Change!!

綺羅 きらり

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03 入れ替わっちゃった?


ざっくりと昨夜のことを話し終わって顔を上げると、男は先ほどと同じく険しい顔をしたまま理沙を見下ろしていた。

(信じられないよね... やっぱり...)

夢の中で扉を開けたらアシュリーがいたこと。
なぜか飲んでも減らないグラスで一緒にお酒を飲んだこと。
意気投合して盛り上がって飲みすぎてしまったこと。

自分でも理解できていないことを他人に理解しろと言うのも無理な話だろう。それは分かっているが信じてくれないと困る。理沙は一つため息をついて、話しているうちに浮かんだ疑問を投げかけてみる。

「あなたがライオス?」

さすがに男の愚痴で盛り上がってました、とは言えずその辺は伏せて話したが、理沙の問いに男が眉をぴくりと動かしたことで疑問は確信に変わった。


 ―ライオスは騎士で、いーっつもムッツリして笑いもしないの!

 ―威圧的で高圧的で独裁的で、いーっつも人を見下たような顔しているわ!

 ―騎士だから体も鍛えててムッキムキだし、髪は綺麗な黒髪で顔も男らしく整ってる...顔はいいのよ、顔は...

 ―自分がモテるって知ってるのよ! だからあんなに偉そうなのよっ!!


昨夜アシュリーが言っていた通りだった。一つの乱れもなく騎士の制服に身を包んだその体は服の上からでも分かるくらい隆々としていて、切れ長の目にはサファイアが埋め込まれているかのようなブルーの瞳。今はその鋭い眼光に、より一層煌めいて見える。威圧的で高圧的で独裁的で美しい男は、その閉ざしたままだった美しい唇を開いた。

「とてもじゃないが信じられんな」

見目だけでなく声まで美しいこの男は、馬鹿も休み休み言えとばかりの態度で吐き捨てるように言った。「お兄様達のような優しい人が好き、ライオスとのことは親の決めたことだから...」といったアシュリーの言葉を思い出す。ライオスは今は確かに優しい男には全く見えないが、突然婚約者の部屋に現れた怪しい女に優しい態度をとるはずもないだろう。
でも、と思う。でも徹なら...

(きっと心配して優しく接するんだろうな)

些細なことでケンカして、ごめんと謝るのはいつも徹だった。自分が折れることで丸く納めようとする徹の優しさにすら苛ついていたはずなのに。今はその徹の優しさが恋しいと理沙は思った。

(私も大概わがままだよなー)

徹に申し訳ない気持ちになり、ちくりと胸が痛む。痛みを堪えるように顔を伏せて深く息を吐いた。罰があたったのか、とかお酒飲みすぎるとろくなことないな、とかごちゃごちゃと考えてるうちにある考えが浮かんだ。

(いやいやいや)

すぐに浮かんだ考えを消し去るように考えを巡らせる。でもどう考えてもそうだとしか思えない。

(...本当にチェンジしちゃったってこと!?)

最後にアシュリーと二人で「チェンジで!」って叫んでいたことを思い出した理沙は、もしかしたら自分の部屋にアシュリーがいるのではないかいう考えに思い至り、血の気が引くのを感じる。幸い今日は仕事が休みだったからいいけど、いつどうやって戻れるか分からない状況に叫びだしたくなる。悪い考えばかりが頭に浮かび、顔を上げ虚ろな目をして遠くを見つめる。その瞳には何も映していないようだった。

いきなり黙り込んで動かなくなったと思ったら青い顔になる理沙に、ライオスはしばらく黙って様子を窺っていたがさすがに心配になったのか「大丈夫か」と声をかけた。


「私も信じられないけど」


浮かんだ考えに、理沙はかたかたと震えながら青い顔を通りこして真っ白になった顔をライオスに向ける。


「私とアシュリー、入れ替わっちゃったのかも」


体から力が抜ける。
遠くでライオスの声がする気がするが、もう何も考えれなかった。考えたくなかった、が正解かもしれない。
体を揺さぶられるのを感じたが理沙はそのまま意識を手放した。


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