132 / 209
Nc3
132話
しおりを挟む
負けを認め、この後は最後の仕上げ。その花道を、ジルフィアはシシーに譲る。
「どうしたの? 解毒剤はキミのものだ。そのために相手の城を陥落させたんだから。遠慮せずに……間違えないでね」
脱力してイスにもたれかかる。もうやり切った。思い残すことはあまりない。せめてあと一局、彼女とやりたかった。やっと少しずつわかってきたのに。
「……あぁ」
低い声でシシーは反応する。そして解毒剤を固めたキングの駒。降参を認めた、その黒いキング——ではなく、自分の白いキングを口に運んだ。
予想外の行動に、普通に成り下がったらしいアリカは戸惑う。
「……え?」
いや、なにやってんの? 倒した相手は黒だよ? ダメじゃん、だってその『毒』は——
「その反応からするに、キミは詳しく伝えられていなかったんだね」
ひとつのアクションから、勝者であり、全てを把握したシシーは断定した。このゲームには裏がある。そう——
《『白』と『黒』には、全く違った毒が仕込まれている》
「キミはジルフィアさんから、二種類の毒と解毒剤を頼まれていたはずだ。色分けしただけで、全く同じもののように扱っていたけどね」
なにも知らないアリカに対し、シシーは種明かしをする。いや、仕掛けられていたほうがする、というのもおかしな話だが。
軽く舌打ちをするジルフィアだが、その表情は汗をかいているものの、晴々としている。
「やっぱりバレていたか。というか、せっかく水を頼んだんだから、使ってくれたらよかったのに」
飴玉のように舐め回すよりも、上品に水に溶かして飲んでもらえるように、アリカには購入してもらった。あぁ、いいなぁ、キング。私もねっとりと舐めまわされたいよ。
解説をシシーは続ける。
「普通に考えれば、白い毒を飲んだオレは、相手を攻略して黒いキングを飲むはず。チェスとはそういうゲームだからね。相手のキングを奪うことが勝ちだし。まぁ、チェックメイトで終わりだけど」
集中は相手の駒にいく。ゆえに、まさか自分の駒こそが正しい解毒剤、などとは思いもよらないだろう、というジルフィアの仕掛けは、最終的には見破られた。
「もしも、黒いキングを飲んでいたら、なにも効かずに死んでいた。まぁ、解毒剤のなくなった私も死ぬけどね。一緒に添い遂げられるかと思ったのに」
イタズラな笑みで場を和ませる。が、そんな空気じゃないことを察知し、ため息をついた。最後まで遊びたいのだが。
余裕があれば笑いたいところだが、緊張が解けてきて、毒でそれを奪われているのはシシーも一緒。表面には出さないが結構辛い。
「……最初から違和感はあった。なぜ解毒剤をキングにしたのか。どう考えても無駄な手間だ。そこに引っかかっていたのだが、勝利条件を今一度照らし合わせれば、おのずと答えは見えてくる」
そして、出した答えが先の通り。解毒剤が効いてきているのかは不明だが、やれることはやった。これで間に合わなかったのなら仕方ない。諦めよう。
「どうしたの? 解毒剤はキミのものだ。そのために相手の城を陥落させたんだから。遠慮せずに……間違えないでね」
脱力してイスにもたれかかる。もうやり切った。思い残すことはあまりない。せめてあと一局、彼女とやりたかった。やっと少しずつわかってきたのに。
「……あぁ」
低い声でシシーは反応する。そして解毒剤を固めたキングの駒。降参を認めた、その黒いキング——ではなく、自分の白いキングを口に運んだ。
予想外の行動に、普通に成り下がったらしいアリカは戸惑う。
「……え?」
いや、なにやってんの? 倒した相手は黒だよ? ダメじゃん、だってその『毒』は——
「その反応からするに、キミは詳しく伝えられていなかったんだね」
ひとつのアクションから、勝者であり、全てを把握したシシーは断定した。このゲームには裏がある。そう——
《『白』と『黒』には、全く違った毒が仕込まれている》
「キミはジルフィアさんから、二種類の毒と解毒剤を頼まれていたはずだ。色分けしただけで、全く同じもののように扱っていたけどね」
なにも知らないアリカに対し、シシーは種明かしをする。いや、仕掛けられていたほうがする、というのもおかしな話だが。
軽く舌打ちをするジルフィアだが、その表情は汗をかいているものの、晴々としている。
「やっぱりバレていたか。というか、せっかく水を頼んだんだから、使ってくれたらよかったのに」
飴玉のように舐め回すよりも、上品に水に溶かして飲んでもらえるように、アリカには購入してもらった。あぁ、いいなぁ、キング。私もねっとりと舐めまわされたいよ。
解説をシシーは続ける。
「普通に考えれば、白い毒を飲んだオレは、相手を攻略して黒いキングを飲むはず。チェスとはそういうゲームだからね。相手のキングを奪うことが勝ちだし。まぁ、チェックメイトで終わりだけど」
集中は相手の駒にいく。ゆえに、まさか自分の駒こそが正しい解毒剤、などとは思いもよらないだろう、というジルフィアの仕掛けは、最終的には見破られた。
「もしも、黒いキングを飲んでいたら、なにも効かずに死んでいた。まぁ、解毒剤のなくなった私も死ぬけどね。一緒に添い遂げられるかと思ったのに」
イタズラな笑みで場を和ませる。が、そんな空気じゃないことを察知し、ため息をついた。最後まで遊びたいのだが。
余裕があれば笑いたいところだが、緊張が解けてきて、毒でそれを奪われているのはシシーも一緒。表面には出さないが結構辛い。
「……最初から違和感はあった。なぜ解毒剤をキングにしたのか。どう考えても無駄な手間だ。そこに引っかかっていたのだが、勝利条件を今一度照らし合わせれば、おのずと答えは見えてくる」
そして、出した答えが先の通り。解毒剤が効いてきているのかは不明だが、やれることはやった。これで間に合わなかったのなら仕方ない。諦めよう。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~
楠富 つかさ
恋愛
中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。
佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。
「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」
放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。
――けれど、佑奈は思う。
「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」
特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。
放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。
4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!
オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。
ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。
学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。
当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。
同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。
ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。
そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。
まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。
その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。
こうしてジュリーとの同居が決まった。
しかもジュリーの母親、エリカも現われ、ランの家は賑やかになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる