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しおりを挟む抑えがたい衝動に駆られて、彼女の肌と直接接していただろう内側、オマタの部分を確認します。
クロッチとか言われる場所に何かしら、想いを寄せる女性の痕跡が残されていないか、証拠物件を鑑識する心持でねめつけます。
残念ながら僕が期待していたようなものはほとんどありませんでした。
想像以上に綺麗でなんらの汚れもシミもなかったのです。
ひどい肩透かしを食ったような気持ちになりつつも、汚れや穢れといったものとは無縁な清潔さの心証も同時に受け、複雑な感動に包まれました。
あっくんから伝え聞く生々しい“性活”やこのいやらしい下着とは対照的な二面性のようなものを同時にイメージさせられたというか。
今この瞬間、僕の中で穢れ無き聖女と淫蕩な美神の二つが融合し、さらなる偶像へと彼女が昇華されていっているようでした。
そのまま顔を近づけて鼻を押し付けます。
顔全体をすべすべのやわらかな布地で覆い、先ほどまで厳しい審美眼で視姦していた中心点に付着しているだろう化学的単位の微細な物質を思いっきり空気を吸い込んで己の体内へと送り込みます。
とてもいい匂いがしました。
彼女のイメージそのままの、フローラルな香りとでもいうのでしょうか。
後から思うに、それは洗剤なり柔軟剤なりの匂いだったのかもしれませんが、まず最初に鼻孔を通過して認識したのはそんなものだったのです。
とりもなおさず、夢中でそれを思いっきり嗅ぎ続けます。
意外性など皆無の、ただただどこまでも優しく爽快な芳香に酔いしれます。
どれだけそうしていたでしょうか。
何時しかその奥深くに、ほんの僅か微量に含まれたものがあるのに気が付き始めました。
よほど注意深く全神経を傾けなくては感じ取ることなど不可能であろう、かすかな異臭。
饐(す)えた発酵物 のような香り。
えぐみとすっぱみの幼子(おさなご)。
いい匂いだとはとても言いずらい、だけど思わず何度も確認したくなるような癖になる臭(にお)い。
本能に訴える刺激臭。
これこそがおいそれと触れられぬよう嗅ぎ取られぬよう執拗に巧妙に隠蔽され、埋没させられていた彼女そのものなのだと確信した瞬間の衝撃。
僕は脳みそを真っ赤に煮えたぎらせたまましばらくそうしてパンツで顔を覆って堪能しました。
何度も何度も鼻から空気を吸っては吐いて、ようやっと至ることができたものを再確認し続けたのです。
早瀬さんという憧れの女の子、その本質とでもいうものに触れた感覚とでもいうのでしょうか。
それは僕にとって初めての性交に他ならなかったのかもしれません。
身体が齎す生理的な反応は一切伴っていない、純粋に精神的な快感。
肉体的な接触はいうに及ばず、およそ世間一般で言われる性行為のどんな条件にも該当していないであろうにも関わらず。
セックス以上にセックスそのものとしか言いようがない時間だったのです。
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