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俺こと、長谷川颯太(はせがわそうた)と吉岡御火美(よしおかみほみ)は幼馴染だった。
家が隣同士で物心ついたころから顔を合わせているというごくごくありきたりな腐れ縁。
普通に遊んで普通に喧嘩をする、そしてどちらからともなく仲直りすることだって当たり前にする。
そんなどこにでもいるような俺達だった。
学校に通うようになって数年たった今ではお互い他の付き合い、男どうし女どうしの関係が出来てきたりして二人でいる時間は減ったかもしれないけど。
それでも相変わらず時間があいさえすればどっちかの家に顔を出して一緒に遊んだりしてる仲だったんだ。
この頃、あいつは短いオカッパだったのをちょっと長めにしてリボンとか結ぶようになったけど、中身は全然かわってない。
くだらないことで笑いあったり、ふざけあったりできるヤツ。
俺にとっては男とか女とかを超えた……なんていうか、すげー良いヤツ!って感じの存在だった。
ミホミのほうはどう思っているかはよくわからないけど、こうして関係が続いているんだからきっと同じように思ってくれてればうれしいよな。
だったらいいなって思う。
………
そうして今日もミホミの家で俺達はこの頃二人がはまってるボカスカ殴りあう系の対戦ゲーを遊びながらダベッてたんだ。
カチャカチャコントローラを動かす音をさせつつ、学校の知り合いの噂話とか授業のこととか話題はつきない。
「あっ! それまた使った!! やめてって言ったじゃん!」
「へっへー、ミホミが勝手に言ってただけじゃん!」
床に胡坐をかいた俺の横でベッドに座って足をぶらぶらさせてるミホミ。
Tシャツに短パンの格好は部屋にいるときの何時もの格好。
ちょっと日焼けした腕と足は細く、俺みたいにかさぶたとか絆創膏はついてないのがやっぱ女なんだなって思う。
部屋着の格好はあんまり昔と変わらないけど、出かけるときなんかは結構しゃれっ気とか出してスカートを履いてたりするのを見ると、ちょっと寂しいようなうれしいような不思議な感じがするんだよな。
「うりゃっ、このっ!」
そんな事を考えてる俺を知ってか知らずかすっかり熱中してるみたいだ。
相変わらずすぐ横で揺れてる足が、「あーっ」とか「うーっ」とかいう叫びと共に膝がピンと伸びたりつま先をぎゅって丸めたりするのが面白い。
それで思わず「ウププ」って感じで気がそれちゃったとたんに、一気に連敗した。
「きゃーーっ! 勝った勝った! あそこから逆転したっ!」
座ったままぴょんぴょん跳ねて喜ぶミホミ。
「っきしょーーっ、ミスった! ……さあてそろそろ帰るかな」
そう言って立ち上がりかける俺。
途端、ミホミが食って掛かってくる。
「な、なにいってんのよー! 罰ゲームがあるでしょ!? 逃げんの!?」
しらばっくれてそのまま逃げようとしたのに感づいたらしい。
ミホミのくせに。
「ちぇっ……。わーかったよ。んじゃいつも通り一分な」
俺も男だ。
ことココに至っては潔いところを見せなくてはならない。
ミホミのいるベッドの上に腰を下ろした。
「うふふ、わかればよろしい。ほら、あたしは公平だからちゃんと時計をセットしてあげる。あんたはさっさとこっちに足をだして」
大きなくりくりお目目をドヤ顔でニヤつかせながら目覚ましを調整しだすミホミ。
そして言われたとおりに投げ出した俺の脚を掴むと。
「じゃあいくわよ。逃げちゃだめよ」
言いながら、その間に自分の裸足の裏を伸ばしてくる。
両足をつかまれ晒した股間に足を押し当てられると、ハーフパンツ越しでも弱くてやわらかい大事なところが無防備に力を加えられる感覚に怯えてしまう。
女はどうだか知らないけど、男にとってそこは弱点だ。
普通なら絶対に他人に触らせないところだ。
くそぅ、負けさえしなければ!
やられてたのは俺じゃなくてこいつだったのに!
むにゅって感じで程よいポジショニングに満足したのか、ミホミは満面の笑みを浮かべ……。
「よーい……初めっ!!」
ずだだだだだだだだっ!
