Change!!

綺羅 きらり

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01 チェンジで!

深くため息をついて電話をきる。
またやってしまった、と項垂れて暗くなった携帯を見つめているのは吉川理沙ヨシカワリサ30才。
付き合って3年の彼氏、トオルとは最近ずっとケンカばかりしている。なぜケンカになったのか思い出せないくらい些細なことでいつもケンカになってしまう。
もう30代に突入し次々と周りが結婚していく中、未だ独り身なのに焦りを感じる理沙は、徹との終わりを感じながらも別れを切り出すことができずにいた。
徹のことが嫌いなわけでは決してない。大切に思っているのに会う度、電話で話す度に言い争いになってしまうのはなぜだろう。

理沙はもう一度深くため息をついて布団に潜り込んだ。
お酒でも飲んで気を紛らわしたいとも思ったが家にアルコールは置いてない。あればつい理由をつけて飲んでしまう理沙は家にアルコールを持ち込まないようにしていた。
もやもやした気持ちで寝付けそうになかったのに不思議とすんなり夢の中へとおちていった。



夢の中理沙は大きな扉の前に立っていた。
周りに扉の他は何もなく自分の背よりはるかに大きいそれを眺めた。扉にはドアノブも手をかける物もなく、どうやって開けるのか分からず手を伸ばしその扉に触れると小さく音をたててゆっくりと開いた。

扉の先には小さなテーブルと椅子、そして椅子にはふわふわと綿菓子のように柔らかそうな髪をした女が座っている。こちらを向いたその顔は西洋人のような綺麗な顔立ちをしているが、涼しげな目はトロンとしてその?茲は赤く色づき、手には綺麗なグラスが握られている。

「..........」
「..........」

お互い無言のまま見つめ合っていると女はふんわりと微笑み、理沙に向かって手に持っていたグラスを掲げる。

「いらっしゃーい」

英語ではなく日本語だったことに理沙は違和感を覚えながらも同じく笑みを浮かべる。人懐っこそうな女の微笑みに警戒心も感じず、女の手招きに応じて理沙は席についた。

「すごいのこのグラス! 飲んでも飲んでも減らないのよ」

理沙の前にどこから取り出したのか、うふふと笑いながらもう1つ別のグラスを差し出してくる。並々と注がれているのはおそらく酒だろう、と乾杯とグラスを掲げた女の動きに合わせて理沙は恐る恐る何が入っているか分からないグラスに口をつけた。口に含まずちろりと舐めただけの理沙に女は話しかけてくる。

「私アシュリー、あなたは?」
「理沙よ」

リサ...と呟いてアシュリーは一層笑みを深くする。
かなり酔いがまわっているようなアシュリーに、理沙はグラスを見つめた。舐めただけのこの飲み物は間違いなくアルコールで、酒好きの理沙からしてもかなり美味しく感じるものだった。今度は一口飲んでみる。さらりと喉を通るアルコールにほぅっと息を吐くと女は美味しいでしょ? と笑顔になった。

「リサが来てくれてよかった...1人でヤケ酒してもつまんないし」

むぅっと唇を尖らせたその顔は愛らしい。
ヤケ酒の言葉に引っかかった理沙が口を開く前に、アシュリーは尖らせていた口を横に伸ばし笑みを浮かべて愚痴聞いてくれる? と返事を待たずにまくし立てる。

ヤケ酒の原因はアシュリーの彼で名前はライオス、彼とうまくいってないとアシュリーはグラスを傾けながら愚痴を続けている。それを聞いていた理沙も徹とうまくいってないこともあり、グラスを傾け、うんうんと聞きながらペースも考えず飲んでいると理沙もすっかり酔いが回ってしまい、アシュリーに愚痴をぶちまけた。

お互い愚痴大会になり、あーでもないこーでもないと言い合って笑い合う。初めて合ったのに、いや、知らない人だからこそ言える事もある。お酒が入ればなおさら。二人は意気投合し体を支えられないくらいに酔っ払い、机に突っ伏してお互い黙りこんで同時に声を上げる。

「でも素敵じゃない、リサの彼」
「でも素敵じゃない、アシュリーの彼」

二人は机に突っ伏していた顔を上げ、驚いた顔で見つめ合う。理沙は徹の優しすぎることに、アシュリーはライオスの冷た過ぎることに不満を持っていた。正反対過ぎて思わず笑ってしまう。

「チェンジしちゃうー?」

ふざけた調子で理沙が言う。

「しちゃおーしちゃおー」

アシュリーも同意して意見が合うたびにグラスを掲げていた彼女はまた理沙にグラスを掲げて乾杯を待つ。できる事ないと分かっていながらも酔いにまかせ、あははと笑いながら割れそうな勢いでグラスを合わせた。



「「チェンジでー!!」」



そして意識が途切れた。

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