。

11歳
熊が繁殖して増えた。家畜の被害が急増した。
今こそあの作戦を試してみよう。

作戦名はファランクス。誰でも知っている古代ギリシャの集団戦闘方法だ。

比較的、小柄な熊を見つけたら、狩り場まで誘い込む。

ここからは俺達の出番だ。屈強な大人を選抜し、自分を中心として大きく重く頑丈な盾を並べて立ち向かう。

自動車の追突をイメージしていたが、奴は二本足で立ち上がった。正直ホッとしたが、本番はこれからだ。

爪の攻撃にひたすら耐える。思った通り、このサイズの熊なら足止めは問題ない。

ではここからは此方のターンだ。反撃を始めさせていただこう。盾部隊の後ろの安全地帯から、槍部隊がひたすらチェスト!

熊は怒り狂ったが数は力だ。そのまま押しきった。怒りに我を忘れて逃げ出さないところが所詮ケモノか。

順調に数を減らしていき、
そして遂に、ボス熊も倒した。

12歳
そして王都の闘技大会から声がかかった。

闘技場では木剣と盾で戦った。剣は未経験だったが、直ぐにそれなりに使いこなし、大人相手でも力で押しきった。

逆に優男に上手く力を流されたときはヤバかったが、長期戦に持ち込んで粘り勝ちした。

なんか騎士っぽいのが出て来た。もてあそばれて負けた。後でその人に騎士団に誘われた。

13歳
剣も槍も自分なりに型を作った。国を代表する円卓の騎士に選ばれた。勿論、脳筋担当だ。

14歳
他国との共闘が増えた。

結構、自信はあったんだけどな。ソコには本当のバケモノ達がいた。

15歳
国を代表する位では足りない。
世界を代表する位でもまだ足りない。

魔王と闘う為には、人間を越える力が必要だった。
しおりを挟む

処理中です...