「ふぎゃーーーーーーっ!!」
俺の叫びが木霊(こだま)した。
ミホミの足が目も止まらぬ速さで動かされるたびに股間から湧き上がるくすぐったくておしっこが漏れちゃいそうな感覚にもだえる。
頭を抱えて身を捩りながら只管一刻も早く終わるのを願うしかない。
その間も続けている叫び声とベッドの振動は明らかに下の階にいるミホミのお母さんにも伝わっているんだろうけど、日常茶飯事なので気にもされない。
この罰ゲームは何時からともなく、学校の誰かに教わってから二人の間でよくやるようになったものだった。
それまで二人が知ってた他のペナルティに比べてその辛さの割りには別に傷とか痛みが残るわけでもないから手ごろな遊びって感じでずっと続けてる。
周りの親とかもよく俺達がそうしてるのを知ってるはずだけど特に何にも言ってこない。
たまに見られてることもあるけど、なんとなく曖昧な笑いを浮かべて放っておかれるのが常だった。
たぶん、終わったらけろりとしている俺達の様子と、やってるときの騒ぎっぷりほどの苦痛は無いんだって知ってるんだと思う。
そんな罰ゲームに今この瞬間も俺は耐えている。
こう、「うぁぁぁぁ」としか言いようが無い感覚が絶え間なくずっと続く。
爛々と目を輝かせたうれしそうなミホミの容赦ない責め。
早く終わってくれ。
もう少しで終わるはず。
まだなのか?
「うーりゃりゃりゃりゃりゃっ、うりゃーーーっ!!」
ノリノリのミホミの最後の連打を受けてくすぐったさが限界を迎えそうになったその時。
目覚ましの音がなった。
「しゅーりょーーーーっ!」
「ほわぁぁぁぁぁぁ……」
その声と共に解放された俺は身体を横にして心もとない感覚がのこっている股間に両手を突っ込んで足で挟む。
なんとなくそうしてる方が落ち着くんだ。
「あああああ……」
「うぷぷ、あんたのその格好……。あーっはっはっはっはっはっ! あっはぁ、ウハハハハハっ!!」
ゲラゲラ笑い続けるミホミを恨みがましい目で睨んでやる。
そんな俺に益々おかしくなったのか、赤い顔に汗と涙を浮かべてさらに腹を抱えてやがる。
しまいには呼吸もままならなくなったのか、身を折ったままおかし苦しそうにばたばたと足を暴れさせて。
「ひーひーっ、もう駄目……。もう笑えない……」
数分後にやっと静かになった。
「はぁはぁ、ふう……。あー、面白かった。もう一戦やる? あたしはいいわよ」
ぜえはあとしていた息も落ち着いたミホミが頬を上気させながら勝ち誇った顔で言い放つ。
その態度にムカチンとしながらも俺は窓の外の暗さを確認して今日のところは一旦引いてやることに決めた。
「復讐してやりたいのはやまやまだけど、今日は帰るよ。ほら、もう7時前じゃん」
「あ、ほんとだ。んじゃあ今日はお開きね」
未だ痺れて力が入らない股間を何とか動かして立ち上がる。
「うぅー、まだ変な感じが残ってるぜ。……じゃあまたな」
「うん、またね。バイバーイ」
あっけらかんと言って、手をひらひらしながらもすでに視線は手元の雑誌に向かい始めたミホミを後ろに残して俺は部屋から出て行った。
階段を下りて玄関に向かう。
姿は見えないけれどじゅーじゅーと吉岡家のキッチンから揚げ物を作る音がするからそちらに向かって大声で挨拶をする。
「おじゃましましたーーっ!」
「はぁーい、気をつけて帰るのよぉ!」
ミホミのお母さんのいつものセリフを頂戴する。
すぐ横で数メートルも離れてないところが俺の家なのに。
でもその声はいつも俺をなんとなくうれしい気持ちにするんだ。
そうして家に帰るために歩き出す。
数秒で終わるその帰路の間に、楽しい明日の予定を考えながら。
結局何も決まらないうちに自分の部屋に入り。
だらだらマンガを読み始めるのもいつも通りだった。
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