いつも近くに(短編集)

こまいまい

文字の大きさ
4 / 8

踏切

しおりを挟む
今から3年ほど前のことです。
実家の近くに自殺の名所があったのですが、そこは必ず皆が通らなければいけない場所でした。
そこは踏切です。
その踏切の近くは街灯などないので夜になると暗闇に包まれるのです。
そして、その踏切が自殺の名所ということもあり、地元の人はそこを夜通ることを避けています。
私はこの時まだ学生で、遠くの高校に通っていたため暗くなっても通ることがよくありました。
この日も近道としてその踏切を通りました。
珍しく、女性とすれ違いました。
その女性は何かを探しているようにも見えました。
街灯がないのでよく見えないようで、私は思わず声を掛けました。

「こんばんは、お困りですか?お手伝いしましょうか?」

この一言を言ってしまったために私は怖い体験をすることになるのです。

女性は私の声を聞き、静かにうなずきました。
口数の少ない方のように見えたので、私は必要以上に声をかけるのを控えました。
しかし、何を探しているのは知らなくてはならないので問いかけました。

「あの、何を探しているのですか?」
「・・・ビー玉のようなものです」
女性は静かに答えました。
それ以上は聞かず丸いものを探せばいいと思った私は、鞄に入れていた懐中電灯であたりを照らしました。
懐中電灯の光は暗闇の踏切を照らし、不気味さが増した気がしました。

女性が手探りで探しているのですが見つからないようです。
1時間ほどたった時に女性が言いました。

「・・・お手数おかけしてすみませんでした」
「見つかりましたか?」
女性は首を振り答えました。
「きっと、もう見つからないんです」
私はもどかしさを感じて、再度女性に問いかけました。
「具体的には何を探していたのでしょうか?私はこの踏切を毎日通るのでもしかしたら見つかるかもしれませんし」
女性はやや間がありましたが、答えてくれました。
「大事な人の・・・眼球です」
その答えを聞き、私の背筋に冷たい汗が流れました。
「ありがとうございました」
そう言い残し女性は去っていきました。
取り残された私はその場からしばらく動けなくなりました。
足が震え、思うように体を動かすことができませんでした。

時が経ったいまでも、もしかしたらあの女性が愛しい人の眼球を探しているのではないのかと考えてしまいます。
女性は幽霊の類ではないのですが、とても怖い体験でした。

その後もたびたび、その踏切では人がなくなっているそうです。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

洒落にならない怖い話【短編集】

鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。 意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。 隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。

意味がわかると怖い話

邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き 基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。 ※完結としますが、追加次第随時更新※ YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*) お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕 https://youtube.com/@yuachanRio

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

芥川の怪談

橋平礼
ホラー
芥川龍之介の鋭いペンで、冷徹でエゴイスティックな、それでいて繊細なタッチの怪談です。あなたを怪談の世界にいざないます。

処理中です...